大学入試改革
大学入試センター試験が大学入学共通テストに変わり、「国語」と「数学」では記述式問題が出題されることとなりました。また、「英語」でも4技能(「読む力」「書く力」「聞く力」「話す力」)が総合的に試されるようになり、いまの受験生は大きな変化の真っ只中にいる状況です。
このような中で入試に挑む人は、どのような力を向上させる必要があるのでしょうか。
かつての受験生
「大学の受け入れ人数」よりも「入学したい人の数」のほうが著しく多い場合、入試は「イスとりゲーム」の側面が強くなってきます。
かつてのいわゆる受験戦争時代には「4当5落(4時間睡眠の人は合格、5時間睡眠の人は不合格)」といった言葉も流行しました。このような場合、「ライバルに差をつけられないように…」と考え、他の受験生の習熟度を意識して「ミスを減らす」戦略を採用することになります。「1点の違いが今後の人生を左右する」といったプレッシャーに耐えてきた受験生も少なくないでしょう。
これからの受験生
少子化が進み、また、大学の定員が増えたこともあって、現在は「受験戦争時代」から「大学全入時代」に変化したとも言われる状況です。では、受験生を取り巻く状況は楽になったのでしょうか。
確かに、競争倍率という側面だけを見るとそうかもしれません。しかしながら、受験生の置かれている状況を考えると、もう少し厳しい見方をするべきだと思います。と言いますのも、進学率の上昇に伴い、「大学進学」という事実は、特別な場合を除き、それだけで人生を有利にするものではなくなってきたからです。
単に「大学へ進学した」という事実を超える成果を獲得するためには、受験勉強期間における取り組みをより価値あるものにする必要があります。
何が必要なのか
このような時代の流れを反映してか、近年、さまざまな入試制度が誕生してきました。推薦入試、AO入試、グローバル入試などでは、一般の学科試験だけでは評価できない面も重視されており、将来の社会的ニーズを踏まえたビジョンの確立が要求されています。これらの入試については賛否両論ありますが、実際に対策指導をしてきた経験の中では、自らが社会に示したい能力の向上に貪欲な受験生の姿に心を打たれることも多くありました。
社会に出たときに求められる人材になるための準備期間。
どのような自分を社会にアピールしたいのかを考える期間。
いまの受験生が過ごす時間の中ではこれらの側面が色濃くなってきているように思えます。そうであるならば、他の受験生の習熟度を意識するというよりは、「これからの自分自身の生き方」を意識した取り組みがより重要になってくるでしょう。
高校卒業後の進学率が高い現在において、「受験」というイベントは、単に高校学習課程の習熟度を高めるためのものではなく、将来の人生の歩み方に大きな影響を及ぼす通過儀礼になっていると感じます。自身を取り巻く環境がどのようなものになるかをイメージし、自らの人生と真摯に向き合い、これからの自分自身のあり方について考えること。そのために必要な取り組みとは何かを考えるのが本プロジェクトの目的です。
(吉崎崇史・鈴木順一)