読み方を1通りにしたい
「A、B。そうすると、C。」の読み方を考えたいと思います。表現形式だけを見ると、次の2パターンの解釈ができます。
①「A→C」と「B→C」を合わせた表現
②「A→B→C」の表現
①と②の違いは「『B』がなくとも『A→C』の関係が成立するか否か」という点にあります。「A→C」の直接的な因果関係の有無が鍵です。
直接的な因果関係がない場合
「『B』が介在しないと『A→C』の関係が生じないこと」(①でないこと)が明らかな場合、発信者と受信者は「『A、B。そうすると、C。』=②(A→B→C)」という共通の認識に至ります。
このとき読み方は1通りなので、「何を言いたいのか」が明確に伝わります。
直接的な因果関係がある場合
「『B』がなくとも『A→C』の関係が生じる」場合、「A、B。そうすると、C」という表現が①と②のどちらを意味しているのかがはっきりしません。発信者と受信者の認識にズレが生じかねない状態です。このような事態が発生するのは、発信者が「A」と「B」の区別を意識していないことに起因することが多いでしょう。
「『B』がなくとも『A→C』の関係が生じる」場合に「A、B。そうすると、C。」と表現するのは避けたいところです。①を伝えたいのであれば、「A→C」と「B→C」を分けて表現すれば足ります。
<悪い例>の第2段落
しかしながら、上記のことはデメリットにもなり得る。利便性の高さはメリットにもなるが、その反面、安易な利用を促すからだ。本棚の空き状況を考えずに次々と購入し、何を読むかを深く検討しない。そのような書籍選びをしていると、入手したものとじっくり時間をかけて向き合わなくなるだろう。
※<悪い例>の全文はこちらの記事の中にあります
問題点
下線部「そのような書籍選びをしていると、入手したものとじっくり時間をかけて向き合わなくなるだろう」では、「そのような(=本棚の空き状況を考えずに次々と購入し、何を読むかを深く検討しないような)書籍選びをすること」を原因として示し、「入手したものとじっくり時間をかけて向き合わなくなるだろう」という推測文をその結果として示しています。
ここで問題視したいのは、因果関係が不明確であることです。(A)次々と書籍を購入するから一冊あたりにかける時間が短くなるのか、(B)何を読むかを深く検討しないからじっくりと向き合わなくなるのか。どちらのパターンもありそうな状況ですので、問題意識がどこにあるのかを明確に伝えることができていません。
もちろん、両方のパターンをイメージして「入手したものとじっくり時間をかけて向き合わなくなるだろう」と推察する場合もあるでしょうが、そうであれば(A)と(B)を区別して表現したいところです。
【改善例】
そのような書籍選びをしていると、その量が自らの処理能力を超えてしまい、入手した一冊とじっくりと向き合う時間を確保できなくなるおそれがある。また、その書籍から何を得ようとするのかを検討せずに漫然と読むだけであれば、その時間が有意義なものとならない可能性も高い。
(吉崎崇史)