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「電子書籍の普及」に関するエッセイ(5)第4段落

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前回はどちらかと言えば「量的」観点での議論を紹介しました。今回は「質的」観点で考えてみたいと思います。まずは【「電子書籍の普及」に関するエッセイ(1)】で示した<悪い例>の第4段落を確認してみましょう。

 

<悪い例>の第4段落

 

また、電子書籍が普及することによって、生活に密着した小規模書店の経営が難しくなることも問題だ。大規模書店が存在するエリアでなければ、身近に書店がないという事態が発生しかねない。そうすると、自分に合う書籍と出会う可能性が小さくなってしまう。そして、電子書籍が普及しても生き残れるだろう大規模書店は都市部にあることが多く、書籍を通じた知的生活を送る機会の不平等が発生するのも問題だ。

 

問題点


下線部「そうすると、自分に合う本と出会う可能性が小さくなってしまう」は、身近に書店がない場合、自分に合う書籍と出会いにくいことを示した記述です。


確かに、書店が近くにないとその機会は少ないようにも思えます。しかしながら、いまの文脈は「電子書籍の普及による小規模書店の経営悪化」が背景にありますので、「電子書籍が普及している状態」を前提に考える必要があります。そうだとすると、身近に書店がなくとも電子書籍の購入によって「自分に合う本と出会う」ことは可能ですので、この第4段落の記述は的を射たものと評価することはできません。

 

【改善例】


確かに、電子書籍が普及することによって、書店へ足を運ばずとも書籍を入手しやすくなる。しかしながら、書籍購入のプロセスを考えると、従来とは異なった書籍との出会い方になると思われる。「この人の書いたものを読もう」と考え、著者名で検索して電子書籍を探す。評判になっているものを検索して電子書籍を購入する。これらのように、すでに関心の対象に入っているものを探して読むケースがほとんどではないだろうか。このような書籍との出会い方では、読書を通じて自らの世界を広げることが困難になるだろう。他方、書店では本との偶然の出会いが生じやすいし、その出会いを演出する店内環境づくりがなされていることも少なくない。装丁が気に入った場合や書店員による「おすすめPOP」に惹かれた場合など、書店へ足を踏み入れた時点では読もうと思っていなかった本を手にすることも多いだろう。身近に書店があるということは、これを通じて自らの世界を広げる機会に恵まれるということでもある。電子書籍の普及によってこの機会が減ってしまうことは軽い問題ではないと思う。

 

 

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