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「消去法」についての考察

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「消去法」の発想


現代文の出題形式は大きく次の2つに分けられます。

 

  1. 記述型
  2. 選択肢型


現行のセンター試験など「選択肢型」では、「選択肢の表現を細かく分解し、課題文とのズレを確認する『消去法』が有効だ」と言われることも多いです。


仮に5つの選択肢があったとしましょう。そして、各肢の表現を分解すると、次のように、それぞれが3つの情報から作られているとします。

 

  1. 情報a + 情報b + 情報c
  2. 情報a + 情報b + 情報d
  3. 情報b + 情報c + 情報d
  4. 情報b + 情報d + 情報e
  5. 情報c + 情報d + 情報e


また、各情報の課題文との整合性が次の通りだとします。

 

  • 情報a:
  • 情報b:
  • 情報c:
  • 情報d:×
  • 情報e:×


「消去法」は、選択肢の中から「×」を探す方法ですので、上記選択肢を次のように捉えて、肢1を選択することになります。

 

  1. 情報a + 情報b + 情報c
  2. 情報a + 情報b + 情報d(×
  3. 情報b + 情報c + 情報d(×
  4. 情報b + 情報d(× + 情報e(×
  5. 情報c + 情報d(× + 情報e(×


肢2~5は課題文と整合しないので消去

肢1を選択

 

「消去法」の欠点①


情報を細かく検討する「消去法」には受験戦略上の利点はあるでしょう。しかしながら、必ずしも万能な方法ではありません


上記の例の条件を少し変えてみましょう。情報a~eの課題文との整合性が次の通りだとします。「整合するか否かが明確でない」「整合性の判別ができない」を意味します。

 

  • 情報a:
  • 情報b:
  • 情報c:
  • 情報d:
  • 情報e:×


このとき「消去法」の発想に基づくと、選択肢を次のように捉えることになるでしょう。

 

  1. 情報a + 情報b + 情報c
  2. 情報a + 情報b + 情報d
  3. 情報b + 情報c + 情報d
  4. 情報b + 情報d + 情報e(×
  5. 情報c + 情報d + 情報e(×


肢4、5は課題文と整合しないので消去

肢1~3が残る


このように「消去法」だけでは選択肢を絞り込めません。そこで、「消去法」でないアプローチが必要となってきます。

 

「消去法」の欠点②


「消去法」粗探しの思考に基づくものです。


「粗探しをしよう」と思って言葉と接してみると、あらゆるものが疑わしいものに見えてきますので、場合によっては「」の情報であったとしても「×」のように感じられるときもあるでしょう。


また、「消去法」という粗探しの思考は、何かを生み出す思考ではありません。このことが「消去法」という方法論の抱える最大の問題点だと思います。


何かを説明する際、「どのような情報を示さなければならないのか」の考察が欠かせません。

 

「消去法=粗探し」は既に存在している言葉を前提にしたものです。そのため、自分から情報を発信するという経験にはなりません。

 

マークシート型・選択肢型の問題では高スコアを獲得できるにもかかわらず、記述型問題や小論文問題にまったく対応できない人は、「消去法」の発想が足枷になっているのかもしれません。


少し「テストのための勉強」という観点から離れてみましょう。


友人、仕事仲間、取引先・・・いろいろな人たちと関わる生活の中で、「粗探し」ばかりをしている人とお近づきになりたいですか?


確かに、「消去法=粗探し」によって情報の細かなところに目が向き、それが「発言内容の正確さ」の基礎になることもあるでしょう。しかしながら、「正確に表現しよう」という気持ちが強過ぎると、「何も言えなくなる」という事態に陥りがちです。そのような人になりたいですか?


「言うべきこと」をしっかりと見極めてさえいれば、表現スキルが少しくらい拙くとも、相手とのやりとりを重ねる中で、結果的にコミュニケーションは成立すると思われます。そうであれば、「何を言うべきかを考えるのが大切」で、「どのように言うかは次の問題」だと言えるでしょう。

 

「消去法」でない解き方


以上に述べた「消去法」の欠点を踏まえて、どのような解き方のトレーニングをすればよいのかについて考えを述べさせていただきます。それは「選択肢に頼らない」解き方です。


問題には必ず「指示」があります。そして、「その『指示』に応じるためには、どのような情報を示すべきなのか」を考えればよいのです。

 

  1. 情報a + 情報b + 情報c
  2. 情報a + 情報b + 情報d
  3. 情報b + 情報c + 情報d
  4. 情報b + 情報d + 情報e
  5. 情報c + 情報d + 情報e

 

  • 情報a:
  • 情報b:
  • 情報c:
  • 情報d:
  • 情報e:×


先ほど「『消去法』の欠点①」で紹介した通り、上のケースでは「消去法」の発想で答を導くことはできません。

 

  1. 指示を確認
  2. 指示に応じるために必要な情報を考察


このような発想で問題と向き合ってみるとどうでしょうか。「問題の指示に応じるためには、情報a、情報b、情報cの3つを述べなければならない」という判断ができれば、肢1を速やかに選択できるでしょう。

 

  1. 情報a( + 情報b( + 情報c(
  2. 情報a( + 情報b( + 情報d
  3. 情報b( + 情報c( + 情報d
  4. 情報b( + 情報d + 情報e
  5. 情報c( + 情報d + 情報e


×」を探す「消去法」ではなく、」を探す方法です。「欲しいものを手に入れる」という発想ですので、いわば「一本釣り」的な解き方と言えるでしょう。


この解き方は「何を言うべきかを考える」経験値を高めるトレーニングにもなります。次回の記事では、センター試験の過去問を用いて、「消去法=粗探し」ではない解き方を実際に行ってみたいと思います。

 

(吉崎崇史)

 

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