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2020大学入試改革!英語4技能と論理的表現のあり方を考察

「自由英作文」には自由がない(2)

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富山大学(医学部医学科)2018年度英語大問3

 

The following two stories (A) and (B) describe top athletes’ leadership displayed on their teams. Choose one of the stories and write a one paragraph English essay of about 200 words following the directions below. 


Directions

(a) Explain whether you think what the athlete did was appropriate or not. In doing so, (1) include positive and negative aspects of the athlete’s decisions and acts, and (2) describe what you think 

you would do in the same situation if you were the athlete. 

(b) In the spaces provided on the answer sheet, write “A” or “B” (the story you have chosen) in the parentheses at the beginning, and your total essay word count at the end

(c) Do not itemize (1) and (2) above separately. 


(A) A story about…

(B) A story about…

※物語(A)と(B)の内容は省略


前回の記事では、この問題文から得られた情報を次のようにまとめました。

 

  • ①:2つの物語から1つを選び、ワンパラグラフで約200ワードのエッセイを書く(冒頭部分より)
  • ②:選んだ物語中のアスリートの行動が適切であったかどうかを答える(指示(a)より)
  • ③:選んだ物語中のアスリートの決断・行動のプラスな側面とマイナスな側面を書く(指示(a)の(1)より)
  • ④:自分がそのアスリートの立場にあった時にどうするかを書く(指示(a)の(2)より)
  • ⑤:解答用紙の初めに選んだ物語がどちらであるか、最後に合計ワード数を書く(指示(b)より)
  • ⑥:③と④を箇条書きにせずに書く

 

今回の記事では、①~⑥の内容をどのように英文に反映させるかについて考えたいと思います。

 

物語(A)と(B)のあらすじ

 

物語(A)と(B)の内容を大きくまとめると次のようになります。英文は省略しております。

 

<物語(A)のあらすじ>

フランスのハンドボールチームの新キャプテンが重要な試合の数日前に父が危篤だという知らせを受ける。彼は父を看取るために戻ることなく、その知らせをチームメイトに打ち明けずにチームに残りその試合に勝つ。試合後父を看取ることができ、チームは彼のリーダーシップのもと国際的な成功を収め続ける。

 

<物語(B)のあらすじ>

ロシアのアイスホッケーチームは劇的な敗北をする。チームの当時のキャプテンが帰国の機内でチームメイトを批判し始めるが、チームのベテラン選手がその批判に激怒する。そのベテラン選手はそのことを公にせず、のちに彼が新キャプテンに任命される。彼のキャプテン就任後チームはオリンピックで優勝するまでに至る。

 

これら2つの物語は共に「自分を犠牲にしてもチームのために働きかけたアスリートの成功物語」になっています。今回は物語(A)を使って解答作成を考えたいと思います。

 

エッセイの主題を設定する


前回の記事でも見たように、この問題では書くべきことが多く設定されています。形式的な点(①、⑤、⑥)を除いて、内容面で求められている点は次の3つです。

 

  • ②:アスリートの行動が適切であったか?
  • ③:アスリートの決断・行動のプラスな側面とマイナスな側面は?
  • ④:自分がそのアスリートの立場にあった時にどうするか?


これらの3つの項目200ワード1つのパラグラフの中で表現しなければなりません。そして、何よりも(c)で指示されている通り、箇条書きにすることはできません(上記まとめの⑥)。

 

(c) Do not itemize (1) and (2) above separately. 

【日本語訳】

(c) 上記の(1)と(2)を別々に箇条書きにはしないこと。


このことから、まず初めに考えることは「解答となるエッセイの主題として何を述べるべきなのか」ということです。


問題の対応によって異なる場合もありますが、英文エッセイにおける主題とは「筆者が一番言いたいこと」であると、概して言うことができます。


上記の3つの項目の中で、④の「自分がアスリートの立場にあった時どうするか?」というのは直接的に「筆者の意見」が問われているわけですから、これに対する答えが主題であるということができます。さらに、②も「アスリートの行動が適切であったか?」「筆者の意見」が問われていますから、これに対する答えも主題であると言えるでしょう。そして、もちろん②と④に対する答えというのはかなりの程度類似するはずです。


解答の一例として、物語(A)の内容を使って②と④に答えると次のようになります。

 

  • ②:アスリートの行動は適切であった
  • ④:自分も同じようにチームメイトに父が危篤であることを知らせず、チームに帯同しプレーを続ける


この2つの解答が矛盾することは基本的には考えられません。 

 

主題からエッセイの展開を考える


②と④に対する解答をまとめて、エッセイの主題を「私は物語(A)のアスリートの行動が適切であったと考える。それゆえに、私が彼と同じ立場にあるとするなら、彼と同じ行動を取るであろう。」と設定します


このように主題を設定しておけば、③の「アスリートの決断・行動のプラスな側面とマイナスな側面」をどのように組み込めばよいのかが見えてきます。

 

<プラスな側面の例>

  • 彼が父の危篤を打ち明けなかったことで、チームメイトに不安を感じさせなかった
  • 彼がチームに残ったことで、結果的にチームの勝利に貢献できた
  • 彼の決断とチームの勝利の結果、チームがさらに団結し国際的な成功につながった


そして、これらのプラスな側面は全て主題に対するサポート、簡単に言えば「自分の考える主題に対する理由」としてエッセイに組み込むことができます


<マイナスな側面の例>

  • 父親を看取ることができなかったかもしれない
  • 彼の家族としてはチームを離れて父の元に戻ってきてほしかったかもしれない
  • チームメイトに打ち明けなかったことで、チームメイトは信頼されていないと感じたかもしれない


実際の問題文の物語(A)の部分では事実としてマイナスな面を述べていないため、マイナスな側面については推測が多くなってしまいますが、これらのマイナスな側面は主題に対する反例として、主題の説得力を際立たせる働きをエッセイの中で果たしてくれます


次に、これらの情報を解答エッセイに組み込みます。この際、主題を中心に考えます。

 

書くべき内容をエッセイの中でうまく流れにする


ここまでの内容を振り返ると以下のようになります。


主題

私は物語(A)のアスリートの行動が適切であったと考える。それゆえに、私が彼と同じ立場にあるとするなら、彼と同じ行動を取るであろう。


プラスな側面(→主題に対する理由)

  • 彼が父の危篤を打ち明けなかったことで、チームメイトに不安を感じさせなかった
  • 彼がチームに残ったことで、結果的にチームの勝利に貢献できた
  • 彼の決断とチームの勝利の結果、チームがさらに団結し国際的な成功につながった


マイナスな側面(→主題に対する反例)

  • 父親を看取ることができなかったかもしれない
  • 彼の家族としてはチームを離れて父の元に戻ってきてほしかったかもしれない
  • チームメイトに打ち明けなかったことで、チームメイトは信頼されていないと感じたかもしれない


これらの情報をエッセイの中で1つの流れにすると次のようになります。

 

私は物語(A)のアスリートの行動が適切であったと考える。それゆえに、私が彼と同じ立場にあるとするなら、彼と同じ行動を取るであろう。確かに、運が悪ければ父親を看取ることができなかったかもしれないし、彼の家族としてはチームを離れて父の元に戻ってきてほしかったかもしれない。さらに、彼がチームメイトに打ち明けなかったことで、チームメイトは信頼されていないと感じたかもしれない。しかしながら、彼が父の危篤を打ち明けなかったことで、チームメイトに不安を感じさせることもなく、結果的にチームの勝利に貢献できた。彼の決断とチームの勝利の結果、チームがさらに団結し国際的な成功につながった。したがって、私は彼の決断を正しいと考え、自分も同じ行動を取るであろう。


このように主題に対してあえて反例を挙げることで主題の説得力を強める書き方英文エッセイにおいてはよく使われる手法です。


今回のシリーズでお伝えしたかったのは、形式的に200ワードをワンパラグラフで書き、さらに箇条書きにはしてはいけないという設定をよく考えることの重要性です。


「自由英作文」と呼ばれるのは「自分の意見を自由に書いてもよい」という点から名付けられたのではないかと思いますが、「英文エッセイの形式」という観点からすると大きな自由は見つかりません。英文エッセイでは主題を設定し、その主題をサポートするためにどのように情報を展開していくべきかを考える必要があるわけです。

 

(鈴木順一)

 

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