いま人生は長く、その中で必要となるスキル等は変更に迫られます。職業生活以外の面でもそうでしょう。
- 「どんな生き方をしたいのか」
- 「私らしさってなんだろうか」
人生のさまざまなシーンで生まれる自問自答を大切にすること。その鍵の1つがリカレント教育だと思います。
- 「○○をしたい/学びたい」
- 「好きなようにすればいいじゃない」
- 「でも、後々になって違うものをしたい/学びたいとなるかも・・・」
- 「そのとき、また決めればいいじゃない」
この「そのとき、また決めればいいじゃない」の受け皿がリカレント教育ではないでしょうか。
「軽く考えすぎだ!」と怒られてしまいそうですが、「したいことをする」のが一番「私らしい」生き方だと思います。誰も「私」の人生に責任をとってくれるわけではありません。
「したいことをする」のが難しいのは、「いま決めることがすべて」と思うから。「いま決めることがすべて」と思いすぎることは、可能性を狭めることにつながるのではないでしょうか。
一度レールから外れたら終わり・・・このような考え方はもったいない。また新しいレールの上を進めばいいと思います。
It is not the strongest of the species that survives, nor the most intelligent that survives. It is the one that is most adaptable to change.
- Charles Darwin
文脈は違いますが、このダーウィンの言葉は、自らを変えることの重要性を教えてくれます。
リカレント教育の体現者の言葉をお届けすることは、すでに社会人生活に入っておられる方はもちろん、進路でお悩み中の高校生の方にとっても意味のあることだと思います。
本記事では、リカレント教育の体現者である見谷貴代さん(アイグレー合同会社副代表)の言葉を紹介させていただきます。
アロマセラピストとして活動し、42歳で看護学を学ぼうと決意され、社会人入試で進学。卒業後、日本看護技術学会誌で論文を発表し、現在は、会社経営者として活動されています。
ロジカルノーツSenior Administratorの吉崎が受験指導をさせていただいた経緯もあり、この度の寄稿に至りました。
自己紹介
初めまして、看護師の見谷貴代です。
私は、3年前に神戸大学医学部保健学科を卒業して看護の資格をとりました。今、私は看護技術の1つであるタッチングを看護師や介護士に教える会社を経営しています。
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病院や介護施設で研修を行うだけでなく、がん患者さんや患者家族に「マシュマロ・タッチ®︎」というタッチング技術を教えています。マシュマロ・タッチ®︎の効果を検証した研究も行い、その論文が2018年に日本看護技術学会誌に掲載されました。
そして2020年2月にオープンした大阪国際がんセンターの連携宿泊施設ラクスケアホテルに宿泊中の患者さんやご家族にマシュマロ・タッチ®のケアサービスを提供しています。
キャリアの幅を広げる看護受験
もともと私は看護師ではありませんでした。看護師を目指したのは、今から7年前の42歳の時です。
私は30代の頃、アロマスクールの講師として300名以上に臨床アロマを教えていました。その時に、緩和ケア病棟でがん患者さんにアロマセラピートリートメントを提供した経験から、アロマではなくタッチングに興味を持つようになりました。
自分のキャリアの幅を広げたい、そしてタッチングの効果の研究をしたいと思い、看護師を目指そうと決意した時に出会ったのが、ロジカルノーツの吉崎先生です。私が高校卒業後に進んだのは、看護とはまったく関係ない大阪大学外国語学部でした。看護系の大学は、社会人入試の受験科目に医療をテーマとする小論文があり、その指導をお願いすることになりました。
本当に偶然の出会いでした。
看護系の社会人入試の予備校を探していた私は、いくつかある候補の中から、1つを選んで説明会に予約を入れました。意気揚々と説明会に行った私を迎えてくれたのが、吉崎先生でした。事務所の片隅に座っていた吉崎先生を見た瞬間に、「この先生なら大丈夫!」と思ったのを覚えています。
あとから吉崎先生に聞いたのですが、その時、私は、本来行く予定だった隣の予備校と間違えていたらしいのです。吉崎先生は予約なしに飛び込んだ私をとがめることなく、やさしく対応してくださいました。今となっては、予備校を間違えて良かった!と思っています。
吉崎先生には、私が大の苦手としていた小論文を担当してもらいました。最初の宿題で書いた私の小論文を一読して「これは論文とは言わず、感想文ですよ」と、困った顔をしながらやさしく言われたことを今でも覚えています。感想文しか書けなかった私に、吉崎先生は根気よく指導してくださいました。
半年間の指導のおかげで、私の文章力は飛躍的にアップしました。その他にも吉崎先生には、願書の書き方から面接の受け方、そしてディベートのやり方までトータルで指導していただきました。そのおかげで、無事に神戸大学の医学部保健学科に合格することができたんです。
その時に培った文章力は、大学に入ってからも、学術論文を書いた時も、そして今の仕事にもとても役に立っています。
勉強が楽しい!二度目の大学生活
二度目の大学生活は、現役時代とは全く違うものでした。
一番違ったのは「勉強が楽しい!」ということです。勉強へのモチベーションが全然違います。
1年生の一般教養で経済学に始まり外国語や数学、物理など様々な新しい知識を学ぶことができ、毎日が楽しみでした。看護の勉強は、毎日朝9時から夕方6時までに及び、週末は仕事で休む暇なんてほとんどありませんでしたが、それよりも知らなかったことを知る喜びの方が大きく、現役時代のように授業をさぼって遊びに行こうなんて思ったこともありませんでした。
社会人を経験したからこそ、二度目の大学生活は充実したものになったと思っています。
いったん社会人として働きだすと、体系だって新しいことを勉強する機会は、時間的な制約もあり、ほとんどありません。また、今まで仕事で積み上げてきたキャリアをストップして勉強のために時間を費やすことは勇気が要ることだと思います。
しかしながら、今までの自分を変えたい、自分の可能性を広げたいと思うなら、大学というのは1つの選択肢になると思います。私は、大学に入ったことで世界が大きく広がりました。
進学後にも役立った「3つの教え」
私は大学で看護の勉強と同時に、マシュマロ・タッチ®︎の研究もしたいと思っていました。
研究結果を認めてもらうには、学術論文にしないといけません。学術論文を書くには文章力が重要です。文章構成や適切な表現など、学術論文を書く上での基礎的な知識や構成力を、吉崎先生に指導していただけました。
学術論文は普通の文章とは、まったく違います。自分の主張を科学的根拠に基づき、研究内容を具体的に、わかりやすく、専門用語を使って論理的に構成する必要があります。その時にとても役に立ったのが、予備校時代から吉崎先生に徹底的に教わった論理的思考でした。
吉崎先生は文章を書く上で私に3つのことを教えてくださいました。
- 何を書くのかゴールを決めること
- 書く前に「考える」というプロセスを入れること
- 自分自身の考えを述べること
この3つを実行する力を予備校時代に培ったことで、学会誌に掲載される論文を書けたのだと思います。予備校で教わったことは、私の人生を変えるきっかけとなった学術論文にも、大きく関わっているのです。
ビジネスを広げる学術論文
吉崎先生から学んだ論理的思考は、卒業後のビジネスにも大きく影響しています。
私は今、マシュマロ・タッチ®︎というタッチング技術を、看護師に広めたいと思って活動しています。
マシュマロ・タッチ®︎は、触覚を利用したリラックス法です。患者の安楽を提供する技術として開発されました。臨床で看護師が短時間で実施できるよう、再現性、安全性に考慮し、心地よさを数値化して触れることを科学した技術です。
学生時代の研究をもとにした学術論文で、私は両腕にわずか5分間マシュマロ・タッチ®をするだけでリラックス効果や不安、怒りの軽減効果があることを示しました。この論文が私のビジネスを大きく広げてくれたのです。
医療現場で新しい技術を広めようとする時に、絶対に必要だったのが客観的で科学的な根拠です。看護師になる前は、絶対に無理と言われていた、病院の看護師研修にも導入していただけるようになり、「マシュマロ・タッチ®︎を導入したい」というお話も病院からいただいています。
さらには、論文を書く時の先行研究を執筆された大学先生方と一緒に、タッチング研究会を作り、学会で発表するまでになっています。看護や福祉系の本を出版している中央法規出版から、看護大学の教授と共著で本を出すお話も入ってきています(2021年出版予定)。感想文しか書けなかった私が、本を出すところまで来れたのは、吉崎先生に文章力や論理力を徹底的に鍛えていただいたおかげだと思っております。
受験生の皆さんへ
今、皆さんは受験のために予備校を選ぼうと考えておられると思います。私もそうでした。
予備校時代に培った文章力や論理力は、きっと皆さんの人生を大きく変えるきっかけになると思います。受験は孤独な戦いです。戦い抜くためには、共に伴走してくださる師の存在はとても大きいと思います。
私は、吉崎先生に出会えた巡り合わせに、心より感謝したいと思っています。
追記:そしてあの時、予備校を間違えた私にも(笑)
(アイグレー合同会社副代表 見谷貴代)