4技能を問うテスト
2018年3月26日の大学入試センターの発表によると、2020年度から開始する「大学入学共通テスト」と並行して受験生に課されることになる民間の英語資格・認定試験として23の試験が参加要件を満たしていると確認されました。2020年度以降の受験生は4月から12月の期間にこの23の試験から選んで2回テストを受けて、その成績が各国公立大学に提供されることになります。
これらの23の試験は、「4技能を問う」という点で共通点も多いですが、その目的や難易度など異なる点も数多く有しています。これらを受けて、我々はこの場でそれぞれの資格・認定試験を分析してまいります。
本プロジェクトは「論理的に表現する方法をいかに養うか」をメインターゲットとしていることから、各試験で求められるライティングスキルの側面を重点的に分析することになります。今回の記事では実用英語技能検定、いわゆる「英検」を取り上げたいと思います。
これまでの「英検」
日本人英語学習者にとって最もなじみ深いと思われる英語資格テストが英検ですが、早くて2018年度から「新形式」を導入するという発表が行われました。従来の英検では、1次試験としてリーディング、リスニング、そして一部の級ではライティングという2つか3つの技能が問われており、この1次試験をパスし2次試験としてスピーキングの試験を課す、という形をとってきました。このような形式をとっていることから、1次試験に合格しなければスピーキングの技能が測定されないことになってしまうため、「4技能を等しく測る」という観点から、新形式を導入するに至りました。
これからの「英検」
新しくなる英検では、従来の2段階テスト形式に加えて、3つの形式が新たに加わることになるようです。
- 1日完結型(仮称)
- 公開会場実施(仮称)
- 4技能CBT(仮称)
それぞれの形式の詳しい説明はいまだ発表されていませんが、テストで問われる内容とレベルは従来の英検と同じであるということは判明しています。変化するのは「テストの受け方」になるようです。
「新しい英検」の受け方
1つ目の「1日完結型(仮称)」は文字通り4技能全てを1日で受けることになります。リーディング、リスニング、ライティングの3つについてはこれまで通りのテストを受けて、スピーキングについては「録音式」を採用することになります。「録音式」というのは、他の資格・認定試験でも一部採用されていますが、対面する人物と英語で会話をするのではなく、ボイスレコーダーかコンピュータに向かって英語を話し、それを録音する、という形式です。
2つ目の「公開会場実施(仮称)」では2日に分けて試験が行われます。この形式はこれまでの英検とほとんど同じ形式で、リーディング、リスニング、ライティングのテストを受けて、その合否にかかわらずスピーキングのテストも受ける、という流れです。この形式におけるスピーキングテストは、1つ目の「1日完結型」とは異なり、対面式で行われます。この点においても、従来の英検から変化はありません。
そして3つ目の「4技能CBT(仮称)」についてですが、この形式が従来の英検から最も大きく変化をとげる形式になります。
CBT
CBTというのはComputer Based Testingの略称で、この仮称からすると4技能全てをコンピュータを使ってテストする、ということになります。TEAP CBTやTOEFL iBTなどの試験でもコンピュータを使ったテストが行われており、これらを参考にすると、テストの受け方として次のようになるのではないかと予想されます。
- リーディング・・・スクロールしながら英文を読みすすめて解答をクリックする
- リスニング・・・ヘッドフォンから流れる音声を聞きながら解答をクリックする
- ライティング・・・コンピュータ上でのタイピングが求められる
- スピーキング・・・スクリーンに向かって話し、それが録音される
試験は1日で行われます。尚、「1日完結型(仮称)」と「公開会場実施(仮称)」に先んじて2018年8月からこの「4技能CBT(仮称)」形式のテストが開始されると発表されています。
尚、従来の2段階テスト形式は今回の参加要件を満たしていないと判断されましたが、テストそのものがなくなるわけではないようです。
次回記事では英検で課されるライティングの力について説明させていただきます。
(鈴木順一)