求められる力は同じ
今回の記事では英検で出題されているライティング問題について、さまざまな観点から分析を行ってまいります。
現行の英検では3級、準2級、2級、準1級、1級の5つの級でライティング課題が課されています。リーディングと合わせての制限時間内で解答が求められるので、ライティングだけでの解答時間の設定はありません。
初めに各級の問題文を見てみると、以下のようにまとめることができます。
- 1級・準1級・・・“Write an essay on the given topic.”(与えられているトピックに関してエッセイを書きなさい)
- 2級・・・「以下のTOPICについてあなたの意見とその理由を2つ書きなさい。」
- 準2級・3級・・・「外国人の知り合い・友人からのQUESTIONに対して自分の意見とその理由を2つ書きなさい。」
一見したところ3つのパターンが出題されているのかと感じられますが、級が上がるにつれて言い回しが抽象化し、問題文のことばが英語に変わっているにすぎず、課題として求められていることは同じです。それは「英語でエッセイを書ける力」です。
「英語でエッセイを書く」
各級の問題文をもう少し細かく見てみると、1級と準1級では次のような文言が見つかります。
Structure: introduction, main body, and conclusion
(構成:導入、本文、結論)
2級以下ではこの文言が問題文に含まれていませんが、「英語でエッセイを書く」上では上記の構成を自分の解答内にはっきりと示す必要があります。
また、すべての級の問題で「自分の意見に対する理由」を2つ以上述べることが求められています。
- 1級・・・“Give THREE reasons to support your answer.” (3つ理由を挙げて自分の答えをサポートしなさい)
- 準1級・・・“Use TWO of the POINTS below to support your answer.”(下記のポイントのうち2つを用いて自分の答えをサポートしなさい)
- 2級・・・「以下のTOPICについてあなたの意見とその理由を2つ書きなさい。」
- 準2級・3級・・・「QUESTIONについて、あなたの意見とその理由を2つ書きなさい。」
ここで注目したいのが、準1級の問題文に含まれている“POINTS”です。
“POINTS”をうまく利用する
“POINTS”は準1級と2級で用いられているもので、簡潔に言うと「自分の意見に対する理由を考えるときのヒント」です。準1級の問題イメージを1つ見てみましょう。
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Grade Pre-1
English Composition
- Write an essay on the given TOPIC.
- Use TWO of the POINTS below to support your answer.
- Structure: introduction, main body, and conclusion
- Suggested length: 120-150 words
TOPIC
Agree or disagree: Japan will be a completely cashless society in the future.
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賛成か反対か:日本は将来完全に現金を用いない社会となる。
POINTS
- Safety(安全性)
- Technology(科学技術)
- Effect on businesses(企業に対する影響)
- Effect on consumers(消費者に対する影響)
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TOPICである「日本社会は将来完全に現金を用いなくなる」に対するPOINTSとして「安全性」、「科学技術」、「企業に対する影響」、「消費者に対する影響」が挙げられています。「安全性」であれば「クレジットカードの情報が盗み取られてしまう」や「科学技術」であれば「Apple Payのような電子マネー」などのように、「キャッシュレス社会」の良い点も悪い点も具体的に思い浮かべやすくなると思います。
これらのPOINTSは、現行の英検では準1級と2級で用いられており、準1級においては4つのPOINTSから必ず2つを選ぶ方式、2級では3つのPOINTSが与えられておりそれらを選ぶか否かは受検者に委ねられています。
ワード数とパラグラフ構成
ワード数については各級で指定されている数が異なります。
- 1級・・・200語から240語
- 準1級・・・120語から150語
- 2級・・・80語から100語
- 準2級・・・50語から60語
- 3級・・・25語から35語
これらのワード数から考えると、1級と準1級に関しては複数のパラグラフで解答を構成する必要があり、2級は微妙なラインですが、準2級と3級については1つのパラグラフで解答を構成すれば問題がないと考えられます。
級数によるTOPICのちがい
TOPICについては級数によって大きく難易度の違いがあります。各級で出題されているTOPICの代表的な例を見てみましょう。実際のテストではTOPICは英語で書かれていますが、下では便宜上日本語にしてあります。
<1級>
- 日本は米国との関係を考え直すべきか
- 先進国は移民の受け入れを奨励するべきか
- 言論の自由の制限は正当化できるか
<準1級>
- 人間が他の惑星に暮らす日が訪れるか
- 環境保護のために日本政府はより多くのことをなすべきか
- 日本は完全なキャッシュレス社会になるべきか
<2級>
- 都市部の自動車の数を削減すべきか
- 人々は電気を使いすぎているか
- 起業する若者が増えていることはよいことか
<準2級>
- ファストフードレストランは人々にとって良いか
- 子供たちがスポーツをすることは重要であるか
- 外食するか家で食事をするかどちらが良いか
<3級>
- どの都市を訪れたいか
- 家にいるのと野外で遊ぶのとどちらが好きか
- 夏休みにどこに行きたいか
1級と準1級については背景となる知識をある程度持っていないとすぐにアイデアが思いつかない場合があるかもしれません。2級についてもある程度同じことが言えます。準2級と3級は、上記の通り、「外国人の知り合い・友人からのQUESTIONに答える」という設定ですから、そこまで複雑ではない一般的なテーマが出題されています。
英検のライティング分析は以上となります。次回の記事ではTOEFL iBTについての分析を行います。
(鈴木順一)