言葉というものは、頭の中にある実体のないイメージを他者が認識できるかたちにしたものです。
頭の中にあるイメージは実体がありませんので、それだけではその内容を誰とも共有できません。この状態のままだと、力を合わせて一緒に何かをする場合に支障が生じます。もちろん、身振り手振りで何かを伝えることも可能ではありますが、その効率は非常に悪いと言わざるを得ません。
頭の中にあるイメージを言葉にすることによって、他者とさまざまな営みを効率よく行うことが可能になります。言葉があることによって、お互いの思いが(なんとなくでも)共有できている状態が作り出され、1人の力では成し得なかったことを実現することが可能となり、その蓄積の結果として人間社会は現在のような発展を遂げました。
さまざまな言葉
言葉にもさまざまなものがあります。
- 音声情報としての言葉
- 文字情報としての言葉
1つ目は、頭の中にあるイメージを音声情報にして相手の聴覚に訴えかける言葉です。録音機器などを使用しない限り、その言葉自体はすぐに消えてなくなります。基本的には目の前にいる人とのコミュニケーションの場面が想定され、その場の雰囲気などを考慮した表現の選択をしなければなりません。
2つ目は、音や意味を表す記号のことです。目が見える人には紙などに筆記して視覚に訴えかけ、目が見えない人には指先の触覚に訴えかける点字が使用されます。音声情報と異なり、文字情報は「未来に残る」という性格を有します。そのため、受信者が不特定多数になることも想定されますので、伝わり方のコントロールが難しいです。
他にも、目の前にいる人の視覚に訴えかける言葉として手話というものもあります。
スピーキングとライティング
何かを伝える場面において、それぞれの言葉に特有の難しさがあります。
「音声情報としての言葉」を発信する場合、言った言葉を消しゴムなどで消すことはできません。撤回や取り消しをしたい旨を後で伝えることは可能ではありますが、「言ってしまった」過去を消すことは不可能です。
「文字情報としての言葉」を発信する場合、受信者が不特定多数になる難しさだけでなく、発信時と受信時のタイムラグが大きいという問題もあります。これは「示すべき情報の量」に関する問題として発信者の頭を悩ませることになるでしょう。
相手の反応を観察して追加情報を提示することが可能な口頭での会話とはこの点で大きく違います。
これらの違いを踏まえると、スピーキングとライティングの能力を向上させるために必要なものも見えてくるのではないでしょうか。
リスニングとリーディング
スピーキングとライティングに対し、リスニングとリーディングは言葉で示された情報を受信する場面に関するものです。
ここで注意して考えたいのは、情報を受信する時点で「すでに発信された情報が存在する」という当たり前のこと。
受信する情報は上述の「スピーキングとライティングの難しさ」というハードルを越えてきたものです。したがいまして、リスニングやリーディングのときにも情報を発信する側の視点をイメージしたいところです。そうすることによって、表現の細部にまで目が行き届き、発信者の意図に迫ることが可能になるでしょう。
4技能
2020年度の大学入試改革における大きな柱の1つが「英語4技能評価の導入」です。これが迫っているいま、「4技能」という言葉が注目を集めています。
ロジカルノーツでは4技能を次のように整理して考えています。
- 音声情報を発信する・・・スピーキング
- 音声情報を受信する・・・リスニング
- 文字情報を発信する・・・ライティング
- 文字情報を受信する・・・リーディング
このように考えると、「4技能というのは英語に限ったスキルではない」ということが言えるでしょう。日本語であっても4技能というのは重要です。母国語である日本語でできないことが英語でできるはずもありませんし、4技能のトレーニングをするのであれば日本語でも同様のことをするべきでしょう。
日本語4技能の習熟度が英語4技能にも影響する。このような前提に立っていますので、ロジカルノーツでは、英語と日本語の2つの言語を用いて論理的表現のあり方を考えています。
(吉崎崇史・鈴木順一)