(某予備校での休憩時間)
鈴木「おつかれさまです。時間もありませんので、用件だけ。先日のセミナーで監査法人の方が参加されたじゃないですか。その方が読書会をしてほし・・・」
吉崎「やりましょう!」
鈴木「そう言うと思った!でも、ちゃんと聞いてください(笑)」
吉崎「いやー、前々から読書会はしたいと思っていたんだよね。昔、予備校でそういう企画をやってて楽しかったし。何かリクエストとか聞いてる?」
鈴木「少し時間も落ち着いたようで、いくつかの読書会に顔を出したみたいです。でも、どうやらビジネスセミナーや自己啓発セミナーがメインで、あまり『ひとりではなかなか読めない本を読む』という目的には合わなかったそうで」
吉崎「そうなんだ」
鈴木「仕事柄、国際的な時事問題について話すときに、そういった問題のルーツとなるような教養を身につける必要を感じておられるようですね。民族問題や宗教問題、あとはハムラビ法典とか法制度の歴史に興味があるらしいです」
吉崎「そっかあ。それぞれについての本を扱ってもいいとは思うけど、まあ、社会人が集まる読書会にするなら厳しいか。何冊も持ち運ぶのは大変だし、スキマ時間にも読めるものがいいよねえ・・・そうだ!『世界史』はどう?」
鈴木「いいですね!いろんな問題を扱うことができますし、歴史はまさに教養って感じがします。どの本にします?」
吉崎「マクニールの『世界史』だったら何がどのように影響してって感じのストーリー性もあるし、いろんな問題がどのようにして起こってっていう流れも書かれていて面白いよ。文庫本が出てるから持ち運びやすいし、ちょうどいいと思う」
鈴木「じゃあ、本のリンクも貼って、ちょっとLINEで聞いてみますね・・・あっ、さっそく反応がありました。『お願いします!』とのことです」
(数日後)
吉崎「とりあえず、こんな感じのものを書いてみました。いっぺん確認してもらっていい?」
ウィリアム・ハーディー・マクニール(William Hardy McNeill)の「世界史」(増田義郎・佐々木昭夫訳)を読み、現代時事の基礎となる世界史教養を身につけることを目的とする。これまでの人類がどのような問題に直面し、どのように対処し、現在という時に至ったのか。これらを確認し、議論を重ねたい。
現在の、そして、これからの社会のキーワードは「多様性」であることに疑いはない。文化的背景事情や社会的前提条件の異なる者が時間と(リアルなものかヴァーチャルなものかはケースによるだろうが)空間を共にする。そして、価値観や人生観の大きく異なる者が同一の対象について言葉を交わす。コミュニケーションに参加する者の多様性は、考慮すべき事象の複雑化を招く。
とは言え、「多様性」はいまに始まったものではない。これまで人類は多くの衝突を経験してきた。自と他の交錯が衝突の要因だとすれば、その衝突事例は多様性の問題であると言える。この自と他の交錯の程度が大きくなった時代を現代と呼ぶならば、複雑化した現在という時を考えるヒントは過去にあると言えよう。
本読書会を通じて現代の時事のルーツを考え、複雑化の動きが止まない現代社会について語る言葉を手に入れたいと思う。
特定のエリアについての歴史的事実も重要な示唆を与えてくれるだろうが、さまざまな価値観が混在する現代社会について考察する一材料を得るという目的に鑑みると、エリアの限定のない世界史、ひいては人類史についての学びが適していると思われる。この観点において最適なテキストの1つがマクニールの「世界史」である。
ウィリアム・ハーディー・マクニール(1917−2016)はシカゴ大学の歴史学名誉教授を務めた。本読書会で用いる「世界史」(上巻)の序文には次の記述がある。
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本書をまとめる基本的な考え方は簡単である。いついかなる時代にあっても、世界の諸文化間の均衡は、人間が他にぬきんでて魅力的で強力な文明を作りあげるのに成功したとき、その文明の中心から発する力によって攪乱される傾向がある、ということだ。そうした文明に隣接した人々、またさらにそれに隣接しあう人々は、じぶんたちの伝統的な生活様式を変えたいという気持ちを抱き、またいやが応でも変えさせられる。(中略) 時代が変わるにつれて、そのような世界に対する攪乱の焦点は変動した。したがって、世界史の各時代を見るには、まず最初にそうした攪乱が起こった中心、またはいくつかの中心について研究し、ついで世界の他の民族が、文化活動の第一次的中心に起こった革新について(しばしば二番せんじ三番せんじで)学びとり経験したものに、どう反応ないしは反発したかを考察すればよいことになる。
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もちろん、現在という時を過ごしている者は、これまでに人類が経験したあらゆる歴史的事実を意識して活動しているわけではない。しかしながら、人が思考し、活動するのは完全に自由な条件に基づくものではなく、自らを取り巻く環境的・社会的諸条件と折り合いをつけた結果であろう。そして、その経緯は、現在を生きる者の活動条件に影響していることはもちろん、思考様式にも作用しているのではないか。特に、さまざまな場面で「望ましいあり方」が語られるとき、そこには過去の蓄積から得られた特定の価値観が一定の枠組みを与えていると思われる。すなわち、現在という時が生まれた経緯は、この時代を生きている者にとっての思考や行動に影響を及ぼしているはずだ。
参加者が各自の世界観を発見すること。本読書会がその機会の1つになればと切に願う。
ロジカルノーツSenior Administrator 吉崎崇史
鈴木「いい感じですね!本気で読まないといけない気がしてきました(笑)」
吉崎「事前に範囲と発表者を決めよう。参加者はその範囲を読んできて、当日は発表者が『全体の要約と感想』をスピーチして、そこから議論を重ねる感じで。基本的には社会人が参加することになるだろうし、それぞれの経験をもとに『どのように読んだか』が違ってくると思う。それを共有していくと面白いかなあと。ついでに、ノーツ(本サイトのこと)の記事にもなるし(笑)」
鈴木「じゃあ、僕は英語版を入手して、その観点からの議論も提出したいと思います。そういえば、この話をキリスト教教会関係者の方にしてみたら『時間の都合がつけば参加したい!Skypeでもいける?』とおっしゃてました」
吉崎「おお!それは楽しそう」
鈴木「初回はどうします?」
吉崎「マクニールの『世界史』の上巻の『1 はじまり』の範囲にしようか。シュメル文明以前の範囲。とりあえず、僕が発表を担当するよ」
鈴木「お願いします。みなさんのスケジュールを聞いてみますと、1月19日(日曜)の昼以降がいいらしいです。センター試験で僕たちも暇ですし(笑)」
吉崎「それでいきましょう。会場は、以前に会議で使ったコモンルーム中津の貸会議室をおさえます」
鈴木「当日が楽しみです!」
2020年1月・・・こんな感じで、読書会を始めることにしました。
その中で交わされた言葉をロジカルノーツ内でも公開していきたいと思います。