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理学部卒業後の足取り ~みんな今なにしてる?~

ロジカルノーツ読者の皆様、こんにちは。ひろっこりーです。


前回まで、3回にわたって生物学科での生活についてお話させていただき、やっと卒業までたどり着きました。いよいよ今回でこのシリーズはラストとなります。

 

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そして今回は、「理学部卒業後の足取り」と銘打ってはいますが、「理学部」と言っても、「私が卒業した大学の理学部」での話になりますので、内容についてはご理解いただきたく思います。


卒業後の足取りについては、国公立大学私立大学かによって、また年代によっても、その割合は異なります。あくまでも「ほんの一例」だと思って、ゆる~い気持ちで読んでいただけると幸いです。


では、はじまります!


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大学を卒業したら次は何をするの?

 


多くの人の答えは「就職する」でしょう。


しかし、ここまでこの記事を読んでいただいている方々は、この手の質問に対してすでに身構えているのではないでしょうか。


そうです。


(私が在学していた大学の)理学部では学部卒業と同時にほとんどの人が就職「しません」!


私の学年では、学部卒業後に就職した人は「ほぼ0人」でした!


え!? なんで!?


理学部がいくら風変りだとは言っても、他学部と同じく、「卒業」は「卒業」です。ですので、この時点で就職したいのであれば、もちろんそうすればいいのです。


しかし、理学部生は卒業後、「多くの人がそのまま大学院に進学してさらに勉強を続ける」のです。


読者の方々の中には、


え。。。。まだ続くの?


と思う人もいるでしょう。


まるで、大満足のラストで締めくくられた映画を観終わった直後に、「来年春、続編公開決定!」みたいな告知を見てしまった感じですよね。


でも、大学院に進学する当人たちは決してしぶしぶ大学院に行くわけではないのです。最初から続編ありきで映画撮影しているようなものなので、大学院進学は想定通りなのです。


とはいえ。。。


就職という選択肢があるにも関わらず、「多くの人」が進学というのはやっぱりちょっと不思議ですよね。


もはや、


「よっぽどみんな生物学が好きなんですね!」


だけでは説明がつかない状況です。


このにはいったいどんなからくりがあるのか。


以下、3つに分けて「なぜ大学院に行くの?」というを紐解いていきましょう。

 

【1】理系就職に向けての大学院進学

 


「仕事」と一括りでいっても、多種多様な働き方、業種があります。


その中で、選べるのであれば、できる限り「自分のやりたいこと」に近い仕事をしたいと考えますよね。


理学部生物学科を志した人たちならば、自分の専攻分野に関連した研究機関や開発部などで働きたいと思う人が多いでしょう。


いわゆる「理系就職」というやつです。


一方、そういった理系の研究機関開発部などからすると、いくら世間一般でいう「4年制大学を卒業した人」であったとしても、理学部の卒業生に関しては「研究をするにはまだまだ未熟」という評価になってしまうのです。


医師、歯科医師、薬剤師を目指す学部の大学生活は、最初から、4年制ではなく6年制です。


4年では足りないからです。


同じ理由で、理学部で学ぶ内容についても、それを活かして働くのであれば、最低でも大学院あと2年プラスしないと足りない、と判断されることが多いのです(時代にもよるので昨今の事情は様々でしょうが、)。


そもそも学部卒業論文のテーマも、自分発信ではなく人から提案・提示されたものです。卒業を迎えたとはいえ、本当に自分がやりたい研究まだ何も始まっていないのです。


つまり、「理学部卒業=自分のやりたい(ことに近い)研究の始まり」でもあるのです!


人によっては、ここがスタートライン、ということです。

 

どちらがお好み??

 


仮に、学部卒業の段階で、理系の就職希望先面接を受けるとどんな感じになってしまうのか。


学部卒大学院卒の違いを「料理」にたとえて見てみましょう。


理学部卒の学生は、企業(研究・開発部)にとっては「なま肉」の状態です。


まだ「食材」です。


それはそれでフレッシュで良いのです!


逆にこのフレッシュさを欲している企業もたくさんあるでしょう。ですが、理系就職の場合は、それだとあまりに調理時間がかかってしまうので受け入れられにくいのです。


この先この食材どんな料理になるのか。


日本食なのか、イタリアンなのか、中華なのか。


「なま肉」のままでは、大まかな方向性すら決まってない状態です。それを、下処理して、メニューを一から考えて、食べられる料理に仕上げるまでの工程を、手取り足取りぜんぶやってくれる企業は少ないでしょう。


ところが大学院卒の学生になるとどうでしょう。


なま肉が、小麦粉パン粉をまとって面接に来るのです。


面接官は気づくでしょう。


「これはトンカツになるつもりやな。」


と。


もし採用するとすれば、あとは時期を見計らってサクっとキツネ色に揚げればよいだけです。


そのままソースで食べてもよし、卵でとじるもよし、パンで挟んでもよし、カレーに乗せてもよし。


「うん、使えそうやな。採用!」


となるわけです。


このように、大学院卒であれば、


採用する側社員教育期間(=料理メニューの考案、下準備)大幅カットできるでしょうし、


就活生側も、自分の「やりたいこと(=トンカツになりたい)」「能力(=かつ丼、カツカレー、カツサンドなどにもなれる)」を、より具体的に伝えやすくなるでしょう。


このように、理系就職を希望するならば、大学院まで進学してもう少し修行を重ね、取り組める研究の幅を広げる必要があるということです。


では、話を現実に戻しましょう。


要するに、


「理学部で学んだことを活かして働きたいのであれば、大学院卒の方が動きやすい」


「理系にこだわらず、なるべく早く社会に出たいのであれば学部卒業と同時に就職することも可能」


ということです。

 

理系就職は、狭き門

 


ポジティブに考えると、理系就職をするか否かで、学部卒業時に選択肢があるということですね。


でも。。


理学部生物学科では、生物学が好きな仲間が集まり、入学後も様々な試練や喜びを分かち合ってきました。そして、これから先も、社会という新たなステージでそれを継続したいと思う人は少なくありません。


実際、私の同級生の半数くらいは、この理系就職を目指し、大学院での研究の傍ら、就職活動に励んでいました。


しかし皮肉なことに、こういった人たちを受け入れてくれる門が、とにかく狭い


「研究職」というだけでも募集が少ないのに、「自分の専攻分野に近い研究」となると、もはや少ないどころか「無い」こともざらです。


だから、自分の専攻分野と多少、いや、まあまあズレてるとしても、理系就職が叶うのならばがんばろう。


など、「気持ちの切り替えがきくこと」「ぜったいに譲れないもの」を各々が見極めていかなければならないのです。


学部生活では、ただひたすら「自分がやりたいこと」の追求でした。しかし卒業後は、「自分がやりたいこと」と「社会からのニーズ」をすり合わせていく必要があるのです。


結果として、自分が望む就職かけ離れてしまうことも多々あるでしょう。どうしても折り合いがつかず、就職後に方向転換し、自分で起業する人などもいました。

 

思いを形に

 


しかし、理系就職狭き門であることは(理学部内部では)周知の事実ですから、ここで落ち込んでばかりはいられません。


そんな時は、ここまでの学生生活振り返るのです。


生物学基礎を学び、

さらに深く勉強したい分野を見つけ、

研究計画を立てて、

試行錯誤して、

結果を出して、

それを論文にまとめて、

発表しました。


そうして培った「自分の思いを形(言葉)にする能力」は、どんな業種であっても、仕事をする上で大切な基盤になると私は思います。


だからやっぱり。。。


無駄なことなど1つもないのです。


以上が、「なぜみんな大学院に行くの?」の最初の答え、「理系就職に向けて」でした。

 

【2】研究を続けるための大学院進学

 


先ほどまでの話だと、大学院に進学するかどうかの違いこそあるものの、遅かれ早かれ「いつかは社会に出て就職する」というのが終着点にありました。


しかし、この【2】は一味違います。


必ずしも「一般企業などに就職する」ということを目的としていない個性的な道です。この道の歩み方は様々なので、その中の一部だけご紹介。


学部卒業後、大学院に進学し、さらにその後、大学や研究機関博士研究員(ポスドク)として研究を続ける人がいます。ここまでくるとお給料が発生します。


実際に同級生の中にも、この方向で今も着々と研究の道を歩んでいる人が何人かいます。それぞれにいろんな研究内容や立場があると思うので、一概には言えませんが、ポスドクとして研究を続けている人たちは、なんやかんやで最終的に「教授」を目指して日々研究に励む人が多いということです。


しかし、そこまでたどり着ける人はほんの一握りであり、相応の覚悟と意志の強さ、多少の運などが必要なのだろうと思います。


理系に限らずですが、「収入を得つつ好きなことを貫く」体現することは本当に大変な事なんですね。かっこいいです!


以上、ここまでが、「なぜ大学院に行くの?」の2つ目の答え、「研究を続けるため」でした。

 

【3】理系就職希望ではないけど、一つの区切りとして大学院進学

 


理学部で学んだことを活かして就職するためには4年ではなく6年程度の修業期間が欲しい、ということは前述のとおりです。


しかし、理系就職を希望していないとしても、一つの区切りとして、大学院あと2年(修士課程修了まで)は学んでから社会に出たいという人もたくさんいます。


理学部に在学していると、(大学にもよりますが、)上述の【1】や【2】を目指す人比較的多いということもあり、「修士課程修了までが一括り」というイメージ浸透している場合があるので、自然とそこにゴールを設置する人が多いのかもしれません。


同級生でも、修士課程修了後銀行商社に就職した人もいますし、公務員になった人もいますし、企業の営業職に就いた人もいますし、本当にいろいろです。

 

「学び」自体を目的に

 


これで、「なぜ大学院に行くの?」の大まかな答えが出そろいました。


以上、【1】【2】【3】を合わせると、「理学部生は他学部生よりも比較的多くの人が大学院に進学するが、その目的も、その後の進路もいろいろ」ということです。


。。。。。ぜんぜんまとまった答えにはなってないですね笑。


でもここで、皆さんに最初、「理学部が理系の中でももっとも仕事に直結しない学部」だとお話したことを思い出していただきたいです。

 

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この段階では、「仕事に直結しない」という言葉にマイナスイメージを抱いた人が多いのではないでしょうか。


しかしそれは、言い換えると、「卒業後の選択肢が多い」とも言えるのです。


4年で卒業して就職したり、6年通って理系就職したりしなかったり、研究者になって収入を得たりと、その後の進路人それぞれ多岐にわたります。


それをプラスと捉えるか、マイナスと捉えるかは、大学進学前自身の将来像をどれだけ具体的に描いているかによると思います。


例えば、「医師になりたい」という具体的な夢があるのに、理学部を受験することはないと思います。その場合は、間違いなく医学部に進学すべきでしょう。


でも、そういった明確なビジョンがなくとも、ただただなんらかの理系科目が好きなのであれば、誰でも気軽に進学できるのが「理学部」なのではないでしょうか。


好きなことどっぷり浸かりながら、少数精鋭な仲間を得つつ、その先の進路を模索してみるのも楽しいものです。


大学は必ずしも「就職するために行くところ」ではなく、そこでの学び自体を目的にして進学すべきだと思いますし、それこそが大学の醍醐味ではないかと思います。


そう考えると、最初は遠く感じた「理学部」という選択肢も、案外身近になってきませんか?


そんなあなたはぜひこちら側の世界へ!笑。

 

最後に。。

 


長くなりましたが、「理学部ってどんなところ??」について、少しでもお答えできたでしょうか。


大学生活の中の、理系学部の中の、理学部の中の、生物学科の中の、ごくごく一部の偏った話ではありますが。


ちょっとでも楽しんでもらえたなら嬉しく思います。


とにかく大学は楽しい!


それが伝われば本望です。


また、現在社会人として働いてらっしゃる方々の中にも、様々な理由からもう一度大学で学びたいと思う人がいると思います。


私自身も一度文系学部を卒業したのち、社会に出たあと、再度理学部を受験しました。


大学進学のタイミングは、必ずしも「高校卒業時」だけではなく、「もっと学びたいと感じた時」だと思います。


年齢立場関係ない、と私は思います。


ということで、次回は、「もう一度大学に行きたい! ~学士編入学について~」という新シリーズを始めたいと思います!


またそこでお会いできたら幸いです。


それでは!


ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!


(ひろっこりー)

 

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