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【LESSON 02】「選択」の言葉 - ほんの少し先の未来を見る「先読みリーディング」の技術

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【例文2-1】

 


 深夜、小腹が減ったときの強い味方であるカップ麺。このようなとき、私は、シーフード味のものではなく、カレー味のものを好んで食べる。

 

「どっち?」「こっち」の自演

 


「Aではなく、B」という表現。2つのもの(AとB)を比べ、後者(B)を選ぶものです。


あらかじめ設定されていた選択肢(A、B)の中から「Bを選ぶ」こともありますが、今回は、そういった書き手以外の存在とのやりとり」を前提としないケースについて考えたいと思います。


書き手が自分の判断で「AかBか?」という問題を設定し、それについての答(B)を示す。この「AかBか?」という問題設定には、必ず「意図」があります。その意図に着目した先読みリーディングをしてみましょう。

 

わざわざ比較対象を示した意図

 


【例文2-1】では、【A:シーフード味のカップ麺】【B:カレー味のカップ麺】が比べられており、「私」後者(B)を好んで食べると述べています。


この後、どのような話が続く予想できますか?


【カレー味のカップ麺】についての肯定的評価の話が続く」


これは当然として、もう少し突っ込んだ予想をしてみましょう。


単に【カレー味のカップ麺】のおいしさについて語りたいだけであれば、わざわざ【シーフード味のカップ麺】比較対象にする必要がありません【例文2-1】の続きには、【シーフード味のカップ麺】との違いを示す言葉があるはずです。

 

「よい」「よりよい」「まし」

 


ところで、「Aではなく、Bを選ぶ」という話のとき、基本的には、次の3パターンのどれかが続きます。

 

  • (ⅰ)Aマイナス評価・Bプラス評価【Bのほうがよい

 

  • (ⅱ)Aプラス評価・Bプラス評価、かつ、そのプラスの程度Bのほうが大【Bのほうがよりよい

 

  • (ⅲ)Aマイナス評価・Bマイナス評価、かつ、そのマイナスの程度Aのほうが大【Bのほうがまし


深夜、小腹が減ったときの強い味方であるカップ麺。このようなとき、私は、シーフード味のものではなく、カレー味のものを好んで食べる。」(例文2-1再掲)


この【例文2-1】「深夜、小腹が減ったときにカップ麺を好んで食べる私」の話であり、さらには、カレー味のもの好んで食べる」とあります。


【カレー味のカップ麺】についてのプラス評価が確定していますので、(ⅲ)の【Bのほうがまし】という話が続くとは考えられません。【例文2-1】の続きは、(ⅰ)【Bのほうがよい(ⅱ)【Bのほうがよりよいのどちらかです。

 

比較対象についての評価

 


「【例文2-1】の後には、【シーフード味のカップ麺】との違いを示す言葉があるはずだ」という予想ができることについてはすでに述べました。


さらに言うならば、その中で【シーフード味のカップ麺】についての評価が述べられるはず。そうでないと、わざわざ【シーフード味のカップ麺】を比較対象に用いた意味がないからです。


【例文2-1】の続き【シーフード味のカップ麺】についての評価に着目して読み進めたとしましょう。マイナス評価であれば(ⅰ)プラス評価であれば(ⅱ)だと判断できます。

 

(ⅰ)【シーフード味のカップ麺】をマイナス評価

 


【シーフード味のカップ麺】マイナス評価、つまり、【カレー味のカップ麺】のほうがよいとする場合、議論の筋としては大きく次の2つが考えられます。

 

  • 【シーフード味のカップ麺】あって【カレー味のカップ麺】ないものを「マイナス評価」

 

  • 【シーフード味のカップ麺】なくて【カレー味のカップ麺】あるものを「プラス評価」


【シーフード味のカップ麺】についてのマイナス評価の意味合いは、では欲しくないものがあるからマイナス評価」で、では欲しいものがないからマイナス評価」です。

 

(ⅱ)【シーフード味のカップ麺】をプラス評価

 


【シーフード味のカップ麺】プラス評価、つまり、【カレー味のカップ麺】のほうがよりよいとする場合、「プラスの程度」の話が続きます。ここで「程度」の話について少し考えてみましょう。


「程度」について語るとき、基本的には「基準」の話が必要です。「ものさし」をイメージするとわかりやすいかもしれません。


なにかを評価するとき、その評価の仕方さまざまです。どのような基準で評価するのかどのような「ものさし」を使って価値をはかるのかによって、評価の結果は大きく異なります。


フルーツにおける「糖度」という基準。交換価値を示す「金額」という基準。身のまわりはたくさんの基準(ものさし)であふれています。「どの基準(ものさし)を用いるのか」という選択は、その人の価値観等のあらわれであり、これを明示することは「私」について語る上では特に重要な手続きです。


シーフード味のカップ麺もカレー味のカップ麺もおいしい。だけど、〇〇の点で、私はカレー味のものを好む


(ⅱ)の展開であれば、「この『〇〇の点で』にあたるものが明示されるはずだ」と思いながら読み進めたいところです。

 

特定の比較対象を示した意図

 


さて、(ⅰ)(ⅱ)場合分けをして説明してきましたが、少し違う観点【例文2-1】を考察したいと思います。


【例文2-1】を再度示します。


深夜、小腹が減ったときの強い味方であるカップ麺。このようなとき、私は、シーフード味のものではなく、カレー味のものを好んで食べる。」(例文2-1再掲)


これを読んだとき、「なんで、醤油味のカップ麺が出てこないの?」と思ったあなた。先読みリーディングの発想ができてます。まあ、別に「醤油味」じゃなくても「味噌味」「豚骨味」でもいいのですが…。


【例文2-1】「私」が言いたいのはなにか。「深夜に小腹が減ったとき、カレー味のカップ麺を好んで食べる」ということです。


これだけを考えると、基本的には、比較対象に【シーフード味のカップ麺】を用いる必要はありません「醤油味」でも「味噌味」でも「豚骨味」でも「トマト味」でも「唐辛子味」でも…「カレー味」でなければ比較対象に使えるはずです。


なのに、なぜ【例文2-1】「私」【シーフード味のカップ麺】を比較対象に用いたのでしょうか?

 

わかりやすいから

 


考えられる理由の1つは「わかりやすさ」です。


【カレー味のカップ麺】のよさを伝える上で、最もわかりやすく説明できる比較対象【シーフード味のカップ麺】だと判断


顕著な違いを示せるものとして「シーフード味」が選ばれたということです。

 

必要だから

 


次の【例文2-2】【例文2-3】のような展開もあり得ます。いずれも、例外的【シーフード味のカップ麺】を比較対象にする必要がある場合です。

 

【例文2-2】

 


 深夜、小腹が減ったときの強い味方であるカップ麺。このようなとき、私は、シーフード味のものではなく、カレー味のものを好んで食べる。外食時には海の幸が豊富に使われている「ちゃんぽんラーメン」をよく食べる私だが、不思議なことに、深夜の自宅ではカレー味のカップ麺を食べたくなるのだ。

 

【例文2-3】

 


 深夜、小腹が減ったときの強い味方であるカップ麺。このようなとき、私は、シーフード味のものではなく、カレー味のものを好んで食べる。かつて私はシーフード派だったのだが、この数年は、好みが変わり、完全にカレー派になった。

 

考察

 


【例文2-2】「状況」が鍵となる話で、【例文2-3】は好みの「変化」の話です。これらの場合には、【シーフード味のカップ麺】が比較対象にならないといけません。


さて、先読みリーディングの話に戻ります。【例文2-2】【例文2-3】では、どのような「先読み」をしましょうか?


【例文2-2】では、「外食のとき」「深夜自宅で食べるとき」という「状況の違い」が鍵となります。そのため、その「状況の違い」についての考察が続くだろうと予想できます。


【例文2-3】では、「好みの変化」について語られていますので、要因等の「変化の説明」の話が続くだろうと予想できます。

 

いろいろありますね。

そうなんです。言葉というものは「他のものとの区別」を示す道具なので、比較・対比に基づく「選択の言葉」はしょっちゅう出てきます。そのため、いろいろなパターンがあって難しいです。「こんなパターンもあったよね」というサンプルをたくさんもっている人が有利なので、普段から「選択の言葉」に注目しておくのが理想ですね。

【LESSON 01】「列挙」の言葉 - ほんの少し先の未来を見る「先読みリーディング」の技術

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【例文1】

 


 おいしいラーメンについて語りたいと思う。まず、考慮しなければならない要素が「スープ」である。最近の流行である「つけめん」であれば、「タレ」と言ったほうが適切かもしれない。とにかく、麺や具材ではない液状のものだ。


 そもそも、人は何を求めてラーメンを食べようとするのか。


 腹を満たすためだけであれば、牛丼を腹一杯食べればよかろう。麺類を食べたいだけであれば、立ち食い蕎麦のほうが安くて早い。


 さまざまな味が混ざり調和しているスープとともに麺を味わいたいとき、人はラーメンを食べようと思う。だからこそ、おいしいラーメンについて語るときに「スープ」は外せないのだ。

 

「まず」の後には「続き」がある

 


さて、この【例文1】を読んだとき、どこに注目しましたか?


先読みリーディングの観点からは、第2文の「まず、」という表現に注目したいところです。なぜなら、「まず」の後には「続き」があるから。ラーメンのスープについてのみ語りたいのであれば、「まず、」とは言いません。無駄だからです。


きちんと作られた文章であれば、「次に、麺・・・」のような「スープ」以外の考慮要素が示されるはずです。

 

どの時点でどんな予想ができるのか

 


細かく考えていきましょう。

 

こだわりたいのは「○○を読んだ時点でどのような予想ができるか」です。


【例文1】では、「まず、」の後に、「なぜスープについて語りたいのか」の記述が長々と続いています。これは。ついつい「何の話だったっけ?」ということを忘れてしまいかねません。


では、ひっかからないために、「まず、」を初めて読んだ時点で、どのようなことを考えればいいのでしょうか。説明のために「まず、」の前の記述を確認します。


おいしいラーメンについて語りたいと思う。まず、


第1文で「おいしいラーメンについて語りたい」と書かれており、「何の話をしたいのか」明示されています。なので、(少なくとも当面の間は)「について」の直前で示された「おいしいラーメン」が話題です。


その上で、「まず、」と述べられていますので、この時点で「おいしいラーメンについての語りの中に、『複数のポイント』が示されるはずだ」という予想ができます。


次に、「まず、」で始まる第2文を確認しましょう。


まず、考慮しなければならない要素が『スープ』である。


「まず、考慮しなければならない要素が」を読んだ時点で、第1文目とあわせ考えると、「おいしいラーメンについて語るために『考慮すべき要素』が『複数』示されるはずだ」という予想ができます。


そして、その「考慮すべき要素」の1つ目が「『スープ』である」と示されていますので、「【例文1】の文章を読んでいけば、おいしいラーメンについて語るために『考慮すべき要素』として、『スープ以外のもの』が登場するはずだ」予想できます。

 

「何の話をしているのか」が重要

 


さて、「スープ以外のもの」としてどのようなもの登場しそうでしょうか?


「要素」という言葉に注目します。


辞書で調べれば、「要素」という言葉の意味はいくつか出てきますが、共通して言えるのは「全体の中の一部」ということ。いま「おいしいラーメン」について語っている場面ですので、素直に読めば、「おいしいラーメン」全体にあたります。この「おいしいラーメン」の一部にあたるもの「要素」となります。


気をつけたいのが、あくまで「ラーメン」の話だということ。


醤油ラーメン、味噌ラーメン、豚骨ラーメン・・・のような「特定の種類のラーメン」についての話ではありません。なので、味噌や豚骨など、「特定の種類のラーメン」についてのみあてはまる要素が登場することはなさそうです。


「(ほとんど)すべてのラーメンにとって『要素』と言えるものが登場しそうだ」


【例文1】冒頭2文を読んだ時点で、このような予想ができます。

 

筆者の意図に迫る

 


【例文1】第1段落を確認してみましょう。


おいしいラーメンについて語りたいと思う。まず、考慮しなければならない要素が『スープ』である。最近の流行である『つけめん』であれば、『タレ』と言ったほうが適切かもしれない。とにかく、麺や具材ではない液状のものだ。


第4文「麺や具材」と書かれています。ここで具材「スープ(・タレ)ではないもの」として登場。わざわざ当たり前のことに言及した筆者の意図を考えると、具材は、「スープ以外の考慮すべき要素」として示される可能性が高いと言えるでしょう。


気にしておきたいのは、具材について、その具体的内容に言及していないということ。


には太麺細麺などがあり、具材にはチャーシュー海苔などがありますが、こういった具体的内容を示すと、「(醤油・味噌・豚骨など)特定の種類のラーメン」の話になってしまいかねません。


この点においても、やはり【例文1】「特定の種類のラーメン」の話ではなく、「ラーメン」というものについての話をしたいのだと判断できます。

 

その他の「列挙」表現

 


今回、「まず、」という表現を取り上げましたが、同様のことは、次の表現においても言えるでしょう。


まずは/第1に/第1は/1つ目に/1つ目は/最初に/はじめに/

 


~~~

 

「まず」とか「1つ目」と書かれてあれば○で囲むテクニックは習ったことがあります。後で確認しやすいように。

いいですね。「まず」に注目する習慣がつくと思います。でも、後で確認するだけなのはもったいない。「次は○○がくるはずだ」と思いながら読み進めれば、実際に「○○」を目にしたときに注目することができます。予想が外れて「○○でないもの」が登場したとしても、「あれ?」と思うことで注目できますので、いずれにせよ文章のわかりがいい状態を作ることができます。「気にしながら読み進める」というのがコツですね。

 

【新シリーズ】「ほんの少し先の未来を見る『先読みリーディング』の技術」をはじめます

実は、昨年、ロジカルノーツ名義で電子書籍を出版しようとしていました。まあ、オファーとかはありませんので、自費ですが。。


タイトルは、「ほんの少し先の未来を見る『先読みリーディング』の技術」です。

 

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電子書籍出版計画の経緯

 

なぜ、そのようなことを考えていたのか。

 

少しでも受験生の役に立ちたい

 


まずは、真面目な話から。


2020年、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、学校ではリモート授業が実施され、予備校等営業自粛期間が発生。学習進度の遅れが話題にもなり、受験産業に身を置く者としてはいろいろと考える日々を過ごすことになりました。


私たちはあくまで予備校講師であり、学校等の教育機関で働く身ではありませんので、日本の教育に及ぼす影響一面しか知り得ません。ですが、「進学をサポートする」という仕事柄、「夢を追う人」の不安は、それなりには想像できていると思います。


そこで、「何かできることはないだろうか」と考えたとき、日頃の受験指導の中でお伝えしている「『先読みリーディング』の技術」をまとめようと決めました。

 

語彙・知識があっても読解できない

 


日本語英語の違いはありますが、ロジカルノーツ共同管理人吉崎鈴木は、受験対策指導の現場において、「語彙力が同程度であるのに、読解力に差がある」というケースと向き合い続けてきました。1回目緊急事態宣言時、オンライン会議等のやりとりを重ね、お互いの指導経験で感じたことを共有した結果が「先読みリーディング」でした。


出版しようとしていた「ほんの少し先の未来を見る『先読みリーディング』の技術」「はじめに」の文章を紹介します。

 

 


1回読んだ文章2回読んだ文章、どっちのほうがわかりがいい?」


「もちろん、2回読んだ文章です」


「じゃあ、時間制限のあるテスト読解力をアピールしたいんだったら、どうすればいいかな?」


読むスピードを上げればいいと思います」


「その通り。速読できる人読み慣れてる人有利だね。他には?」


「・・・」


「とても簡単さ。1回読んだとき2回読んだのと同じ効果を狙えばいいんだよ」


「そんなことできるんですか?」


「できるんだよ。読むのが上手な人は無意識かもしれないけど、それをやってると思う」


「そんなの習ったことないです」


「教科書には書かれてないかもね。『慣れ』にかかわるものは言葉で説明しにくいし。そんな方法を説明するのに挑戦してみるから、少しだけ付き合ってくれないかな」



 本書では、読むのに慣れた人「どのように読んでいるのか」を説明します。それは「1回読んだだけで2回読んだ効果を狙う読み方」です。


 そんな魔法のようなことってあるの?


 魔法ではありません。読んだ言葉手がかりに、先の展開を予想するだけです。


 なぜ、2回読んだ文章わかりがいいのでしょうか。それは【2回目の読み】確認作業だから。すでに知っていることを改めて「確認するだけ」なので、わかりがいいのです。「復習したらよくわかる」的なものですね。

 

  • 1回目の読み「内容把握」のために読む

 

  • 2回目の読み「確認作業」のために読む


 これを【1回の読み】のみ完結できればいいと思いませんか?


 それを実現するのが、本書で述べる「先読みリーディングの技術」です。


 しっかりと作られた言葉には、先の展開を教えてくれるヒントが散りばめられています。それをキャッチして、先の展開を予想すれば、「1回読んだだけで2回読んだ効果」を狙うことができるでしょう。


 文章が、「『Aの話』の後に『Bの話』が続く」というものだったとします。

 

  •  ①:「Aの話」を読む

 

  •  ②:「A」の記述をヒントにし、「次は『Bの話』がくるだろう」と予想する

 

  •  ③:「Bの話」を読む


 このときのでは、すでに頭の中で読んでいた「Bの話」「確認作業」をしています。実際の「目」の動きだけを見ると「『Aの話』を読んだ後に『Bの話』を読んだ」という「1回の読み」にすぎませんが、「頭」の中では「『Bの話』を2回読んだ」のと同じような状態です。


 ここでとなるのは「先の展開の予想が当たるか」ということ。本書では、当たる可能性を高めるコツのいくつかを紹介したいと思います。


 先読みリーディングの技術は、「ほんの少し先の未来を読む技術」と言い換えてもいいかもしれません。あれっ、それって、ちょっとした「魔法」みたいですね。

 

ロジカルノーツ - logical notes

Senior Administrator:吉崎崇史

Administrator:鈴木順一

 


「先読みリーディング」は、いわゆる「行間を読む」に近いものであり、それなりに汎用性もあるのですが、受験テクニックの側面が強いものです。受験対策に不安を覚える人にとっての助けになればいいなあと思いながらの執筆作業でした。

 

ロジカルノーツの運営

 


さて、ここからは、「理念」というよりは「生存」の話をさせていただきます。


・・・わかりにくいですね。

 

「お金」の話だから、ちょっとぼかして「生存」と言ってみました。ロジカルノーツ「運営費」の話です。

 

ロジカルノーツ開設時

 


2018年の開設時は、「受験生しか訪問してくれないだろう」と思っていました。なので、クエスチョンマーク(?)を連想させる「はてな」という名前にピンときて、この「はてなブログ」サービスを利用することにしたのです。


調べてみて、「はてなブログ」サービスには、無料プラン有料プランがあると知りました。


いろいろ違いはあったのですが、そのときに着目したのは、「広告を消せるかどうか」ということ。無料プランだと広告が入り有料プランだと広告を消せるのです。


当初は、受験生のアクセスのみ想定していましたので、「未成年者にふさわしくない広告を消したいなあ」と思い、有料プランにしました。


2年コースなら月額600円とかなので、「まあ、いいか」と・・・ここで「お金」を使ったのです。


有料プランにすると決めたら、「どうせお金を使うんだから、有料プランならではの機能を使いたい」となり、「何ができるのかな?」と調べます。


「ほう、独自ドメインが使えるのか」


無料プランだと、サイトのURL「https://○○○.hatenablog.com」のような感じになります。でも、有料プランだと、この「hatenablog.com」のところを変えることができるのです。


「ほほう、独自ドメインにしたほうがカッコいいなあ」


もう心の中では「URLを『https://www.logical-notes.com』にしよう」と決まっています。独自ドメインを取得するために、諸々の契約を締結。「はてなブログ」の有料プランにした段階で「お金」を使ってますので、財布の紐はゆるくなっています


独自ドメインがあれば、何ができるのか・・・そうです、そのドメインを使ったメールアドレスです!


Gmailであれば、メールアドレスの最後は「gmail.com」になります。独自ドメインを取得してると、メールアドレスの最後を「logical-notes.com」にできるのです。そうするための、契約を済ませました。


子どもの頃のお小遣い一緒ですね。大切にしていた100円玉でも、10円くらいの駄菓子を買いに行くと、そのままズルズルと。。。

 

3年の間に

 


「受験生が無料で利用できる学習ツール」として始めたのですが、しばらくしてアクセス解析をしてみますと、「受験生以外の人」に読まれているなあと感じました。


いまでも覚えています。ブラジルからのアクセスが多かったことを!


当初「論理的表現のあり方」を、つまり「どのように書くか」をテーマにしていたのですが、しばらくして問題意識が変わります。


「どのように書くか」に、「何を書くか」で悩んでいる受験生が多いのではないか。


そう考えたものの、「何を書くべきか」は、人によってさまざまです。なので、いろんな人の考え方が反映された文章をたくさん示し、それをヒント「何を書こうかなあ」と考えてもらえるようなコンテンツも始めようと決めました。いまでは、その思いに共鳴してくださった寄稿者の方のエッセイ多数公開しています。


そうすると、嬉しいことではあるのですが、ロジカルノーツを運営するための作業量が増え、作業に集中できる環境が欲しくなりました。また、寄稿者の方を通じ、いろんな業界の話を聞くことも増え、世の中にあるさまざまな役割について「もっと知りたい」と感じるようにもなりました。


そこで、コワーキングスペースと契約することになったのです。


ちなみに、そのコワーキングスペースには快適な貸会議室もあり、読書会「マクニールの『世界史』を読む」の会場としても利用しています(現在は、コロナ禍のため中断)。


そんなこんなで、ロジカルノーツの運営費上がっていきます。なので、近しい人からは、たまに心配されます。「お金、大丈夫なの?」と。


光栄なことに、複数の記事SmartNewsでも取り上げられたということもあり、ロジカルノーツへの総アクセス数はそこそこありました。「広告入れればいいのに」といったアドバイスを頂戴することも多く、「マネタイズ」という言葉を聞くことが増えました。


当時、アフィリエイトの知識がまったくなく、「どんな広告が入るのかを自分で決めることができない」と思い込んでいました。受験生・未成年者にとって不適切な広告が表示されるおそれを考えると、広告掲載に踏み切れず。


「お金のことは、、、そのうち考えよう」


こんなことを思いながら、2020年を迎えました。

 

電子書籍出版計画

 


2020年の夏から始めた「ほんの少し先の未来を見る『先読みリーディング』の技術」電子書籍出版計画「売れたら運営費の足しになる」と、取らぬ狸の皮算用


執筆が進むと、共同執筆者吉崎鈴木は相談をします。


値段どうする?」


元々の方針的に、低価格にするつもり。でも、そうしたら運営費になりません。しかも、「安ければ売れる」というわけでもありません。あと、冷静になって考えると、「そもそも売れるような内容なのか?」という問題もありました。


うーむ。。


そんなことを考えているとき、1通のメールが届いたのです。

 

オファーメール

 


メールの送り主は、インターネット広告の会社の方。広告掲載に関する提案をしてくださいました。


先ほども述べました通り、「広告を入れる」ということについては消極的でした。しかしながら、オファーメールをくださった会社に関して言えば、思っていたものと違ったのです。


どの広告を入れるかを自由に選択できる!


そのため、受験生・未成年者に不適切な広告表示されることを避けることが可能。ロジカルノーツの立場から「こんなサービスがあるんだ、いいなあ」と思えるものについて言及することは、私たちのコンセプトに反するものでもありません。


また、実際に案件一覧を確認してみて思ったのは、すごく勉強になるということ。世の中にあるさまざまなサービス・役割の存在を知ることができ、私たちの視野も広がると感じました。


そして、共同管理人吉崎鈴木で検討を重ね、前回の記事で初めて広告を入れた次第です。

 

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電子書籍出版計画は・・・

 


さて、「ほんの少し先の未来を見る『先読みリーディング』の技術」出版計画の話に戻ります。


結論から言えば、電子書籍化ではなく、このロジカルノーツ上で公開することに決めました。


「適切な価格がどのようなものなのか?」という問題が出たとき、「正直、めんどくさいなあ」と笑。テンションって、一度下がると、なかなか上がりません。。


ロジカルノーツの運営費はどうするの??


この問題に関しては、「広告入れることにしたので、もういいんじゃないか」と。私たちは性分的に「皮算用」が大好きなのです。


気分だけは、運営費の問題が消えています。


「もうさ、『先読みリーディング』は、無料公開でいいんじゃない」


こんな流れで、ロジカルノーツ新シリーズ記事「ほんの少し先の未来を見る『先読みリーディング』の技術」が決まりました。


(吉崎崇史・鈴木順一)

 

「博士学位論文」の世界 - シリア難民の学校運営

ロジカルノーツの読者の皆様、こんにちは。


先日、「卒論再考察」の記事を書かせていただいたWです。

 

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今回、上智大学勤務の、ガラーウィンジ山本香さん(20代でシリア人男性と国際結婚をし、現在は一児の母)とコンタクトをとり、「博士論文の世界」「研究職の世界」を覗かせていただきました。


ガラーウィンジ山本香さん(以下、香さん)は、上智大学の学生たちに授業をされていますが、自身の研究を進めることが研究者としてのメインのお仕事です。紛争を経験した難民の人たちを対象にフィールド調査をし、紛争に影響を受けた社会と、そこでの人びとの教育について研究をされています。


日本では、難民関係・難民の教育について研究をしている人がまだ少ないのですが、近年はこれに関心を持ち、専攻選択をする大学生や大学院生が、目に見えて増えてきているようで、難民問題はこれからトレンドとなるであろうテーマです。(難民支援というと、現在はコロナで日陰になってしまっていますが・・・。)


また、コロナのインパクトにより、この分野の研究・活動はさらなる発展が求められていると思います。国際協力に熱心な大学生たち、海外でボランティアなどをしにいく学生たちは援助の国際規範【Do no harm】(害を与えてはならない)をもっと身近に考えるべき時となるような気もします。(同志社大学の政策学部の学生がこの規範について考察した記事も見かけました。政策系、国際系の学部では必要な基礎知識のひとつだそうです。)


香さんより2020年2月中東ヨルダンでの調査中に肌で感じた【Do no harm】についてのコメントもいただきました。オンライン対応だけでは実施できない研究手法の壁。これから海外に出ることも視野に入れている学生たちにとって未来の課題になると思われる内容なので、これについての香さんのコメントも紹介させていただきます。

 

博士課程からの研究職キャリア

 

現在は大学院(修士課程)に進学する社会人も増えており、博士号というものは割と耳にする、目の前の存在かもしれませんが、実際、日本の大学院でとりわけ“文系の博士過程”まで、勇気をもって進む人は多くないと思います。(個人の感想です)


私は学部生時代教授から「(博士課程は)生半可な気持ちで進む世界ではない」といったことを、耳にタコができるほど聞いていました。これは「大学院」という進路に向かおうとする学生たちへの、教授からの真剣な、現実的な助言です。想像以上に苦労することがこの先待っているということを伝えてくれる、有難い先生だと思っています。


実際、学部生としてのゼミでは、同じ空間で院生の先輩たちの姿を見ることができていました。(ゼミの中に学部生研究生院生が混ざっています。)現場には多様な学生がいます。30代~50代キャリアや独特のルーツをもち(協力隊員として数年間現地活動をしていた、企業で働いている中で興味をもった等)、世界中でフィールド調査をし、研究活動を行います。


そして日本人だけではなく、研究のためにいろいろな国からの進学者がいます。(去年はマダガスカルからの院生とも直接お会いする機会があり、そこではまた良い刺激を受けました。)


このような条件・環境の中で、各自研究を進めますが、根気強さと何か研究に対するセンスが必要な世界のように見て思えました。


そういうこともあり、私自身は、興味関心の強い分野はあったものの、一旦、社会に飛び出し、社会の中で課題を見つける必要があると感じ、就職しました。


日本でこれから大学に進学しようとする高校生や社会人の方や大学院に興味のある方に向けて、修士号のその先「博士号から研究職にいたるまで」のお話を紹介することで、進路選択、分野選択のきっかけの一つとなる話題を提供できればと思います。


ですので、この記事とは別に、文系の博士課程に進むということ・研究職というものについて、そしてとりわけ、女性の研究職へのキャリア形成についても触れながらお話いただいたことも、書こうと思います。


さて、進路話から今回のテーマ:博士課程論文の話題に戻します。博士号の世界で、香さんは一体どんな博士論文を仕上げ、卒業されたのか。


以下、香さんの言葉で記述します。


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シリア難民の学校運営 ーシリア難民の子どもたちをめぐるフィールド調査ー

 


はじめまして。ガラーウィンジ山本香です。


博士学位論文

『シリア難民がつくる学校教育の役割―避難国トルコにおける連帯と分断―』


この博士論文は、シリア難民が運営する学校がコミュニティを形作っているという修士論文の前提の上で展開しています。


シリア難民のコミュニティが実際にどうやって形作られてきたのか経年的に明らかにし、そのコミュニティの内部の人たち(学校の経営者、教師、生徒、その保護者などなど)がコミュニティの維持のため、それぞれどういう働きをしているか。また、彼らが学校を通して強く連帯している一方で、そのコミュニティからあぶれてしまった人たちや、コミュニティを維持するために分断されていってしまった人たちもいる、というネガティブな面も検証しました。


修士論文の概要

シリア難民による学校運営と、そこでの教師の役割を、トルコでのフィールド調査から考察。シリア国境にあるトルコ南東部の街で、シリア難民が運営してるシリア難民の学校でのフィールドワークの結果から、シリア難民のコミュニティにとって学校や先生という存在がどういう役割を果たしてるかを書きました。


私は基本的にシリア難民ケニアの難民キャンプ紛争後の南スーダンなど、紛争に影響を受けた人・社会の教育について研究しています。


ケニアのスラムの住民による学校運営についても論文などを書いたこともありますが、軸としては、


困難な状況にある人たちは、被支援者という脆弱な立場におかれがちだけど、だからといって支援を与えられるだけの立場に甘えているわけではなくて、むしろ誰よりも子どもの教育のためとか自分たちのコミュニティのために必死に動いてるのは彼らのほうであって、その働きは看過されたり無碍にされるべきではない


というのが私の研究の根底にあるテーマです。


そのうえで、博士学位論文の内容を一部、皆さんにお伝えできる形でご紹介します。


この度、博士論文の内容を、本として出版する準備をしています。その出版の都合上、論文の内容をそのままお伝えすることができません。ですが、“世界をフィールドにできる大学の知”の可能性について、少しでも多くの方に知っていただければと思います。


まず、論文内容に入る前にお伝えしたい知識をご紹介し、その後、

 

  • 日本でいう中学生・高校生と同じ年齢の生徒たちからの聞き取り内容
  • 経営側である難民教師からの聞き取り内容
  • シリア難民の運営する学校を卒業し、今回の調査で私の通訳として入ってくれた20歳の青年のお話


をお伝えします。


ここで共有させていただく内容は、この記事の読者層のひとつである高校生大学生の皆さんと現在同じ年齢、同じ時代を生きている大切な10代を生きる生徒たちの言葉です。彼らは大人の不都合な事情のために紛争を経験することとなってしまい、その影響をもろに受けてしまう環境で生きています。

 

全く異なる社会条件・環境の日本(諸問題はあるにしろ、近隣の街で紛争を経験する必要はない社会)に生きる私たちも、イメージして考えやすい年代のシリア難民の生徒たちの言葉を選びました。

 

難民ってどんな人たち?

 


難民=迫害、紛争、災害、人権侵害を理由として、強制的に国外に移住した人びと。

 

有名な歴史上の人物も、実は難民出身だったりします。

 

  • ショパン:名だたるピアノ楽曲を今世に残した音楽家。難民の概念がない時代に生きた方ですが、実質上の難民化を経験していました。
  • アインシュタイン:相対性理論で有名な物理学者。ユダヤ人で、ナチス・ドイツからアメリカに亡命しました。難民は社会に負担をかけるだけの存在ではない、アインシュタインのような人材が自国にほしければ、難民を受け入れては?という論がでたほどで、世界で一番有名な難民といっても過言ではありません。


他にも、フレディ・マーキュリーや、ジャッキー・チェンも難民やそれに関係する背景をもつ方々です。

 

難民の出身国ランキング(UNHCR資料より)

 


2018年時点で、実はシリア出身の難民最も多く33%を占めています。続いてアフガニスタン南スーダンミャンマーソマリア、その他と続きます。


そして、難民を受け入るホスト国2018年時点で、トルコ第1位18%を占めています。ちなみに受入ホスト国のトップ10のうち、先進国ドイツだけです(5位)。難民の84%は途上国で生活しています。


私の博士論文は、このトルコ国内のシリア難民を調査対象にしています。

 

難民にとっての学校教育の役割

 


難民人口(2,590万人)半分18歳以下の子どもたちです。実際、難民の人たちの教育熱はとても高いです。


教育には、子どもたちに知識や資格を提供する以外にも、様々な役割が期待されています。


就学中

 

  • 子どもを守る場所
  • 「日常性」回復のための装置

 

就学後

 

  • 避難国への社会統合
  • 本国の社会文化的背景の維持
  • 平和、復興、開発推進の手段

 

シリアの人々と難民生活

 

シリアってどんな国?

 


メソポタミア文明発祥の地にあり、農業繊維業と並び観光業が盛んな国です。


公用語アラビア語人口約1,800万人で、東京と大阪の人口を足したくらいです。


この人口のうち、70%(3/4)にあたる1,300万人が、紛争の中でもともと住んでいた場所を追われ、国内外の避難先で暮らしています。

 

シリアの人々

 

  • 人懐っこい
  • 親切
  • 誇り高い


(私の勝手なイメージです。)

 

シリア難民ってどんな人?

 

  • 2011年の紛争勃発以降、国外に逃れた人々
  • 世界最大の難民人口:670万人
  • 都市難民=キャンプ外に住む難民が94%


シリア難民最大の受入国トルコです。シリアとヨーロッパの間に位置していて、シリアへの帰還を望む人トルコでの定住を望む人ヨーロッパへの第三国定住を望む人、さまざまな展望を持つシリア難民がトルコ各地に住んでいます。

 

トルコは、宗教生活習慣などシリアと近い部分もありますが、大きな違いとして言語の違いがあります。

 

  • トルコ:トルコ語
  • シリア:アラビア語

 

トルコでの生活

 

  • 64%のシリア難民が貧困ライン以下で生活しています。
  • 18%のシリア難民が極限の貧困ライン以下で生活しています。
  • 96%のシリア難民が小学校に進学しています(統計上)。

※ Regional Refugee and Resilience Plan Turkey 資料より


シリアの人びとが避難した理由は、出身地域、避難した時期、人によってさまざまです。

 

  • 政府による弾圧
  • 政府軍vs諸グループの軍事行動による直接・間接被害
  • 政府軍以外の武装集団による被害
  • 武装組織「イスラム国」による侵攻 他


さくっとこんな感じです。 イメージしづらいところもあるかもしれませんが、ご了承ください。。

 

論文内での「難民」概念の定義

 


難民」という言葉には、様々な定義があります。


難民条約による国際的な定義はありますが、これに当てはまらないが実質上はどう考えても難民でしょう、という人たちもいます。


そこで、私の論文では、正式に「難民」とは認められていない人も含め、

 

国籍のある国から紛争や災害などを理由として避難した人たち


というように定義しています。

 

シリア人難民が運営する学校に通う、子どもたちからの聞き取り調査

 


いくつかの学校を調査対象にし、聞き取り調査アンケート調査を行いました。


その中で印象的だったある17歳の女子生徒は、学校に通う理由について以下のように答えました。

 

ーーー


紛争前まではみんな仲良く暮らしていたのに

紛争が、シリアの人たちをバラバラにしてしまいました。


でも、この学校には、いろんなシリア人がいて、

みんな一緒に学校に通っていて、

みんなひとつだと感じています。

 

ーーー


紛争によってこれまで一緒に生まれ育ってきたコミュニティの人たちがバラバラになったことに対して、彼女自身、シリアで紛争を経験した当時はまだ10代前半で、とてもつらい記憶として残っていました。でも学校での人間関係から、失ったものを少しずつ取り戻せているのかなと感じる回答でした。


トルコという言語も違う国に避難する子どもたちは避難先で孤独を抱えることが多く、「シリア人だから」「難民だから」と差別を受けることもあり、シリア人同士で繋がりを持つことはとても重要な意味をもちます


聞き取り調査の結果から、学校という共同体は、10代の生徒にとって、紛争の経験や難民としての立場を共有し、同じ痛みを持つ友達や先生に会える場所として心が安らぐ場所であることが見えてきました。

 

学校を経営する難民教師の言葉

 


学校経営という決して簡単ではない仕事を、なぜ続けるのか?学校経営者に聞くと、


「(学校経営は)本当につらい。やめてしまいたいと思うこともある」

 

と話した上で、それでも学校経営を続ける理由として


「教育を受けない世代を生み出してしまうことは、

シリア人にとって、いつ爆発するかわからない時限爆弾を抱えるようなものだ」


という答えが返ってきました。


つまり、彼らは、自分たちにとって大事な大事な子どもたちを、国家再建の希望にするか、全てを破壊する時限爆弾にするか、それは今の自分たちにかかっていると考え、教育が停滞してしまうことに対する焦燥感と危機感からなんとかして教育活動を維持していこうとしているのです。

 

20歳の通訳の少年

 


私の博士論文の現地調査では、通訳として20歳のAさんがついてくれました。


シリア難民の聞き取りはアラビア語アラビア語ー英語の通訳をしてもらいました。Aさんは、YouTubeなどで英語の映画や音楽を見たり聞いたりして、独学流暢な英語能力を身に付けていました。


この分野の研究をする以上は、アラビア語はある程度話せるよう学習しました。大学時代はアラビア語専攻、アラビア語の授業を継続して受けていました。シリア人男性との国際結婚で、相手のご家族とはアラビア語を使うこともあります。


ですが、私のインタビューでは相手の深い語りを聞いて理解した上で、次の質問を投げかける必要があります。私の拙いアラビア語では追いつかない部分が多いので、通訳をお願いしました。


Aさん調査対象の学校の卒業生だったので、通訳として学校に戻ってきた彼をみて、先生たちは嬉しそうでしたし、彼自身誇らしそうにしていました。


彼は非常に頭の良い青年で、後期中等学校(日本でいう高校)を卒業する際、中等学校卒業試験(日本でいうセンター試験のようなもの)で総合点90%以上を獲得していました。


しかし、トルコのシリア難民学校をめぐって教育制度がゴタゴタしてる時代12年生(日本でいう高校3年生)だった彼は、受験勉強を必死に頑張って高い成績を修めたにも関わらず、政治的な事情で教育制度が変わったために、「この試験結果は意味がないから、別の試験を受けるように」と言われました。仕方がないので、再度勉強をし直して、1年後2回目の受験もしました。


(高校生・大学生の皆さん、保護者の皆さん、国の勝手な事情でセンター試験、大学入試の努力を2度もしなければならなくなったら... しかも1度目の試験で2度と取れるか分からない良い成績を取っていたのに... と想像するだけで苦しくなりませんか?)


その2回目の受験の結果がようやく出た頃、今度は、Aさんのお父さんがしていたドイツへの難民申請がそのタイミングで受理され、家族ごと難民としてドイツへ移住することになりました。ドイツへ行けることは、彼自身が望んでいたことでもあり、それ自体は彼も喜んでいました。でも、2度も、異国トルコで大学受験をして、必死で努力して良い成績をとったことは、もう何の意味もなさなくなってしまったのです。


Aさんは、苦笑しながら、「馬鹿げた国で賢く生まれても、何の意味もないな」と吐き捨てるように言いました。


私にとっては、かなり衝撃的な出来事でしたが、Aさんの状況説明を聞いた彼の母校の先生は、驚いた様子もなく、「これが私たちの日常だよ」と疲れた表情で言いました。「それでも、彼はドイツに行けるんだから、良いじゃないか」と。


努力が報われるとは限らない、というのは、日本でもよくあることだと思います。


でも、子どもの人生をかけた努力を個人ではどうしようもない国の政治的な事情で踏みにじられてしまうことが、「日常」として諦められてしまう


そういうことが繰り返されると、教育を受けて自分の人生を変えよう、社会を変えていこうと、人びとが希望を持ち続けることさえ難しくなってきます


Aさんのケースは、「難民」として生きることの危うさの一側面を痛感したエピソードの一つでした。

 

考察:学校の存在と役割、教育の意義

 


学校に求めるものとして

 

  • 教科内容をしっかり学ぶ
  • 卒業資格を得て、次のステップに向かう


という大きな目的はありますが、


難民の子どもたちにとって、「学校」に求めるものはそれだけではありません


親以外の大人からの見守りも、子どもにとって大きな意味を持ちます。


自分のことを守ってくれる人、経験や境遇を共有できる存在が学校にある、と子どもたちが感じていることも、調査からわかりました。このために、学校は子どもたちの大切な場所になっています。


特にその傾向は、年齢が下がるほど顕著に見られ、12年生(日本でいう高3)よりも9年生(中3)9年生よりも6年生(小6) に、人とのつながりを学校に求めている子が多く見られました。


シリア難民による学校運営については、報告書があまりありません。シリア難民が自主的にやっていることの記録が非常に少なく難民の声は世界に届きづらいのが現状です。でも、そういう難民自身による営みによって救われている子どもたちが存在しているということを、少しでもお伝えできればと思いました。


Aさんのケースでは、必死で勉強を頑張っても、やってもやっても、報われない環境にいる10代を過ごす若者の事例を見ました。


紛争を経験するだけでも、本来なら子どもが見るべきではない・聞くべきではない・経験するべきではないことばかり起こります。あまりにも危険な状況から身を守るために難民として逃れた子どもが、避難先で、また2次、3次的な影響をさらに経験しているのです。


一年、一年、がとても繊細で、大切な10代なのに、それを無駄にされてしまうような現状は、決して見過ごしてはいけないものだと思います。


教育とは何かを考える時、教育=【mobile light】と表現する研究者がいます。


※Sarah Dryden-Petersonhttps://www.gse.harvard.edu/faculty/sarah-dryden-peterson

“mobile light”という言葉を使っている論文:Refugee education: Education for an unknowable future


mobile light とは、どこにでも持っていける、持ち歩ける、灯


一度「難民」になってしまうと、その後、どんな将来が子どもを待ち受けているのか、誰にも分かりません


真っ暗闇のなかを、身ひとつで、手探りで、進んでいくしかありません。Aさんのように、試行錯誤を繰り返しながら、よりよい未来が見えそうな方へ、移動していくしかありません。その移動は計画的な場合もありますが、紛争や政治状況の影響による移動であれば、常に物理的な財産をすべてもって移動できるわけではありません。


しかし、教育を受けたことで身についた知識やスキルは、どこへ移動しようと、自分の中にあり続けます


外部からの暴力によって奪うこともできません


そしてこの灯は、彼らが自分たちの人生で進むべき道を、見えるようにしてくれるものです。


私は、調査の中でたくさんの子どもやその家族と出会い、教育は暗闇の中で一筋の希望となるものだと改めて感じました。


そして、教育が難民となった人たちの「希望」であり続けてほしいと思っています。


教育は日本人にとっては、嫌でもなぁなぁでも受けることができるけれど、難民となった人たちは、教育に人生をかけています


普通の生活をしていたのに、紛争によって突然すべてを失った人たちがいる。でも、教育によって、将来へのはしごをかけることができるということを、フィールドでは肌で感じています。

 

おわりに

 

ーDo no harmー

オンラインだけでは不可能な研究の手法と

海外へ飛び出す学生たちの未来の課題


私の研究は、フィールドで難民の人たちと交わり、対話をしながら進めていく研究です。


今年2月は、調査のためヨルダンに滞在しました。この期間はまだ中国に対しての騒ぎがメインで、ヨルダン感染者は一人もいない状態でした。


しかし、コロナウイルスのことはヨルダンでも話題になっており、私の「アジア人」的な外見から、街を歩いていると現地の人たちから「コロナ!!」と言われたり、バスで一緒になった人に衣装で口を隠されたりしました。


その当時、コロナ禍の中心アジアにあったので、私がそこにいることで、相手を不安にするという状況に陥ってしまったのです。仕事といえど、ここにきてよかったんだろうかという迷いが強くあった中での調査でした。


シリア難民の人たちは、社会保障なしで生活しているため、医療費を全額自分で出さなくてはなりません。


ただでさえ家計が逼迫していて、持病を抱える人も多いコミュニティに、ウイルスキャリアかもしれない外部者が入っていくのです。


世界中、自分が感染源かもしれないなかで、研究の調査対象者と直接会っていくということはとても難しい状況に変化しました。


オンライン通話でももちろん聞けることはあるし、アンケートならオンラインでも回答が多数得られます。リモートでの調査も考慮に入れていかなければいけません。


でも、フィールドワークは、時間・手間・費用含めたくさんのコストがかかりますが、フィールド(現地)でワーク(work)しなければ分からない部分があるからこそ、これまで多くの研究者が行なってきたのです。


まず到着したら現地をウロウロしながら、住んでる場所がどんな地域なのか住んでいる家はどんなものか服装環境調査者と大人が話している時の子どもの過ごし方や、大人たちの子どもとの関わり方などなど、目で見て、肌で感じ、至る所にあるヒントを出来るだけ広角なレンズでひろっていきます。


これらをふまえて、聞き取りの内容を分析し、調整していく側面があり、それにはフィールドで得られる感覚が必要になってきます。


ただ、会いにいくといっても、例えば会う直前に抗体検査をして陰性と分かっているとしても、相手に不安を与えるという意味では、Do no harm というフィールドワーカーの原則に反することになります。


私の調査では、紛争経験を持つ人々を対象にしているだけに、もともとこの原則に抵触してしまう可能性は低くありません。例えばインタビュー中、私がつい紛争につながる話題に触れてしまったり、父親を亡くした子父親の話題を振ってしまったり、故意ではないにしても相手に紛争など過去のつらい記憶フラッシュバックさせてしまったら、私は立派な 加害者 です。


ここに、今回COVID-19(コロナ)が絡んで、私が加害者になる可能性はさらに高くなりました。二重となった壁をどう乗り越えるかは、研究に携わる者たちだけでなく、これから海外のフィールドに出て学んでいく学生たち大きな課題となると思います。


コロナ禍が国際的な注目を集め、紛争や難民を扱う報道は一時期と比べるとかなり減りました。ですが、このコロナ禍の影響を最も強く受けるのも、脆弱な社会的立場に置かれている難民など、もともと困難な状況にある人たちです。

 

人類すべてが大変な困難に直面している今だからこそ、そういう人たちのことを忘れずに、心に留めていなければと思います。


(ガラーウィンジ山本香)

 

【卒論再考察感想】「大学生」という時間の貴重さを実感

先日はじめた卒論再考察シリーズ。その1回目を担当してくださったWさんからの感想が届きましたので、紹介させていただきます。

 

www.logical-notes.com

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はじめに

 


卒業論文の再考察記事のお話があった時、これまでの足跡自分のしてきた選択振り返る機会になることなので、個人的にはとても嬉しいお話でした。


しかし、いざ再考察をしようと取り組んでみると、大学という環境を出て社会人になった私には、思ってもいなかったハンデがあり、難しさがありました。

 

改めて、​一度きりの人生の中で、大学という環境にいることができる有難さ​を思い出し、大学という環境に身を置けていたことの​貴重さを痛感​しました。「卒論再考察」の企画へのお誘いは、私にとって大切なきっかけになったかもしれません。(吉崎さん、有難うございます。)


論文の再考察をするにあたって難しかったことは、大きく2つあります。

 

  1. 文献へのアクセス
  2. フィールドワーク


以下、私が感じた難しさをシェアします。

 

【困難①】文献へのアクセス

 


大学という環境を出た私は、オープンアクセスになっているもの以外には、自由に文献へのアクセスができません


読みたいもの、調べたいものと、ピンポイントに関連しそうなものを見つけても、会員でないとその文献を閲覧できない場合があります。


学ぶ上で必要なデータベースには、大学自体がお金を払っていて、学生はそれを利用できるというものが多々あります。好きな時に、好きなだけ、専門ツールで文献にあたることができるのは、大学という環境に身を置いているからこそ享受できる貴重な恩恵のひとつ。大学を出てから7年が経ち、卒業論文の再考察をした時、このことに気付きました。


ちなみに、論文を書く上で文献にあたる(先人達の研究成果にあたる)目的は、論文の主題となるリサーチ・クエスチョンを明確に定めるためです。(他にも先行研究を読破するという目的はありますが、本稿ではこのように考えて話を進めます。)


自分がこだわりたい問題関連分野での先行研究。とにかくこの両者をすり合わせ続ける(先行研究と対話し続けるという言葉もあります)ことで、明確なリサーチ・クエスチョンが磨かれていきます。したがって、卒業論文を再考察するために、現時点での​問題点を再度設定しようと思った時、文献必要不可欠な存在だったのです。


もちろん、資料の中には公共施設である図書館ネット検索を利用すればいいものもあります。しかしながら、そのように入手した資料であっても、「公表されている統計・数値を参考に、自分の考察を展開することはしてはいけない」​という論文ルールのようなものもあります。


また、大学時代、私は、「公になっている統計資料の中でも、特に国・行政(政府機関)の数値は鵜呑みにしてはいけない」と言われていました。「GDPの数値ひとつとっても、そのまま受け止めるな」と教わったこともあります。


ネットリサーチをしただけで提出したレポートは、成績評価すらしてもらえなかったことがあります。それが大学時代の学びにおいて初めて経験したショックな出来事でした。


研究(卒業論文の目的)は、勉強とは違います。既にある情報を知り、それを考え、まとめ、自分の中に落とし込むのは勉強です。 これに対し、研究とは、まだ世の中に存在しないもの、新たな知識を自らで生み出す取り組みです。そのため、自分の中にある問題意識を見つけてからは、そこに向けて新しい知を生み出すための活動が重要になります。


また、ネットリサーチだけでは足りない理由として、もうひとつ挙げられます。

 

ネット上から得れる統計情報は、誰にでも入手できる最低限の情報であり、そこには様々な条件設定から漏れた対象者・情報が山のように存在しています。論文として仕上げていきたい​本当の対象は、この数値から漏れているもの​であり、そこを見つけることに価値があるというか、必要があります。

 

例えば、日本の識字率の数値に含まれている対象者は、どういう条件に生きる人を対象に集計されてきたか。また、未就学の子どもの数なんていうのも、そこにカウントされているのはどんな子どもか


日本国籍を持たずに(持てずに)生きている人達は当然、国の統計数値には入っていませんね。​いろいろな数値には、数値として見えない事実がたくさんあります。そこを無視して考察をしてはいけません​。よく「世論調査の結果、なんと!」というものを見ると、「いや私は調査対象に入ってないしな」「それは正確な世論調査ではない」と言いながらテレビを見てしまうひねくれた自分がいます。。

 

【困難②】フィールドワーク

 


権限も立場もない状態で、何かを依頼することは困難です。大学生・研究生であれば、大学名を用いて、正式にインターンやインタビュー等の依頼をかけることができました。しかし、大学を出て社会人になると、この依頼は難しくなります。


年数が経つと、大学生当時にお世話になったフィールドワーク先の方々はいらっしゃらないことがほとんどですし、見ず知らずの何の後ろ盾・名刺もない一市民(しかも、メディア関係者でもない)から「興味関心があるためインタビューさせてほしい」と言うのは・・・非常に怪しいものです。笑


私の場合は論文の分野上、海外フィールドではないにしろ、公共施設や公立・私立学校の中の子ども達を対象にしていた調査だったので、とてもじゃないですが相手にしてもらえないところがほとんどです。ましてや2020年の社会変動もあり、外部者(一般市民)をそうそうと入れることもできませんよね。


いまを生きる子ども達にコンタクトをとるのであれば、まずはボランティアを募る場所を見つけることになるのでしょうが、これも考えもの。そこに長く関与する者ではないと無責任だからです。さすがに再考察の声かけのためだけに気軽に関与し、すぐに抜けるというのは、一時の興味を満たすためにするべきことではありません。

 

卒論再考察の難しさを経験して

 


上に述べた2つの困難を感じたことによって、私は、「大学」という環境にいた頃の有難さを再認識できました。あの時の自分・・・なんて恵まれていたんだ・・と。


当時気になって夢中になって関わっていた環境に、いまでは一般利用者としての訪問しかできなくなっていること、「大学」という後ろ盾がなくなっていることは、当然のことではありますが、寂しさを感じるものでした。


しかし、多くの人が生きやすい、より良い社会をつくるためにある実践学問の中で学ぶことができていた身としては、少し思うところがあります。


大学時代という人生の一時期おいて得られた研究成果社会に還元する難しさ。また、それを私生活に還元するための取り組みに再び挑戦しようとするときの難しさ。大学という環境を出ると、これらに直面します。特に、現状把握のために必要な対象にアクセスしていくことが難しく、歯痒いものです。


やはり​大学時代に一生懸命挑戦したことへ繋がるような、関連する分野での仕事をしていない限り​は、社会人になった後、再度課題と向き合う試みをしたいとなっても、制限があるんだなと気付きました。


少し話はそれますが、社会の中での自分の役割がまだわからない状態での就職活動について、私は甚だ疑問を感じながら卒業しました。「就職先って、こうやって決めるものなのかな」なんてことも感じていました。もしかしたら大学時代の取り組みを継続したいか否かを就職活動の指針とするのもひとつのあり方なのかもしれません。

 

大学に通える状況の有難さ

 


学びの観点最高の環境を提供してくれるのが、大学です。​


家族が頑張って用意してくれた資金で大学に通えている人は、本当に貴重な環境に生まれています。私もその一人でした。こんな恵まれた環境にいる自分だからこそ、もっとこれまで学んだことを還元して、自分も相手も豊かになれること、社会のためになることに全力になれなくっちゃ、どうする!と感じます。


私をずっと応援してくれていたからは、生前よく「仕事、一生懸命がんばれよ。」と言ってもらえていました。大学を出た先の私の未来を、一緒に楽しみにしてくれていた父。その気持ちを想像します。そんなこんなで、大学教育は最高の贈り物なんだろうなと思います。


コロナをきっかけに、私は、大学進学を諦めなければならない人の存在に気付かされました。


自分ではどうしようもない環境によって、目の前の課題に手も足も出ない境遇にある子ども達は多いようです。


私の大学時代の先輩は、シングルマザーの家庭で育ち、自分で学費を稼ぎながら大学に通い続けていました。このことを、私は、コロナの渦中に先輩本人からの話で知りました。当時の私は、先輩のそのような事情を知りませんでした。当たり前のように授業を受けている、超優秀な先輩だったからです。


仕事の合間に勉強し、いろんな権利と機会を放棄せざるを得ず、部活もやめる。気楽に友達と遊んではいられなかったくらい、「あれ?私って出稼ぎにきてたんだっけ?」と思うほど、バイトをしていたそうです。それでも勉強したいことがあるから進学を決めて、自分で稼ぎながら大学に通っていたとのことでした。


当時は行政も大学も支援は十分ではなく、就職活動もハードルが高かったそうです。スーツを買う資金説明会に行く資金も大変な負担だったとのこと。


その先輩は、今、ご自身の経験を活かした仕事をされています。


親がなくなった子ども達の教育を支援する法人で働き、海外でも、戦争に参加していた子どもの社会復帰を支援する仕事をしていました。


日々社会に、大学での学びを還元されています。教育を受けることができると、未来につなげるものがたくさんあるんだなと感じました。

 

最後に

 

徒然と書いてしまって読みづらかったかと思いますが、ここまで読んでくださってありがとうございました。


卒業論文を再考察した期間、自分自身の学生時代の過ごし方を振り返り、大切な気付きや発見をすることが多くありました。そして、大学と社会の繋がりを再度考え、これからの生き方社会の中での自分の役割を考える時間となりました。


現在、新しい大学生生活が待機状態の方就職活動の停止を余儀無くされている方も多く、また、これからの生活に不安をもつ方も多いと思います。


大学という環境にまだ現在も身を置けている方、貴重な幸運をつかめている方、家族の支援で安心できる環境にいることを再認識できている方は、この時間を、これから変化していく世界・社会における自分の道を真剣に見つめ直す時間にしてみるといいかもしれません。

 

  • この期間に目にしたニュースやSNSの情報の中で、心に残ったことはないか、気にかかったのに見過ごしていることはないか
  • 前々から気になってはいたけれど放置していた、心の隅に置きっぱなしのトピックはないか
  • やり直したいことはないか、やっぱり諦めたくないと思える再挑戦したいことに目をつぶってないか


大学で勉強していたこと周囲の人を思い出したり、気になっている先輩に連絡をしてみて何をしているのかを聞いてみたり。そこから、自分の新しい関心、これからの探究心をつなげられそうなものが見つかるかもしれません。


日常生活は少しずつ戻っていっていますが、きっと以前とは違う動きになっているはずです。周りを見渡してみると、普段見えなかったものや新しいものは、自分へのメッセージで溢れていると思います。


自分の時間の中に、人との対話を、期待はせずに、織り交ぜてみることだけでも十分良いと思います。いろんな人と対話をしてみると、案外その一瞬の中でも、友人との大切な絆を再認識できたり、新たな友人・仲間が見つかったりもします。こんな時期に一緒に悩みを共有して考えあったり、腹を割って話せる友人はきっと一生大事な友人です。


自分のエネルギーを使う場所を間違えず、自分が良くなる事で真剣に悩んで、自分の人生をつくるための時間を過ごす。貴重な生きている時間を、みんなで有意義に過ごせますように。

 

(Wさん)

 

現代に必要な「共生」とは何か ー 「司書」さんから学んだ「共生」を「共生学」から見直す(2)

Wさんによる卒論の再考察記事です。

 

 ↓ 前回の内容 ↓ 

www.logical-notes.com

 

前回大学生当時のことを振り返っていただいたのですが、今回は卒論執筆から7年を経た現在の視点で再考察してもらいました。

 

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卒論の再考察 ー「共生学」から現代の共生を考える

 

前回、卒論を書いた当時のことを振り返りました。当時の考察の内容は、省略します。不十分な点が多いのと、私が学部生として書いたのは7年前のものだからです。当時の状況図書館の取組み私の理解当時覚えた感覚は過去のものであり、7年間でこれらは全く新しいものに変化していると思っています。


現在コロナウイルスにより世界中の、地域の図書館博物館などはすべて数ヶ月間閉鎖されていました。この先もアクセスに制限が出ると思います。


どんどん、かたち変化していくでしょう。


ここで現在の状況も踏まえ、共生の在り方再度、考察してみたいと思いました。

 

学問としての「共生学」

 

いま「共生」について考えること重要性が増しています。

 

私は今回の再考察のため、ある1冊を選びました。


共生学宣言​ ​初版発行年月:2020年03月


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環境共生、人間共生、多文化共生など、「共生」に関するさまざまな個別研究が広がるなかで、「共生学」という新たな学問の開拓​に挑戦する。「他者との出会い」「グローバリゼーション」という基礎的概念から出発し、高齢者、食と健康、フェミニズムと地域史、性教育と学校、国際協力、宗教と科学技術をめぐる共創、災害復興とボランティア、死者、潜在的な他者、植物といった共生にまつわる諸課題への実践を包含・体系化し 「共生のフィロソフィー」「共生のサイエンス」「共生のアート」として整序する。 大阪大学大学院人間科学研究科が宣言する「共生学」とは何か。 『共生学が創る世界』(2016年刊)発展編。

 

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この本は大阪大学の出版で、大学院進学を考える層大学院1年生に向けて書かれた教科書です。この1冊の理解の引用となりますが、ここから再考察をします。

 

「共生の定義」


「4つの共生」のうち、私のテーマは「人と人との共生」(共生学宣言: p.9)というものに当てはまります。


加えて、以下のような暫定的な「共生」の定義がありました。


共生とは、民族、言語、宗教、国籍、地域、ジェンダー、セクシャリティ、世代、病気・障害等をふくむ、さまざまな違いを有する人々が、それぞれの文化やアイデンティティの多元性を互いに認め合い、対等な関係を築きながら、ともに生きることを指す(共生学が創る世界: p.4)。


共生学が目指すモデル​は、このようなものでした。

 

  • ①:A + B → A' + B' + α


また、共生とは他にも表し方がありました。

 

  • ②:A + B → A
  • ③:A + B → A + B

 

が意味するのは、社会学でいう「同化主義」


Aが支配する社会マイノリティBが入ってきたとき、BAがよしとする価値観や生活様式を受け入れ、それになじみ、Aのように振る舞うことを余儀なくされる【A + B → A】


が意味するのは、「多文化主義」あるいは「文化多元主義」


マイノリティBは、Bであってもよい(あり続けてもよい)という考え【A + B → A + B】。これはかなりのバリエーションを考えることができるのだが、BはBで存在することはできるものの、Aとの接続や交流は図られず、孤立したままである事態も考えられると、それは「分離主義」となる。


共生学が目指す①のモデル【A + B → A' + B' + α】は、Aも変わり(A’)Bも変わり(B')、そのプロセスにおいて新たな価値なり、制度なりが生まれる(α)(共生学宣言: p.10)。

 

共生のための基本的なツールは「会話」

 

共生の基底に、「会話」を置くこのアイデアは、問題の1つの出発点を与えてくれる貴重なものとして書かれていました。


本書で引用されていたもので印象に残った箇所を紹介します。

 

会話としての正義がコミュニケーション的共同性への思想に内在する

『話せばわかる』という楽観主義や、その裏返しとしての

『分かる者とだけ話そう』という排除の論理、さらには

『分かればもう話す必要はない』という効率主義にコミットするものではないことは既に明らかであろう。

それはまた『話し合ったら文句を言うな』という手続き的正義とも発想を異にする。

会話としての正義の発想を標語的に表現するとすれば、『話し続けよう』である。

それは会話を正義の問題の決定手続きとするのではなく、むしろ会話という営為をパラダイムとする人間的共生の形式そのものを擁護さるべきものとし、その持続を可能にする条件として正義を構想するものである。


井上達夫(1986)『共生の作法ー会話としての正義』創文社

 

「学問としての共生学」ー Kyosei studies

 

共生に向けて学問的営為を積み重ねていくことに、Kyosei studiesの志があり(共生学宣言::p.12)、Kyosei studiesの最大の特徴は、「課題解決の学」という言葉で表されます(共生学宣言: p.13)。


カール・マルクスの言葉が引用されていました。


問題なのは「世界を解釈することではなく、変革することだ」


この学問では世界をフィールドに、さまざまな社会の課題解決に向けた「プロセス」に重要な焦点を当てています。

 

司書さんから学んだ共生のデザインを考え直す(直したいけれども・・・)

 

遠隔ではできない、対面会話の重要性

 

他者との距離を保つことが、これからの社会ルールになりそうですよね。これを忘れて変わらず会話をし続けるのであればよいですが、距離感キープを意識することは大切です。この条件をもって、私たちは会話をしていくことになります。


緊急事態宣言部分解除された日、私は本を受取りに図書館へ行きました。スーパーコンビニのカウンターで見かける透明なシートが、なぜかどこよりも分厚く、白っぽいので司書さんの顔ぼんやりとしか見えませんでした。

   

卒業論文を書く前、インターン中にみた地域住民との交流の光景は、実に感慨深いもので、インパクトが大きかったです。


当時を参考にすると、映像を配信するかたちでのにほんご学習、読書会では、みんなでの学び合いっこ(お兄さん、お姉さんが年下の学年の子たちの面倒をみながら、にほんごを学び合うスタイル)は、なかなか難しくなりそうです。


さまざまなところに住んでいる、外国にルーツをもつ子どもが、親も含め、一箇所に集まる機会、イベントごとをもつ。その場を地域の主体となって提供していたのは図書館であり、その日を楽しみにしていました。そこから見出される社会問題はたくさんあります。


日本で生きるなかで、自分たちのことを伝え合える機会もかなり制限され、図書館がクッションとなっていた部分だけ、心のケアの必要性も増えるかもしれません。この社会に共に住んでいる一人として、この社会に住むことについて心の負担となるものが心の中に停滞してしまうと思います。


何か、共生を可能にするためのサービスは戻らないだろうか。これから図書館では、地域の多文化共生に向け、どういったことを市民に提供できるだろう。。


もちろん、共生の信念をもつ熱心な司書さんたちが賢明に考え、工夫してサービス提供を続けてくれると信じています。 実質的な「共生の手助け」となるようなサービス...徒然書きながらもまだ浮かんできません。考え直せていませんね。

 

消えることのない差別、まだまだ社会の課題解決ができていない「共生学」


テーマとは外れますが、現在のコミュニケーションのツールで用いている私たちの(エセ)会話。先ほど紹介した井上氏の引用を改めて熟読すると、よりよい共生を実現させるための会話とは実に遠いものだなと感じることが多いです。


これは多文化共生での話だけではなく、もっと目の前の人と人との共生レベル世代間、地域間、人種間等の共生レベルでの感覚です。


コロナ渦中、胸の痛むほどの差別問題がたくさん溢れていました。


「これだからアホな若者は。」

「医者にコロナうつされたくない、同じバスに乗ってくるな」

「街でアジア系を見かけたら、ボコボコにする。」


こういった世界規模での未知のウイルスがまわったために、昔から研究されている心理学でもありますが各自の所属グループ(職業、年齢、地域、性別等)ごとの差別形成がもろに浮き出て見えてしまっていた日常でした。


繰り返し記載となりますが

 

共生とは、民族、言語、宗教、国籍、地域、ジェンダー、セクシャリティ、世代、病気・障害等をふくむ、さまざまな違いを有する人々が、それぞれの文化やアイデンティティの多元性を互いに認め合い、対等な関係を築きながら、ともに生きることを指す(共生学が創る世界:p.4)。


共生学の学問のは、この共に生きるための課題解決に向けた「プロセス」


理想モデル【A + B → A' + B' + α】となるような社会に還元できる研究をしていく、重要性が非常に大きい学問だと改めて実感させられました。


※ 関連図書

「共生学が創る世界」​初版発行年月:2016年03月

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人は一人だけでは生きられない.かといって,人がしっかり結びついていた古い共同体は戻ってこない.ばらばらの状態で世界を寄る辺なく漂う現代人にとって,生きる意味はどこにあるか.本書は,大阪大学大学院人間科学研究科の教員たちが,学生に向けて,人とモノ,人と自然,人と人,さらには人と死者をつなぐ共生(共に生きる)の方向に人間再生の可能性を求め,これからの生き方と新しい文明のあり方を探る.


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こちらは、新たに大学に入学してくる学部生たちに向けた本で、「共生学」の入門書の位置付けです。今回選んだ共生学宣言は、この続編で「共生学」のマニフェスト本です。興味のある方は手にとってみてください。


(W)

 

現代に必要な「共生」とは何か ー 「司書」さんから学んだ「共生」を「共生学」から見直す(1)

さまざまな教育機関新型コロナウイルスの影響を受けています。


小学校から高校まではもちろん、これは大学にもあてはまります。

 

www.logical-notes.com

 
大学で使われる教科書(英語)の執筆者でもあるロジカルノーツの鈴木順一(Administrator)が書いた次の記事。

 

www.logical-notes.com

 
これは、実は「(大学)受験英語と大学からの英語のギャップを感じる(べき)時期に休校というのはキツイと思いますよ」との考えから、急遽書き上げたものでした。


いまの大学生の、大学生活はどのような時間になるのでしょうか。さまざまなことに取り組み、いろいろな感情を経験し・・・ということが、もしかしたら大きく変わっていくのかもしれません。


せっかくの大学生活が思ったものではなくて、ネガティブな感情が心の中で大きな割合を占め、一度しかない時間もったいないものにしてしまう。このような事態は、その個人にとってはもちろん、社会的にも大きな損失だと思います。


そこで、ロジカルノーツでは、なにか新しいシリーズを始めようと決めました。「卒論の再考察シリーズ」です。


大学生活を経験した人にとって、「卒論」集大成であることは少なくありません。卒論自体はまとまった文章の1つ(にすぎない)ですが、これに至るまでのプロセスには「大学生活での学び」が反映されています。ただの文章ではありません。卒業から数年が経った後にも、「卒論を頑張った」という思い出が色濃く残り続ける人もいるでしょう。


大学を卒業し、いろいろなことを経験し、見聞を広め、「いまだったら『あのときに書いた卒論』とどのように向き合うのだろうか」を考えて言葉にする。そして、その言葉に触れた人が「大学生活をどのようにしていこうか」を考える一材料にする。


このような展開に結びつけばいいなあと思います。


ふと思いついたこんなアイデアに共鳴してくださったWさんに、今回、シリーズ第1回目を担当していただきます。


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はじめに

 


私は大学時代、「グローバル人間学」という学科に所属していました。 文系理系かという区別では、当時はまだ珍しかった文理融合学科です。


医学薬学工学等のどっぷり理系の研究生も同じ授業を受けることが多く、同じグローバル人間学のコースのなかでも、環境・バイオ系を専門とする学生もいました。

 

「グローバル」「人間」「学」

 


グローバルな潮流と

人間との関係性の在り方と可能性を

不断に問い直していく

未来に開かれた学


言い換えれば


既存の思い込みを排除して

希望のビジョンを描くための統合化の学(グローバル人間学の世界:p.1)


※ 後述の「共生学」は、「グローバル人間学」から改名された学科名です。「共生学」についても定義や学問としての方向性をまとめています。私が在籍していた当時からの変遷があります。

 

「グローバル」に含まれるもの

 


いまの10代・20代の学生は、海外ボランティアインターンを経験している人が非常に多いです。(世界と比較すると日本人は少ないけれど、それでも)


1年前のこの時期、Apple Storeで私の接客をしてくれた、大学2年の男の子は


 「僕、海外の人と仕事がしたくて空港の本屋でバイトしてたんです。で、バイト代ためて毎年どっか途上国いってボランティアしてて、今度の夏休みはインド行ってきます!」


と世間話をしてくれました。


去年の冬は、飲み屋で、専門学校卒業したばかりの21歳の男の子が


「僕は来年、海外にある日本大使館で料理人見習いやるんです。海外で勝負したくて。」

「この前はオーナーのフランス旅行ついていかせてもらって、飲み歩いて、勉強してきました!めっちゃ刺激的で!」


と未来への抱負を話してくれました。


オンライン慣れで育った環境もあり、彼らの感覚からは国境という区切りは既に外れているんだなと感じることも増えました。クラウド・ファンディング等でも実現されているように、いたるところでこの感覚が飛び交っています。


そして10年前、数年前までの、グローバルの言葉の中身も、当時のありきたりなイメージ(絶対的貧困や紛争、先進国の資源競争、多国籍企業etc.)からはもう大きく変化し、さらに複雑化し、深い意味合いになっています。

 

「人間」について

 


今の私たちの満足につながるもの、幸福と感じるもの、それらは今も昔も変わらず、人とのつながりの中にあります。


時代で変化するものが多くても、この軸は変わらないものだと思います。


最近見た言葉では、人との縁から起きるものから(縁起)、がつながり、望む幸福目標達成へと続いていく、というものがありました。


まだ自信はないけれど、この言葉は私にとっては、受け入れやすかったです。

 

現代の学問「共生学」

 


グローバルな潮流のなかで「生きる」ことをどう捉えるのか。


そのために、人が「生きる」ための潜在能力に注目する、人との繋がりの中での生き方社会の在り方を研究するための分野が存在しています。


「共生学」です。


高度な「共生学研究」を掲げる国立大学(関西では京都大学、大阪大学、神戸大学をはじめ)、共生を掲げる大学が増えてきています。


この学問は完全な文理融合であり、1つの学問(法学、哲学、文学等)の範囲にとどまらず、幅広い学問の知識習得(環境学、工学、医学等)と多種多様な研究技法が要求されます。


そして各々好きな専門分野で、研究を進めます。

 

  • グローバル・ヘルス(公衆衛生、疫学、保健医療統計、開発経済学、医療経済学、人口学、法学、等)
  • 難民・人道支援(医療・保健学科の学生が目立っていました)
  • 環境問題 ・コミュニティ(地域共生ー 例) 高齢者、多世代共生等)・死(生老病死)
  • スポーツ
  • 国際医療・医療通訳
  • ジェンダー(女性史等)
  • 性教育(CSE等)
  • 教育・国際開発
  • 伝統継承、先住民、コミュニティ
  • 多言語共生 ・食(栄養学、健康...海外の諸民族の食文化とか)

※ 表記不十分なところがあるかもしれませんがご了承ください...


共生学は、既存の個別的な学問分野・研究領域において、多種多様なサイエンスが展開されるべきであり、多様な研究方法を用いて、問題の状況を俯瞰的・体系的に把握し、それに係る諸要因の関連性や課題・問題の固有性をうまく記述すること、そうした科学的営為なくし て、十分な課題解決を導くことは難しい(共生学宣言: p.16)。


(バイトや遊びや社会活動だけでなく  もっともっと、他分野の読書の時間を増やせばよかったなぁ...と社会人で外に出ると思います)

 

卒業論文 - 当時の学び(Y市とスウェーデンより)

 


私は「グローバル人間学」のなかで、多文化共生・多言語共生というキーワードをもとに活動し、地域を絞り、「外国にルーツをもつ」子どもたちとその周辺の人々(家族、地域住民)にスポットをあて、なかでも彼らにとっての「地域図書館の役割」について、卒業論文を書きました。

 

卒業論文執筆前:社会に参加し、課題を見つける

 


私は先行研究を読みつつ、いろいろなところに飛び回って社会参加していました。

 

  1. 多文化共生の分野では、国内で最も先進的で柔軟な行政での取組みができているY市(非常に多くの外国諸地域との姉妹都市提携、活​発な地域住民の国際交流・相互理解のイベント開催​、国際交流の中心地)の公共施設でのインターンシップ
  2. 外国にルーツをもつ子ども達が多く在学している学区での、学習支援ボランティア
  3. スウェーデンへの留学


スウェーデンは多くの国民が「​外国にルーツをもつ人」であり、「外国にルーツをもつ人」とは「外国生まれのスウェーデン在住者」「両親が外国生まれのスウェーデン生まれの人」を含んでおり、私の研究テーマに近いと感じ、留学を決意しました。

 

卒業論文の流れを考える

 


自分の住むまちに目を向け直し、外国籍の子どもたちとその親御さんや周辺の人々の生活に着目して、卒業論文を書きはじめようとしました。


これまで学んできたこと、読んだ先行研究、社会の中で目にしたこと、経験してきたことを整理します。


(この手順については、大学の学部までしかいっていない私のやり方で、きちんとした研究の手法からはだいぶ不十分だと思います。ご了承ください。)


「生活」と一言でいっても、当然色々な時間の区切りがあり、それぞれの時間の中で、彼らが直面する課題は異なりました。

 

  • 生まれ育った母国語で会話をする家庭での時間:子どもたちのアイデンティティ形成に影響。
  • 日本語で過ごす子どもたちの学校の時間:学習レベル、知能が低いと誤って判断されてしまう子、分断される特別教室、馴染み方に悩みを抱える孤独感、自己主張の仕方。
  • 親たちの「日本式の学校」との接触・交流:言語が十分に伝わっていないことでの多くの問題があります。「遠足のしおり」で要求される「持ち物」ひとつとっても。うまくいかないと、その場にいる子どものメンタルにも影響。
  • 日本での仕事の時間:外国人労働者という枠で働く彼らは、日本語が不十分な場合、リスク管理が十分にできず、工場労働で指を切断してしまう、契約内容で不当な扱いを受けるなど、数々の悲惨な事例を生みます。
  • 怪我や病気、大きな手術で病院へかかる時間:医療通訳が備わっていない病院では、私たちも旅行先で自分の数日間の辛い症状、細かな身体の情報を伝えること、苦労しますよね。それと同じ状況が日々。
  • 自然災害時:各地域で災害時用のかんたんな日本語が用意されていない場合、役所や地域のセンターで災害時の案内先を教えてもらっていない場合、突然の地震が起きても何が起きているのか情報がわからない、緊急事態の情報がわからない等。

 

その他諸々...こういった時間の中で、私が着目したのは、子どもたちの週末の時間親とお出かけをする時間であり、その時間を過ごす場所の1つ、「図書館」をテーマにし、そこでの取組みを可能な限り、追加で調査しました。


(卒業論文のときはここがやり込めず、詰めが全くできていませんでした。心残り...)

 

「図書館」を選択した理由

 


インターンでの経験の中で最も印象深かったこととして、外国にルーツをもつ人のために、平等なサービスを提供し続ける【司書】さんの存在​がありました。


当たり前のように日本で過ごす私にとって、当初このテーマで、「図書館」は全く目に止めることのない、想定にも入っていない場所でした。


しかし、多文化・多言語先進都市、Y市でのインターンシップで、私に必要な指導を最も熱心にしてくださった方が「司書」さんで、そこからの学びのインパクトが大きかったのです。


Y市の多文化共生イベントの日も、日常でも、少し顔を出しに行って喋ったり、困ったことがあると相談にいったり、そして、仲間が来日し、生活を始めるとき、外国にルーツをもつ人たちは、その司書さんの窓口に立ち寄っていたのです。こんな交流が日常的に「図書館」で起きていることを、私は知りませんでした。


司書さんは、彼らが日常生活をおくるために、多言語での必要な情報源をたくさん用意していたのです​。そして、日本語学習のサポートとなる教材を、たくさん図書館に用意されていました​。


その司書さんの​信念​は


すべての人が

手にとれない本がないように

すべての人に

読書を通して

心を豊かに、

読書を通して

生活を向上させ豊かにするお手伝いを


でした。


この「すべての人が手にとれない本がないように」というのは、言語を超えた信念​でした。


聞けば、日本のすべての司書さんは、すべての人に読みたい本を届けるという役割、信念を教わるそうです。

         

そして、​留学先のスウェーデンの図書館も。


外国にルーツをもつ人たち、多言語を話すユーザー向けに絶対お渡しできない本がないようにする。何語であっても、必ず取り寄せ、提供するという強い信念をもつ図書館があり、それにまつわる先行研究もありました。


大人子ども問わず、手に取る「母国語の本」は、その人に心の安心を与え、安らぎの時間を提供するとのことでした。


何不自由なく自分の母国語で過ごす環境にいる私にとっては思いつきもしない読書の影響力がそこにはあり、本による国際支援というのか、図書館が、多言語での共生を実現する場​であることに気付かされました。


同じような信念をもつ司書さんたちは、地域の図書館独自の多言語サービス創意工夫、展開していました。そして、そこに立ち寄る人々は、図書館を拠点にさまざまな情報を入手していました。


次の記事では、「卒論」を書いてから7年が経った現在の視点で、その再考察をしたいと思います。


(W)

 

リトアニアの大学のオンライン授業に参加して感じたこと

先日3月15日、ロジカルノーツではSkypeを使用した読書会を行いました。その際、参加者の方から「リトアニアの大学で日本語教師として勤務している友人がおり、近々、Zoomを使用したオンライン授業に参加する」との話が。


その模様を報告してもらいましたので、紹介させていただきます。

 


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先日私は、リトアニア大学日本語教師として勤務している友人が開催するオンライン授業に参加する機会がありました。

 

  • <テーマ①>リトアニアについて紹介する:リトアニアの大学生が次の3つのトピックのグループに分かれ、用意していたプレゼンテーションをする

 

  1. 料理・食事
  2. 物語
  3. 働き方

 

  • <テーマ②>日本について知る:各トピックについて日本人に質問をし、交流する


日本人の学生グループが訪問予定でしたが、コロナのため、キャンセルとなり、また、リトアニアではコロナが問題になってからは早期に大学が閉鎖され、教師も学生も自宅で学習している状況。そのため、今回、Zoomを利用したオンライン授業に、一般の私たちが参加した流れです。


今回、この授業に参加して感じたことと、気づいたことを簡単に共有できたらと思います。

 

リトアニアについて

 


ちょっと待って、リトアニアってどこ・・・


と思う方は少なくないと思います。


Googleで位置確認を。バルト三国バルト海に面した綺麗な街並みをご覧ください。笑


ユダヤ人迫害の時代、ユダヤ人に【命のビザ】を書き続けた日本人外交官、杉原千畝の歴史リトアニアにあります。


当時の杉原千畝がビザを書き続けていた領事館そのまま保存されていて、私もリトアニアへ訪れた際には領事館へ行ったのですが、日本人としてハッキリと自覚していなかった歴史の1つを肌で感じ、リトアニアという国が近く感じられたことを覚えています。


海外での日本語学習のきっかけとしては、アニメ文化の影響だけでなく、他にも様々なきっかけがあると思いますが、リトアニアでは、その1つにきっと、歴史の影響日本について知る機会があるのだろうと感じています。

 

リトアニアの大学での日本語学習者は、当時、大学生だった私が訪れた年も結構いました。そしてみんな、とても流暢に自分のコミュニケーションツールの1つとして日本語を使い、英語も交えながら自由に交流していました。言語1つでとても親近感が沸き、嬉しさや楽しさが溢れていた時間も思い出します。


今回オンライン授業を開催した友人は、このリトアニアでの教師生活が、2020年9月で満5年を迎えます。大学卒業の年から現在までずっと日本語教師として働いていて、以前は南米エクアドルにいました。

 

リトアニアのコロナ対策

 


オンライン授業の当日時点で、友人曰く、リトアニアは公式的には検疫強化機関中(開始3月13日~4月12日終了予定)とのこと。


食品店、薬局、生活に困るお店以外は、閉店レストランテイクアウトオンリーカフェも実質テイクアウトをしようと思えばできるようなところだけど、ほぼ閉店


・・・これっていわゆるロックダウン?と思ってしまうような徹底した状況ですが、ロックダウンではなく、検疫強化期間中というものらしく。


3月30日月曜からは外出時マスク必須(リトアニアは薬局で購入できる様子)とのこと。外出するといっても、元々人が少ない街なので、混むとしてもバスくらいだそうです。


ただヨーロッパ他国から人は入ってくるので、危機意識が強いとのことでした。日本とは全く違う国全体の判断の徹底、意識の高さを感じられました。


陸続きのヨーロッパであろうと、島国の日本であろうと、今は国で差があってはいけないんだけどなぁ・・・とふと感じつつ。。

 

Zoom授業の感想

 


私個人にはアップデートされていなかった、海外の大学生たちの感覚、現状を肌で感じることができ、とても良い、新鮮なアップデート機会でした。


そしてコロナ発症よりもずっと前から、遠隔での教育の実践をするICTを積極的に活用した海外の教育現場での動きを知り、オンライン授業についての気づき、学びが多くありました。


学生からの質問に対し、情報を共有するとき、考えなければならないことが多くありました。友人が話してくれたことを紹介したいと思います。


ーーー


「これまでは日本語教師として、外国人に教えている、外国語として日本語を教えている、という意識がすごくあったけど、よくよく考えたら、自分は日本語を一番長く使ってるだけで、知らないことは多くある。自分も日本語を学んでいる立場だなと感じた。」


ーーー


まさにその通りで、学生たちから日本の食文化など、各テーマについての質問を受けたとき、その会話の瞬間に、自分の中にある必要な記憶を引き出して、整理して、最新の変動も含めて、なるべく偏りのない話題から、面白い特異なトピックも混ぜたい・・・​その説明には、​どんな日本語が適切なのか日本語のボキャブラリーは・・・というグローバルに交流する際の日本語に対する自分の課題を感じました。


相手が大学生ということもあり、リトアニアの食の流行なども教えてくれて、日本での食の流行も気になったようです。


私は日本に大旋風を巻き起こしたバブルティーについてと少し自制を求められている鰻好きな日本人について話しました。


リトアニアでもバブルティー旋風が起きていたようで、「あいつらは一体いつのまに・・・世界中で同時期にブームになっていたんだ」という会話でたくさん笑って盛り上がりました。


伝統的な日本の食習慣紹介ではなく(こういうのはもうネットで調べたら出てくる)フランクな感じの、現代の一般家庭の食習慣や、街中での流行ものなどを話しました。


この時​どんな日本語が適切なのか、相手にわかりやすく説明する手順は・・・などを考え、日本語のボキャブラリーが私自身に少なかったこと​も自覚しました。


なんなら、リトアニアの大学生のほうが細かな味や匂いの表現日本語でしてくれていました​。


日本語という言語について、未熟なことや知らないことが多くあることを気づかされ、私自身は、単純に日本語を使う時間が長いだけなんだなと学びました。

 

オンライン授業を進めるにあたって自覚すべきこと

 


「教育ツールで試してみる価値のあるものは多くあり、世界では日々前進し続けている。コロナの影響で、オンライン授業に切り替わって、教育現場としてはどう?」と友人に質問すると、次の回答が。


ーーー


「コロナの影響の前から ICT教育ツールをもっと現場に取り入れていく考え方はずっとあったのと、私がリトアニアで大学院生時代ー教育学部だった頃から先生も生徒も、みんな近場の同じ街に住んでるのに あえてオンライン授業っていうのはしょっちゅうやってた。

(中略)

教室で実際に授業することを否定しているわけではなくて、こういうこともできるよ、という感じで。

(中略)

いま、学習の方法を変えざるを得ない状況として捉えるか、あるいは新しいことを試せるチャンスと捉えるか、かなぁ。


オンラインの授業は個人的にわりと好き。こんなんあるんやー!とガチャガチャ試して、今はここぞとばかりに色々試してる。」


ーーー


積極的な取組に対し、何かできない理由を挙げがちな傾向はどこにでもありますが、友人のこの感覚はとても大好きで。なにより、自分のイメージが時代遅れなことにも気がつきました。

 

全員に平等な環境が整ってこそのオンライン授業

 


「難しいなって感じるところは?」と次の質問。


ーーー


今まで全くそういうトレーニングを受けていない先生には負担が大きいよね。やっぱり。


同じように、学習者によっても負担になったりする。かなり、本人の学習に影響を与える。


私の場合だと、パソコンがあってカメラ、マイクがあって、WiFi環境があって、キーボードは日本語入力ができる​ことが前提。


これって当たり前じゃないし、個人の負担になってるんだよ。実際今も。


コロナで、今はオンライン授業がやむを得ない状態とはいえ、かなり個人のリソースをさかせている​ということを教育機関が自覚しないといけないね。


『カメラ、ヘッドホン等を用意しておいてね』と言っても、持っていない子もいるし、あとはオンライン授業に集中できる環境がない(家に静かな環境がない)っていう子もいる。


オンライン授業になってから、姿を消す生徒​ももちろん出てくるわけで。


携帯料金わかんないけど、学生はパケット制限を気にしなきゃいけない。LINEのやりとり、インスタしかやってないのに、いきなりオンライン授業ってなったらすごいパケット。WiFiない子には大変。


生徒が、授業を受けるために支払う物が大きすぎる。


対応できない学生がでて、学校が全員に同じ環境を保証できないなら、やるべきではない。不平等になる。


だから、全員に平等な環境が整ってこその、オンライン授業だよね。


日本でも今はパソコンを持っていない学生多いんじゃないかな。スマホメインだよね。


リトアニアでは、こういったことができない生徒は、出席しなくなるから。


そのための大学からの保証としては、ビデオレコーダーでレコーディングしたものをアップして、システムに入れておくっていうこともあるけど。。


ーーー


社会人として生活していると、WiFiを気にしたこともなかったし、昔からパソコンも使っていたし、私は、自由に自分だけの空間を確保して、今回のオンライン授業に参加できていました。


言われないと気づくことができませんでした。

 

システム役の必要性

 


続けて、教育におけるICT活用について、友人は、次のように話してくれました。


ーーー


ICTを活用した授業は、教師とは別に、システム役が必要。


教育でのICT活用は、本当にサポート役ありきのやり方だと思う。 Zoomも。


操作自体はシンプルやけど、実際に授業を進めていくなかでは、取り入れる側は、常に参加者が切り捨てられないようにしなきゃいけない。


ファシリテーターと別に、テクニカルの人が、だいたいいるんだよ。


部屋分けもブレイクアウトもテクニカルの人がやってて。


ファシリテーターも人数が少なければ別にいいけど、しゃべりながらだと止まったり、やっぱり色んなところで勿体ない感じになるし、ファシリテーターが各部屋を回っている間、生徒たちのシステムトラブル対応、ヘルプ、アドバイス対応者が必要。


チェコの大学との共同オンライン学習では、ファシリテーターとテクニカル、2人で分担してやってたよ。


ーーー


日本の教育現場に取り入れると、先生一人ではじめがちな印象、先生大変・・・な結果予想もあるし、自体も導入する際は、集団授業は特に、こういった問題があることにも気づかなければならないということを、ICT先進者である友人から学びました。


ーーー


学生自身も戸惑っているところはある。新しいやり方をする時は、テスト実施なんかはテスト受ける前も練習を設けたり。


ーーー


友人のこの言葉を聞いて、生徒の評価をする試験シーズンに対しても、オンライン授業化ではしばらく試行錯誤が必要なことを知りました。

 

最後に

 


今回コロナが原因ではありましたが、リトアニアでのオンライン授業に参加し、日本語教師としての外国語学習指導者のグローバルな世界の話面白い取組日々の試行錯誤について多くのことを聞けました。


今回すべて書ききれないですが、リトアニアの大学生たちの授業に参加することは、大変貴重な経験でした。


コロナで世界的な制限が共通してはじまっているなかでの、新しい時代、どうこの状況に適応していくかのヨーロッパ地域での取組に参加できたことは非常に有意義でした。


(読書会参加者)

 

【新高1生の方へ】中高一貫校のライバルに出遅れないための自習用問題&解説

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新型コロナウイルス感染拡大防止のため、4月2日に大阪府は、公立高校など、府立学校の休校5月6日まで延長することを決定。他にも休校期間延長の措置がなされる自治体があり、「新年度授業がいつ始まるのか」という不安を抱えた方は、全国的にも少なくないと思われます。


今回のコロナ騒動新高1生におよぼす影響小さくないと考え、ロジカルノーツでは、3月20日、22日の記事において、新高1生の方に向けた英語学習教材を公開させていただきました。

 

www.logical-notes.com 

www.logical-notes.com

 
教材提供者は、高校1・2年生を対象とした医学部予備校トライアルゼミ宮澤代表(指導科目:英語)です。

 

medical.trial-seminar.co


宮澤「このあいだの教材は役立った?」

吉崎「もちろん。新高1生の方、特に公立校の方にとって学習上の不安材料が増えた状況でもありますし、少しでも活用してもらえればと思っています」

宮澤「せやなあ。ただでさえ中高一貫の子らは進度が早いし、そこと勝負せなあかん公立新高1生は不安よな」

吉崎「なにか追加で、いい問題もらえます?」

宮澤「少し難しいかもしれんけど、俺が中高一貫の1年生を対象に授業をするときに使う問題あるから、それ使う?」

吉崎「ありがとうございます!」

宮澤「わからへんことあるかもしれんけど、そのときには調べて、知識を自分のものにしてくれたら嬉しいな。『こんなんやるんかあ』って思えるだけでも意味あると思う。いずれ中高一貫の子らと勝負せなあかんのなら、先取り学習をしているライバルの学習状況を知っておくのは大事。コロナでみんなしんどいときやけど、自分のために新高1生には頑張ってほしいな。数年後には大学受験があるんやし」


追加教材を頂戴しましたので、公開させていただきます。

 

暗記してほしい表現

 


次の問いの(   )に入れるのに最も適当なものを,それぞれ以下の①~④のうちから1つずつ選びなさい。

 

1.Butter is made (     ) milk.


① for

② of

③ into

④ from

 

【解答】④ from

【和訳】バターはミルクから作られます(でできています)。


⇒ be made from (原料):(原料)でできている ※主に加工されるもの

 

2.We would like (     ) go to Europe.


① with

② about

③ to

④ over


【解答】③ to

【和訳】ヨーロッパに行きたい。


⇒ would like to 原形 :~したい(助動詞の慣用表現)

 

3.What does U.F.O stand (     )?


① out

② for

③ by

④ about

 

【解答】② for

【和訳】U.F.Oとは何を表していますか(何の略ですか)。


⇒ stand for ~:~を表す、意味する、~の略である

 

4.I was much surprised (     ) the result.


① at

② by

③ to

④ of

 

【解答】① at

【和訳】私はその結果に非常に驚いた。


⇒ be surprised at ~:~に驚く

 

5.She can play either tennis (     ) baseball.


① and

② or

③ nor

④ than


【解答】② or

【和訳】彼女はテニスか野球のどちらかができます。


⇒ either A or B :AかBのどちらか

 

英文法・語法問題

 

(   )に入れるのに最も適当なものをそれぞれ以下の①~④のうちから1つずつ選びなさい。

 

1.We all consider (    ) wrong to cheat in exams.


① in

② it

③ of

④ its


【解答】② it

【和訳】私たち皆、試験でカンニングするのは間違っていると考えている。

 

consider to cheat in exams [wrong] の to cheat in exams を後ろに移動させるために

  仮目的語itを置いた形!

 

2.You had better (    ) up late.


① stayed not

② not to stay

③ to stay not

④ not stay


【解答】④ not stay

【和訳】(あなたは)夜更かししない方がよい。


had better は助動詞の仲間なので、後ろには“動詞の原形”のみ!

had better not + 原形『~しない方がよい』は超頻出問題!

 

3.I don’t know if he (   ) tomorrow.


① comes

② will come

③ would come

④ come

 

【解答】② will come

【和訳】明日彼が来るかどうか分かりません。


⇒ 名詞節の中は未来のことは未来形!

 

4.Let’s wait until the next bus (   ).


① comes

② came

③ is coming

④ will come

 

【解答】① comes

【和訳】次のバスが来るまで待ちましょう。


時・条件を表す副詞節の中では未来のことでも現在形を用いる


☆「時」・「条件」を表す接続詞 この後ろの文には注意!

when ~ / after ~ / before ~ / till ~〔~までずっと(= until)〕/ by the time ~〔~までに〕 / as soon as ~〔~するとすぐに(= the moment [minute, second])〕 / if ~ / as [so] long as ~〔~するかぎり〕/ unless ~〔~しないかぎり〕

 

5.Something was wrong with the door : it (    ) not open.


① must

② would

③ might

④ should


【解答】② would

【和訳】このドアはどこか調子がわるい。どうしても開こうとしない。


⇒ 助動詞willの意味は5つ!

  1. 単純未来 〔~だろう〕
  2. 意志未来 〔~するつもりだ〕
  3. 習慣,習性 〔いつも~する,~するものだ〕
  4. 強い意志 〔どうしても~しようとする〕→(否定文で)強い拒絶 〔どうしても~しようとしない〕
  5. 慣用表現のWill you ~? 〔~してくれませんか〕

 

6.He was laughed (    ) his friends.


① by

② on by

③ at by

④ with by

 

【解答】③ at by

【和訳】彼は友達に笑われた。


laugh at ~ で 「~を笑う」。受身にしても切り離さず使う!(be laughed at

 

7.It was careless (    ) him to invite Jane to the party.


① for

② with

③ of

④ to


【解答】③ of

【和訳】ジェーンをパーティに招待するなんて彼は不注意であった。


It is 人の性質 of 人 to + 原形意味上の主語を聞く問題は頻出!

 

8.I had the man (    ) the house.


① paint

② to paint

③ painted

④ to be painted

 

【解答】① paint

【和訳】私はその男性に家を塗ってもらった。


haveは使役動詞 have O V(原形)「Oに(原形)させる、してもらう」

O=Cの関係(その男性=家に色を塗る)が成り立つ!

 

9.I (   ) for two hours when he found me by the riverside.


① was fishing

② have been fishing

③ have fished

④ had been fishing

 

【解答】④ had been fishing

【和訳】彼が川辺で私を見つけた時には、私は(すでに)2時間釣りをしているところだった。


for完了形のキーワード

過去(found)が基準なので過去完了(進行形)にする!

 

10.The girl (    ) the piano over there is a close friend of mine.


① play

② to play

③ played

④ playing

 

【解答】④ playing

【和訳】向こうでピアノを弾いている少女は、私の親友だ。


⇒The girlを説明する分詞の用法!

 

並べかえ問題

 


日本文の意味になるように(   )内の語句を並びかえなさい。【※ 文頭にくる単語も小文字にしてあります】

 

1.私はこの前の日曜日にメアリーとテニスを楽しみました。

 

( ① enjoyed ② tennis ③ I ④ with ⑤ playing ⑥ Sunday ⑦ Mary ⑧ last ).

 

【解答】③-①-⑤-②-④-⑦-⑧-⑥

⇒ I enjoyed playing tennis with Mary last Sunday.

  

2.あなたはもうその本を読み終わりましたか。

 

( ① you ② reading ③ yet ④ have ⑤ the book ⑥ finished )?

 

【解答】④-①-⑥-②-⑤-③

⇒ Have you finished reading the book yet.

  

3.食べ過ぎは健康によくありません。

 

( ① is ② eating ③ too ④ for ⑤ health ⑥ good ⑦ much ⑧ the ⑨ not ).

 

【解答】②-③-⑦-①-⑨-⑥-④-⑧-⑤

⇒ Eating too much is not good for the health.

 

4.私の仕事を手伝ってくれてどうもありがとう。

 

( ① you ② for ③ work ④ me ⑤ with ⑥ thank ⑦ my ⑧ helping ).

 

【解答】⑥-①-②-⑧-④-⑤-⑦-③

⇒ Thank you for helping me with my work.

 

5.エミは今年の夏、ロンドンを訪れるのを楽しみにしています。

 

( ① is ② to ③ Emi ④ this ⑤ London ⑥ visiting ⑦ forward ⑧ looking  ⑨ summer ).


【解答】③-①-⑧-⑦-②-⑥-⑤-④-⑨

⇒ Emi is looking forward to visiting London this summer.

 

同意表現問題

 


次の各組がほぼ同じ意味になるように,( )に入る適切な語句を以下の①~④から選びなさい。

 

1.

a. It has been two years since I saw you last.

b. I (  ) you for two years.


① didn’t see

② haven’t seen

③ am not seeing

④ don’t see


【解答】② haven’t seen

【和訳】

a.あなたに最後に会って2年になります。

b.あなたに2年間会っていません。


『~して〇年になる』の表現 【暗記しよう!】

  • My uncle died three years ago. (過去形)
  • My uncle has been dead for three years. (完了形)
  • It has been (is) three years since my uncle died. (完了形)
  • Three years have passed since my uncle died. (完了形)

 

2.

a. It’s impossible that she said such a thing.

b. She (  ) said such a thing.


① may have

② might have

③ must have

④ can’t have

 

【解答】④ can’t have

【和訳】

a.彼女がそんな事を言ったのは不可能なことだ。

b.彼女がそんな事を言ったはずがない。


a. It’s impossible that she said such a thing.

⇒It’s(現在形)、said(過去形)で、時制がずれているところがポイント


助動詞+完了形の表現 【暗記しよう!】

  • may have+p.p~したかもしれない。
  • must have+p.p~したにちがいない。
  • can’t have+p.p~したはずがない。

 

3.

a. It seems that he had a hard life in his youth.

b. He seems to (  ) a hard life in his youth.


① has

② have

③ has had

④ have had


【解答】④ have had

【和訳】彼は若い頃、きつい生活を送っていたらしい。


a. It seems that he had a hard life in his youth.

⇒seems(現在形)、had(過去形) で、時制がずれているところがポイント


☆今回は、seem to+不定詞に当てはめたいので、時間のずれを表す不定詞

完了不定詞( to have+p.p )の形にしよう!

 

4.

a. She kindly bought me this book.

b. She was (  ) buy me this book.


① too kind to

② not too kind to

③ kind enough to

④ not kind enough to


【解答】③ kind enough to

【和訳】

a.彼女は親切にも私にこの本を買ってくれた。

b. 彼女はこの本を私に買ってくれるほど十分親切だ。


☆副詞的用法の用法の不定詞をつかって表すが、enough to + 原形の使い方は、【形容詞+enough to + 原形】の語順になることに注意!

 

5.

a. He insisted that I should pay the money.

b. He insisted (  ) the money.


① on my paid

② on pay

③ on my paying

④ paying on my


【解答】③ on my paying

【和訳】彼は私がそのお金を支払うほうが良いと主張した。


⇒ a.は複文、b.は単文

 

insist on(強く主張する)を使う場合、前置詞の後ろは動名詞(~ing)になる。さらにinsistするのは『彼』payするのは『私』主語が違う人なので、意味上の主語(my)が入った選択肢を選ぼう!

 

【新高1生の方へ】自習用問題&解説

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高校入学前に「英語」の復習を

 


新高1生の方にとって、入学前の学習はとても重要です。高校で習うものは、中学校のそれよりも広く、かつ、深くなります。これまでにやってきたこととのギャップに戸惑い、うまく適応できない方も少なくありません。「半年後には成績の順位が大逆転」ということは珍しくないのです。


4月から高校生になる方には、いまの時期だからこそ、「英語」の復習(余裕があればちょっとした予習)をしてほしいと思います。

 

なぜ「英語」か?

 


英語は必修科目です。授業数も多く、英語の授業で「つまらない」「わからない」と感じる時間が長ければ、せっかくの高校生活を楽しめなくなるおそれがあります。


また、文系理系問わず、英語は大学受験で必要になります。「国語苦手だから理系に」「数学苦手だから文系に」というわけにもいきません。しかも、理科(化学・物理・生物・地学)や社会(世界史・日本史・倫理・政治経済・地理・現代社会)のように、興味あるもの/得意なものを選択できるわけではありません。

 

なぜ「復習」か?

 


高校英語は中学英語が基礎になります。基礎が固まっていないと、うまく積み上がりません。


「高校入試で頑張ったし、いまさら中学英語の復習とかいらないっしょ」


「こんなのあったなあ」という確認だけでも意味があります。むしろ、それが復習というものです。「人はすぐに忘れる」ということを、自分にもあてはめられる強い人が大学受験で満足いく結果を勝ち取ります。


もちろん、大学受験がすべてではありませんが、高校英語の習熟度は、人生の選択肢の「数」に影響すると言っても過言ではありません。数年後にやってくる高卒後の生き方を考える時期に、「なにかを諦める」要因を1つでも減らす取り組みは、自分自身を大切にする営みだと思います。

 

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この前回の記事では、新高1生への受験指導経験が豊富な、高校1・2年生を対象とした医学部予備校トライアルゼミ宮澤代表(指導科目:英語)のお話を紹介しました。

 

新高1生は動詞の活用形を復習すべきだということでしたので、宮澤代表にもらった【入学前におさえておきたい活用形まとめ】を公開しました。

 

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新高1生の方に向けた【自習用問題&解説】も頂戴しましたので、今回はそれを公開させていただきます。

 

中学英語の復習に加え、高校英語の準備も含めた問題も入っています。知らないことがあれば、入学前に調べておくと、高校英語の勉強がスムーズでしょう。

 

疑問文と答えの関係をつかむ

 


次の問い(1~5)の[ ]に適語を入れなさい。

 

1.[ ] do you like better, baseball or soccer? ―― Soccer.


【解答】Which

【和訳】野球とサッカーでは[どちらが]好きですか。ーー サッカーです。

 

2.[ ] do they live?  ―― In Hokkaido.


【解答】Where

【和訳】彼らは[どこに]住んでいますか。 ーー 北海道です。

 

3.[ ] car is this?  ―― It’s Mike’s.


【解答】Whose

【和訳】これは[誰の]車ですか。 ーー マイクのです。

 

4.[ ] do you come to school? ―― By bus.


【解答】How

【和訳】[どのようにして]学校に行きますか。 ーー バスでです。

 

5.[ ] did you come?  ―― Because I wanted to see you.


【解答】Why

【和訳】あなたは[なぜ]来たのですか。 ーー (なぜなら)あなたに会いたかったからです。 

 

暗記してほしい表現

 


次の問い(1~5)の[ ]に入れるのに最も適当なものを、それぞれ以下の①~④のうちから1つずつ選びなさい。

 

1.I was much surprised [ ] the result.

 

① at
② by
③ to
④ of


【解答】① at

【和訳】私はその結果に非常に驚いた


be surprised at ~:~に驚く

 

 

2.He didn’t know such a thing [ ] all.

 

① of
② in
③ at
④ by


【解答】③ at

【和訳】彼はそんな事を全く知らなかった


not ~ at all:全く~ない

 

3.My hat is quite different [ ] yours.


① from

② in

③ of

④ into


【解答】① from

【和訳】私の帽子はあなたのもの(帽子)とかなり違います


be different from ~:~と異なる

 

4.Mt. Rokkou is covered [ ] heavy snow.


① at

② by

③ of

④ with


【解答】④ with

【和訳】六甲山は大雪に覆われている


be covered with ~:~に覆われている

 

5.She can play either tennis [ ] baseball.


① and

② or

③ nor

④ than


【解答】② or

【和訳】彼女はテニスか野球のどちらかができます。


either A or B:AかBのどちらか

 

英文法の重要ポイントを見抜く!

 


次の問い(1~20)の[ ]に入れるのに最も適当なものを、それぞれ以下の①~④のうちから1つずつ選びなさい。

 

1.We will go on a picnic if it [ ] fine tomorrow.


① is

② will be

③ be

④ was


【解答】① is

【和訳】明日晴れれば、私たちはピクニックに行くつもりだ。


We will go on a picnic if it is fine tomorrow.

⇒ 時・条件を表す副詞節の中では未来のことでも現在形を用いる。


☆「時」・「条件」を表す接続詞

  • when ~
  • after ~
  • before ~
  • till ~:~までずっと(= until)
  • by the time ~:~までに
  • as soon as ~:~するとすぐに(= the moment [minute, second])
  • if ~
  • as [so] long as ~:~するかぎり
  • unless ~:~しないかぎり

 

2. [ ] you help me with my homework ?


① May

② Should

③ Shall

④ Will


【解答】④ Will

【和訳】私の宿題を手伝ってくれませんか。


Will you +原形~?:「~してくれませんか」の頻出表現!

 

3.Everyone thought that Jim [ ] later.


① comes

② will come

③ would come

④ comed


【解答】③ would come

【和訳】ジムは遅れてくると皆思っていた。


Everyone thought that Jim would come later.

⇒ 文の中心の動詞が過去(thought)なので、後ろの文も時制がずれる『時制の一致』

 

4.You [ ] come home early so as not to rain.


① had better not

② had not better

③ not had better

④ not better


【解答】① had better not

【和訳】雨にあわないように早く帰らないほうが良い。


had better+原形:「~したほうがよい」の否定形(②を選ばないように!)

 

5.They [ ] there, but they do not live now.


① were used to living

② used to living

③ used to live

④ would live


【解答】③ used to live

【和訳】彼らはかつてそこに住んでいたが、今は住んでいない。


used to+原形(かつて~だった、よく~したものだ)で過去を表す重要表現

 

6.I [ ] English for three years when I became sixteen years old.


① was studying

② have studied

③ had studied

④ studied


【解答】③ had studied

【和訳】私は16歳になったころには、英語を(すでに)3年間勉強していた。


I had studied English for three years when I became sixteen years old.

⇒ 16歳になったころ(過去)より以前に英語を勉強していたので過去完了形(大過去)!


☆ 英語では過去の表現が2つあると、順番を決める!(過去形と大過去)

 

7.She insisted that he [ ] up with the activities in school.


① could keep

② kept

③ keep

④ might keep


【解答】③ keep

【和訳】彼女は彼が学校活動に(しっかり)ついていくべきであると主張した。


She insisted that he keep up with the activities in school.

⇒ insistの後ろのthat節の中は、(should)+原形がくる(shouldは省略もできる!)


keep up with~ :~に遅れずについていく

 

8.Something was wrong with the door : it [ ] not open.


① used to

② would

③ might

④ should


【解答】② would

【和訳】このドアはどこか調子がわるい。どうしても開こうとしない。


助動詞willの意味は5つ!

  1. 現時点で発生した予定 〔~するつもりだ〕
  2. 現時点で発生した予測 〔~だろう〕
  3. 習慣,習性 〔いつも~する,~するものだ〕
  4. 強い意志 〔どうしても~しようとする〕:(否定文)強い拒絶 〔どうしても~しようとしない〕
  5. Will you ~? 〔~してくれませんか〕

 

9.When [ ] you come to Japan?


① has

② have

③ did

④ were 


【解答】③ did

【和訳】あなたはいつ日本に来ましたか。


⇒ 疑問詞When~?は、『ある1点』を表す語で、『範囲』表す完了形では使わない!


☆ 区別!

  • When did you +原形~?の(過去)時制
  • How long have you +p.p~?の完了時制

 

10.He was laughed [ ] his friends.


① at by

② on by

③ by

④ with by


【解答】① at by 

【和訳】彼は友達に笑われた。


⇒ laugh at~で「~を笑う」という意味の群動詞。受身にしても切り離さず使う!be laughed at (by~)

 

11.You [ ] be too careful when you drive a car.


① cannot

② have to

③ may

④ must not 


【解答】① cannot

【和訳】車を運転する際は、いくら注意してもしすぎることはない。


☆ You cannot be too careful when you drive a car.

⇒ cannot A too Bの重要表現。この文を暗記しておこう!

 

12.She spent many hours [ ] the student’s letter into English.


① by translation

② to translate 

③ translate

④ translating 


【解答】④ translating

【和訳】彼女は生徒の手紙を英語に翻訳するのに何時間も費やした。


spend +時間(お金)+(in) ~ing:~ingするのに…を費やす

 

13.When John lived in Oxford, he [ ] often come to see me.

 

① ought to

② would

③ should

④ used to 


【解答】② would

【和訳】ジョンはオックスフォードに住んでいたころ、よく私に会いにきた。


⇒ 過去の習慣を表すwouldは、would oftenでよく使われる。直後にoftenがなければ、④ used toも正解!

 

14.We are looking forward to [ ] you next week.


① see

② look

③ looking

④ seeing


【解答】④ seeing

【和訳】来週あなたにお会いするのを楽しみにしております。


look forward to ~ing:「~を楽しみにまつ」の重要表現!

 

15.Next month I [ ] Alice for 20 years.


① know

② will have known 

③ am knowing

④ will have been knowing 


【解答】② will have known

【和訳】来月でアリスと知り合って20年になる。


⇒ 来月(未来)+ずっと知っている(完了)状態が継続する「未来完了形」を選ぼう!

 

16.I wanted you [ ] to my new house last Sunday.


① come

② coming

③ came

④ to come


【解答】④ to come

【和訳】先週の日曜日にあなたに私の新築の家に(遊びに)来てもらいたかった。


want+人+to 原形:「人に~してほしい」の基本表現!

 

17.It is no use [ ] over spilt milk.


① to cry

② crying

③ being cry

④ cried


【解答】② crying

【和訳】こぼれた牛乳を嘆いても無駄だ(覆水盆にかえらず)


⇒ ことわざ表現!It is no use ~ing(~しても無駄だ)を使った重要表現。

 

18.The garden is filled with [ ] leaves.


① falling

② to fall

③ fallen

④ falled


【解答】③ fallen

【和訳】その庭は落ち葉でいっぱいだ。


⇒ 「落ちてしまった葉」の意味で是非、覚えておいてほしい分詞表現

 

19.He has good reason to get very angry. = He [ ] get very angry.


① may as well

② might as well

③ may well

④ may well as


【解説】③ may well

【和訳】彼が激怒する十分な理由がある。= 彼が激怒するのももっともだ。


may(might) well+原形:「~するのももっともだ」の助動詞慣用表現

 

20.Let’s have lunch here. = [ ] having lunch here?


① Shall we

② What

③ How about

④ Why not 


【解答】③ How about

【和訳】ここで昼食をたべよう。=ここで昼食をたべるのどうですか。


How about+~ing?  What about+~ing?:「~しませんか、するのはどうですか」の重要表現!

 

日本語をヒントに文法知識を使う

 


次の日本文(1~5)の意味になるように(   )内の語句を並びかえ、その5番目にくる番号を選びなさい。【※ 文頭にくる単語も小文字にしてあります】

 

1.私の母は、若い頃きれいだったにちがいない。

My( ① in ② must ③ beautiful ④ youth ⑤ been ⑥ her ⑦ have ⑧ mother ).


【解答】③ beautiful


私の母は、若い頃きれいだったにちがいない

⇒My mother must have been beautiful in her youth.

 ⑧-②-⑦-⑤--①-⑥-④

 

2.この花を日本語で何と呼びますか?

( ① Japanese ② this ③ is ④ what ⑤ called ⑥ in ⑦ flower )?


【解答】⑤ called


この花を日本語で何と呼びますか?(この花は日本語で何と呼ばれていますか?)

⇒What is this flower called in Japanese?

 ④-③-②-⑦--⑥-①

 

3. 大吹雪で時間通りにそこに着くことができなくなった。

The heavy snowstorm ( ① us ② get ③ for  ④ impossible ⑤ to ⑥ it 

⑦ made ) there on time.


【解答】① us


大吹雪で時間通りにそこに着くことができなくなった。(大吹雪が…到着を不可能にした。)

⇒The heavy snowstorm made it impossible for us to get there on time.

 ⑦-⑥-④-③--⑤-②

 

4.彼女の娘はとてもやさしかったので、私に本を貸してくれた。

( ① enough ② daughter ③ lend ④ kind ⑤ me ⑥ was ⑦ to ⑧ her

 ⑨ the book ). 

 

【解答】① enough


彼女の娘はとてもやさしかったので、私に本を貸してくれた。(私に本を貸すくらい十分親切だった。)

⇒Her daughter was kind enough to lend me the book.

 ⑧-②-⑥-④--⑦-③-⑤-⑨

 

5.私たちは、先生の冗談を笑わざるを得ない。

( ① joke ② laughing ③ we ④ teacher’s ⑤ at ⑥ cannot ⑦ our ⑧ help ).


【解答】⑤ at


私たちは、先生の冗談を笑わざるを得ない

⇒We can’t help laughing at our teacher’s joke.

 ③-⑥―⑧-②--⑦-④-①

 

【新高1生の方へ】高校英語で出遅れないための「動詞の活用形」の復習

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年度がわりのタイミングでなされた新型コロナ対策としての臨時休校。多くの方の生活スタイルが変更を強いられています。


さまざまな面での動揺が社会を覆う中、受験産業に身を置く者として、なにかできることはないだろうか。


このように考え、4月から高校に入学される方に向けた自習教材のようなものを公開することにしました。


科目は英語


この科目では、中学範囲の内容を前提とする授業が高校でなされます。新高1生の方には中学範囲の内容を自分のものにした状態で高校の授業を受けてほしいのですが、今回の年度がわりの動揺は、学習環境の大きく変わる方にとって厳しい面があると感じます。


「少しでも気分よく高校生活のスタートをきってほしい」


この思いから、高校の授業がはじまるまでにおさえておきたい知識を示したいと考えました。


もちろん、新高2生新高3生の方にとっても、今回の臨時休校の影響は小さくないでしょうが、各高校の進度は違いますし、また、これを踏まえた措置がなされるかと思われます。そのため、今回は新高1生の方に限定した情報提供をさせていただきます。


本企画をはじめるにあたって、新高1生への受験指導経験が豊富な人に聞いてみました。高校1・2年生を対象とした医学部予備校トライアルゼミ宮澤代表(指導科目:英語)です。

 

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Q:いま新高1生が入学前にすべきことの最たるものは?


A:なによりも動詞の活用形。中学範囲のものが固まってないと時制を習うときに苦労するし、せっかく頑張って入った高校の授業に対して「つまらない」という気持ちになりかねない。また、医学部などの難関大を目指す人は、数年後、進度が早い中高一貫校の人と勝負をすることになる。そのため、高校では、習った時点で知識を定着させていきたいのだが、動詞の活用形の定着度合は重要な鍵となる。中学範囲の内容が固まっていないのは不利。高校入学前から大学受験を見据えた特別な塾・家庭教師を利用している人もいる。高校入試が終わって、勉強から少し離れたい気持ちはわかるが、この時期だからこそ、中学範囲の復習に力を入れてほしい


~~~


ということで、宮澤代表から【活用形まとめ】を頂戴しましたので、本記事ではこれを公開します。

 

高校の授業がはじまる前なので、教科書等を開く気持ちになれない方もおられるでしょう。とはいえ、スマホを触る時間はそれなりにあるでしょうし、そうした時間をほんの少しでも本記事を用いた復習にあてていただければと思います。


ちなみに、本企画の趣旨を伝えたところ、宮澤代表「みんな困ってるんや、これもノーツで使ってくれ」と言って、【自習用問題&解説】もくれました。

 

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【基本】規則動詞

 

  1. 助ける、手伝う:【原形】help(ヘルプ)【過去形】helped(ヘルプト)【過去分詞】helped(ヘルプト)【現在分詞】helping
  2. を使う:【原形】use(ユーズ)【過去形】used(ユーズド)【過去分詞】used(ユーズド)【現在分詞】using
  3. を勉強する:【原形】study(スタディ)【過去形】studied(スタディド)【過去分詞】studied(スタディド)【現在分詞】studying
  4. 止まる、をやめる:【原形】stop(ストップ)【過去形】stopped(ストップト)【過去分詞】stopped(ストップト)【現在分詞】stopping

 

【ここが山場!】不規則動詞①現在分詞=原型+ing

 

  1. である・いる:【原形】be(ビー)【過去形】was/were(ワズ/ワァー)【過去分詞】been(ビィーン)【現在分詞】being
  2. を産む・耐える:【原形】bear(ベアー)【過去形】bore(ボォァー)【過去分詞】born(ボォーン)【現在分詞】bearing
  3. (風が)吹く:【原形】blow(ブロウ)【過去形】blew(ブリュー)【過去分詞】blown(ブロウン)【現在分詞】blowing
  4. を壊す:【原形】break(ブレイク)【過去形】broke(ブロウク)【過去分詞】broken(ブロウクン)【現在分詞】breaking
  5. をする:【原形】do(ドゥ)【過去形】did(ディド)【過去分詞】done(ダーン)【現在分詞】doing
  6. を描く:【原形】draw(ドロウ)【過去形】drew (ドリュー)【過去分詞】drawn(ドロウン)【現在分詞】drawing
  7. を飲む:【原形】drink(ドゥリンク)【過去形】drank(ドラァンク)【過去分詞】drunk(ドランク)【現在分詞】drinking
  8. を食べる:【原形】eat(イート)【過去形】ate(エイト)【過去分詞】eaten(イートゥン)【現在分詞】eating
  9. 落ちる:【原形】fall(フォール)【過去形】fell(フェル)【過去分詞】fallen(フォールン)【現在分詞】falling
  10. 飛ぶ:【原形】fly(フライ)【過去形】flew(フリュウ)【過去分詞】flown(フロウン)【現在分詞】flying
  11. 行く:【原形】go(ゴー)【過去形】went(ウェント)【過去分詞】gone(ゴーン)【現在分詞】going
  12. 育つ、を育てる:【原形】grow(グロウ)【過去形】grew(グリュー)【過去分詞】grown(グロウン)【現在分詞】growing
  13. を知っている:【原形】know(ノウ)【過去形】knew (ニュー)【過去分詞】known(ノウン)【現在分詞】knowing
  14. 鳴る:【原形】ring(リング)【過去形】rang(ラァング)【過去分詞】rung(ラング)【現在分詞】ringing
  15. が見える、会う:【原形】see(シィー)【過去形】saw(ソー)【過去分詞】seen(シィーン)【現在分詞】seeing
  16. を盗む:【原形】steal(スティール)【過去形】stole(ストール)【過去分詞】stolen(ストールン)【現在分詞】stealing
  17. を見せる:【原形】show(ショウ)【過去形】showed(ショウド)【過去分詞】shown(ショウン)【現在分詞】showing
  18. 歌う:【原形】sing(スィング)【過去形】sang(サァング)【過去分詞】sung(サング)【現在分詞】singing
  19. 沈む:【原形】sink(シィンク)【過去形】sank(サァンク)【過去分詞】sunk(サンク)【現在分詞】sinking
  20. を話す:【原形】speak(スピーク)【過去形】spoke(スポウク)【過去分詞】spoken(スポウクン)【現在分詞】speaking
  21. を裂く、破る:【原形】tear(テアー)【過去形】tore(トアー)【過去分詞】torn(トーン)【現在分詞】tearing
  22. を投げる:【原形】throw(スロウ)【過去形】threw(スルー)【過去分詞】thrown(スロウン)【現在分詞】throwing
  23. を書く:【原形】write(ライト)【過去形】wrote(ロウト)【過去分詞】written(リテゥン)【現在分詞】writing
  24. を持ってくる:【原形】bring(ブリング)【過去形】brought(ブロウト)【過去分詞】brought(ブロウト)【現在分詞】bringing
  25. を建てる:【原形】build(ビルド)【過去形】built(ビルトゥ)【過去分詞】built(ビルトゥ)【現在分詞】building
  26. を買う:【原形】buy(バイ)【過去形】bought(ボート)【過去分詞】bought(ボート)【現在分詞】buying
  27. を捕まえる:【原形】catch(キャッチ)【過去形】caught(コート)【過去分詞】caught(コート)【現在分詞】catching
  28. (食べ物を)与える:【原形】feed(フィード)【過去形】fed(フェド)【過去分詞】fed(フェド)【現在分詞】feeding
  29. 感じがする:【原形】feel(フィール)【過去形】felt(フェルト)【過去分詞】felt(フェルト)【現在分詞】feeling
  30. 戦う、争う:【原形】fight(ファイト)【過去形】fought(フォウト)【過去分詞】fought(フォウト)【現在分詞】fighting
  31. を見つける:【原形】find(ファインド)【過去形】found(ファウンド)【過去分詞】found(ファウンド)【現在分詞】finding
  32. を掛ける:【原形】hang(ハァング)【過去形】hung(ハング)【過去分詞】hung(ハング)【現在分詞】hanging
  33. が聞こえる:【原形】hear(ヒアー)【過去形】heard(ハァード)【過去分詞】heard(ハァード)【現在分詞】hearing
  34. をつかむ:【原形】hold(ホウルド)【過去形】held(ヘルド)【過去分詞】held(ヘルド)【現在分詞】holding
  35. を続ける:【原形】keep(キープ)【過去形】kept(ケプト)【過去分詞】kept(ケプト)【現在分詞】keeping
  36. を置く、横にする:【原形】lay(レイ)【過去形】laid(レイド)【過去分詞】laid(レイド)【現在分詞】laying
  37. を導く:【原形】lead(リード)【過去形】led(レェド)【過去分詞】led(レェド)【現在分詞】leading
  38. を貸す:【原形】lend(レンド)【過去形】lent(レント)【過去分詞】lent(レント)【現在分詞】lending
  39. を意味する:【原形】mean(ミィーン)【過去形】meant(メント)【過去分詞】meant(メント)【現在分詞】meaning
  40. に会う:【原形】meet(ミィート)【過去形】met(メット)【過去分詞】met(メット)【現在分詞】meeting
  41. を支払う:【原形】pay(ペェイ)【過去形】paid(ペェイド)【過去分詞】paid(ペェイド)【現在分詞】paying
  42. を読む:【原形】read(リィード)【過去形】read(レッド)【過去分詞】read(レッド)【現在分詞】reading
  43. を言う:【原形】say(セェイ)【過去形】said(セェド)【過去分詞】said(セェド)【現在分詞】saying
  44. を売る:【原形】sell(セル)【過去形】sold(ソウルド)【過去分詞】sold(ソウルド)【現在分詞】selling
  45. を送る:【原形】send(センド)【過去形】sent(セント)【過去分詞】sent(セント)【現在分詞】sending
  46. を撃つ:【原形】shoot(シュート)【過去形】shot(ショット)【過去分詞】shot(ショット)【現在分詞】shooting
  47. 眠る:【原形】sleep(スリィープ)【過去形】slept(スレプト)【過去分詞】slept(スレプト)【現在分詞】sleeping
  48. を費やす:【原形】spend(スペンド)【過去形】spent(スペント)【過去分詞】spent(スペント)【現在分詞】spending
  49. 立っている、耐える:【原形】stand(スタンド)【過去形】stood(ステゥッド)【過去分詞】stood(ステゥッド)【現在分詞】standing
  50. を教える:【原形】teach(ティーチ)【過去形】taught(トォート)【過去分詞】taught(トォート)【現在分詞】teaching
  51. を話す:【原形】tell(テェル)【過去形】told(トォウルド)【過去分詞】told(トォウルド)【現在分詞】telling
  52. を思う:【原形】think(スィンク)【過去形】thought(ソォート)【過去分詞】thought(ソォート)【現在分詞】thinking
  53. を理解する:【原形】understand(アンダスタンド)【過去形】understood(アンダストゥド)【過去分詞】understood(アンダストゥド)【現在分詞】understanding
  54. をたたく:【原形】beat(ビィート)【過去形】beat(ビィート)【過去分詞】beat(ビィート)【現在分詞】beating
  55. (費用が)かかる:【原形】cost(コスト)【過去形】cost(コスト)【過去分詞】cost(コスト)【現在分詞】costing
  56. を広げる、広がる:【原形】spread(スプレッド)【過去形】spread(スプレッド)【過去分詞】spread(スプレッド)【現在分詞】spreading

 

【要注意!】不規則動詞②現在分詞原型+ing

 

  1. 始まる:【原形】begin(ビィギン)【過去形】began(ビィギャン)【過去分詞】begun(ビィガン)【現在分詞】beginning
  2. をかむ:【原形】bite(バァイト)【過去形】bit(ビット)【過去分詞】bit(ten)(ビット)【現在分詞】biting
  3. を選ぶ:【原形】choose(チューズ)【過去形】chose(チョウズ)【過去分詞】chosen(チョウズン)【現在分詞】choosing
  4. を運転する:【原形】drive(ドゥライブ)【過去形】drove(ドロウブ)【過去分詞】driven(ドリブン)【現在分詞】driving
  5. 凍る:【原形】freeze(フリーズ)【過去形】froze(フロウズ)【過去分詞】frozen(フローズン)【現在分詞】freezing
  6. を忘れる:【原形】forget(フォゲット)【過去形】forgot(フォゴット)【過去分詞】forgot(ten)(フォゴット)【現在分詞】forgetting
  7. を手に入れる:【原形】get(ゲット)【過去形】got(ゴット)【過去分詞】got(ten)(ゴット)【現在分詞】getting
  8. を与える:【原形】give(ギブ)【過去形】gave(ゲイブ)【過去分詞】given(ギブン)【現在分詞】giving
  9. を隠す:【原形】hide(ハイド)【過去形】hid(ヒッド)【過去分詞】hid(den)(ヒッド)【現在分詞】hiding
  10. 横になる:【原形】lie(ライ)【過去形】lay(レイ)【過去分詞】lain(レイン)【現在分詞】lying
  11. を間違える:【原形】mistake(ミステイク)【過去形】mistook(ミストゥク)【過去分詞】mistaken(ミステイクン)【現在分詞】mistaking
  12. に乗る:【原形】ride(ライド)【過去形】rode(ロウド)【過去分詞】ridden(リデゥン)【現在分詞】riding
  13. 上がる、昇る:【原形】rise(ライズ)【過去形】rose(ロウズ)【過去分詞】risen(リズン)【現在分詞】rising
  14. を振る、揺れる:【原形】shake(シェイク)【過去形】shook(シュック)【過去分詞】shaken(シェイクン)【現在分詞】shaking
  15. 泳ぐ:【原形】swim(スウィム)【過去形】swam(スァワム)【過去分詞】swum(スワム)【現在分詞】swimming
  16. を取る:【原形】take(テイク)【過去形】took(テゥック)【過去分詞】taken(テイクン)【現在分詞】taking
  17. 目が覚める:【原形】wake(ウェイク)【過去形】woke(ウォゥク)【過去分詞】woken(ウォゥクン)【現在分詞】waking
  18. を掘る:【原形】dig(ディグ)【過去形】dug(デァグ)【過去分詞】dug(デァグ)【現在分詞】digging
  19. をもっている:【原形】have(ハブ)【過去形】had(ハァド)【過去分詞】had(ハァド)【現在分詞】having
  20. を去る、出発する:【原形】leave(リーブ)【過去形】left(レフト)【過去分詞】left(レフト)【現在分詞】leaving
  21. を失う、負ける:【原形】lose(ルーズ)【過去形】lost(ロスト)【過去分詞】lost(ロスト)【現在分詞】losing
  22. を作る:【原形】make(メイク)【過去形】made(メイド)【過去分詞】made(メイド)【現在分詞】making
  23. 輝く:【原形】shine(シャイン)【過去形】shone(ショウン)【過去分詞】shone (ショウン)【現在分詞】shining
  24. を打つ、たたく:【原形】strike(ストライク)【過去形】struck(ストラァク)【過去分詞】struck(ストラァク)【現在分詞】striking
  25. すわる:【原形】sit(スィット)【過去形】sat(サット)【過去分詞】sat(サット)【現在分詞】sitting
  26. に勝つ:【原形】win(ウィン)【過去形】won(ワン)【過去分詞】won(ワン)【現在分詞】winning
  27. になる:【原形】become(ビィカム)【過去形】became(ビィケイム)【過去分詞】become(ビィカム)【現在分詞】becoming
  28. 来る:【原形】come(カム)【過去形】came(ケイム)【過去分詞】come(カム)【現在分詞】coming
  29. 走る:【原形】run(ラン)【過去形】ran(リャン)【過去分詞】run(ラン)【現在分詞】running
  30. を切る:【原形】cut(カット)【過去形】cut(カット)【過去分詞】cut(カット)【現在分詞】cutting
  31. をたたく:【原形】hit(ヒット)【過去形】hit(ヒット)【過去分詞】hit(ヒット)【現在分詞】hitting
  32. にさせる:【原形】let(レット)【過去形】let(レット)【過去分詞】let(レット)【現在分詞】letting
  33. を置く:【原形】put(プット)【過去形】put(プット)【過去分詞】put(プット)【現在分詞】putting
  34. を置く:【原形】set(セット)【過去形】set(セット)【過去分詞】set(セット)【現在分詞】setting

 

ゾロアスター教・ユダヤ教・キリスト教

読書会「マクニールの『世界史』を読む」第3回目の発表資料がイタリアから届きました。作成者は「とあるキリスト教教会関係者」さん

 

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今回の範囲は「中東のコスモポリタニズム 紀元前1700ー500年」で、次のように、現代社会を考える上で重要な項目が多く含まれます。

 

  • 戦車戦法の技術
  • 中東の三帝国
  • 鉄器時代
  • 鉄のおよぼした影響
  • 騎馬の革命
  • 紀元前559年から330年までのペルシャ帝国
  • 帝国統治の技術
  • アルファベット文字
  • 一神教の出現
  • 初期ユダヤ教
  • ゾロアスター教


この中でも特に注目したいのが「宗教」の話。世界史を勉強する上で、国際社会について考える上で、宗教についての考察は欠かせません。今回の範囲は、「宗教」という人の内面に深くかかわるものを考えるのに適していますので、その教養を有する「とあるキリスト教教会関係者」さんに発表資料の作成をお願いしました。


統治のあり方などについては、これまでと同様、読書会当日に参加者各自の着目点を共有したいと思います。

 

  • 日時:2020年3月15日19時~21時
  • 会場:コモンルーム中津(大阪市北区豊崎3-13-5 TKビル)3階貸会議室(和室)
  • 図書:ウィリアム・H・マクニール「世界史(上)」(訳:増田義郎・佐々木昭夫)中公文庫(2008)
  • 範囲:105頁~144頁
  • 発表:とあるキリスト教教会関係者


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今回この範囲の資料作成にあたり、キリスト教教会関係者の視点からの概要説明(着目点・キリスト教との類似点と相違点)を頼まれた。以下、なるべく依頼の趣旨に沿ってまとめてみた。

 

Ⅰ:宗教の意味

 

(1) 定義

 


ここでは、宗教の働き「どうしても思いのままにならないものからの救済」と定義して話を進めることにする。


これの最たるものが「死」であり、「死」をもたらす病気・災害・戦争など不安・恐怖・苦悩を引き起こすものからの救済のために宗教があると考える(「救済」が何を指すかを論じてみても面白いかもしれない)。

 

(2) 宗教の分類

 


宗教を起源と広がりの観点から、起源「自然宗教」と「創唱宗教」に、広がり「民族宗教」と「世界宗教」に分類することができる。(「創唱宗教」は特定の人が始めた宗教であるが、さかのぼれば自然宗教に含まれるかもしれない。)

 

①民族宗教

 


民族宗教の神々は、人間的な要素が強く必ずしも道徳的ではない。さらに、民族と一体になっているので、布教する必要がない。その民族内での現世利益を重視し、呪術と結びつき、儀礼が発達していくことにより、宗教が国家に使われることもある。その際不満や批判が生じて、改革者が出現し創唱宗教に結びつく。

 

②世界宗教

 


創唱宗教は、民族の枠をとりのぞくために普遍的な教えを目指す。それが成功すれば世界宗教となる。そこでの普遍的な教えは「一神教への傾向」が見られる。ここでの一神教は、は次々に生まれてくる必要がなく、世界全体を支配するものと考えられる(cf.140頁)。もちろん、この場合も国家に取り込まれる恐れがあるので、その際は、再び批判者が現れ、新しい創唱宗教が生まれる可能性もある。

 

Ⅱ:ゾロアスター教

 


ゾロアスター教の考えがユダヤ教へ、そしてキリスト教・イスラム教に影響を及ぼしたので、ゾロアスター教の考え方をまとめておく。

 

(1) 二元論

 

「ゾロアスターの告げるところは、雄大かつ深遠であった。彼は、宇宙の至高霊アフラ・マズダの栄光を説いた。マズダは、悪の原理であるアハリマンとの宇宙的な闘争を強いられている。」


 - マクニール「世界史(上)」142頁


地上を舞台に、人間を登場人物として、マズダとアハリマンの闘争が繰り広げられていると考えれば良いだろう。

 

(2) 道徳的行為の推奨

 

「あらゆる善なる人の義務は、明らかに光の側に組し、預言者ゾロアスターの仲介によって、アフラ・マズダの命令に服することである。この命令の中には、質素な儀式を行うことと、他人に対する道徳的な行為をすることが含まれていた。」


 - マクニール「世界史(上)」142頁


道徳的行為を実際に行うかどうかは、人間に任されていたが、これによって現世における繁栄来世における不死が約束されていたのである。


人間が死んだ後、個別審判総審判があり、総審判は終末の審判者を滅ぼし、正義の世界が打ち立てられるという考えであり、これがユダヤ教やキリスト教に影響を及ぼしている。

 

Ⅲ:ユダヤ教

 

(1) ユダヤ教の特徴

 


ユダヤ教の特徴に関する140頁には、次の2つの考えが述べられている。

 

  1. 「現在の苦難は明らかに人間の過去のいたらなさを神が怒り給うているのだから、聖書に明示された神の意志にさらに忠実に従うようつとめねばならぬ」という主張(エズラ、ネヘミア)
  2. 「神は民衆の忍耐力と強さを試そうとして、試練を与えておられるのだ。その結果、それに堪えた者たちが、世界が終末にのぞみあらゆる不正が一掃される偉大な『最後の審判の日』に報いられることを意図されているのだ」と主張(イザヤ)


いずれにせよ、「神の意志にさらに忠実に従う」こと神からの「試練」はどのように解釈されるのかという点で、「教師(ラビ)の聖典説明を聞くこと」(139頁)がユダヤ教の「中心的な礼拝行為」となっていくことを理解するのは容易である(cf.141頁)。

 

(2) ヤハウェ

 


当時の人たちが、神・ヤハウェどのような存在だと考えていたかを簡単に述べておく。

 

「神は正義者であると同時に慈悲ぶかく、非行者を罰するが、ぐずぐずせずに悔い改める罪人たちを許すことができる」


 - マクニール「世界史(上)」137頁

 

Ⅳ:キリスト教から見たユダヤ教

 

(1) 聖書 

 

①聖書の内容

 


「エジプトの記録や年代記は、聖書の語るところとうまく一致しない」(136頁)と書かれている。


他にも、聖書の記述史実と異なっているところはある。しかし、キリスト教は、この点を全く気にしない。それは、聖書歴史や自然科学の真実を述べているのではなく、「救い」の観点で真実を述べていると考えているからだ。


乱暴な言い方を許してもらえるのであれば、「記録や年代記と違っていたとしても、それがどうしたんですか。まぁ、そんなことは『救い』には大きく影響しませんよね」という感じだろうか。

 

②旧約聖書・新約聖書

 


残念なことに、私はイタリアに日本語の文献を持ってきていないので、はっきりとしたことを書くことができない。少なくともキリスト教の観点では、「旧約聖書」・「新約聖書」と区別はしているが、先に述べた「救い」の点では一貫している。


両者の区別は、イエス・キリストが生まれる前が「旧約聖書」イエス・キリストが生まれてからのことが書かれているのが「新約聖書」となっている。


従って、キリスト教旧約聖書・新約聖書の両方を大切にしている。決して「旧約聖書」がユダヤ教の聖書で、キリスト教は「新約聖書」だけということではない

 

(2) 神の位置づけ

 


私もそうだったのだが、「ユダヤ教」の神「キリスト教」の神が別物だと理解している人がいるかもしれない。キリスト教徒の中でも、ユダヤ教の神(旧約聖書の神)は先に述べたように、「非行者を罰する」点に重きを置いて、キリスト教の神(新約聖書の神)「慈悲ぶかい」と理解している人がいるかもしれない。


しかし、ユダヤ教の神キリスト教の神も、一貫して神は神なのである。いずれの場合も、「神は正義者であると同時に慈悲ぶかく、非行者を罰するが、ぐずぐずせずに悔い改める罪人たちを許すことができる」(137頁)神であり、キリスト教の場合はさらに「愛」を強調していると言えるだろう(「愛」について考えてみても良いかもしれない)。

 

(3) イエス・キリストの存在

 


イエス・キリストについて書くことはたくさんある。「その一つ一つを書くならば、世界もその書かれた書物を収めきれないであろう」(ヨハネによる福音書21.25)とあるので、私もここでは「救い」の観点から簡単に述べたい。

 

①キリスト教における「救い」

 


キリスト教では、人間はアダム楽園追放神との関わりが喪失したと考えている。その切れてしまった神との関わりを、イエス・キリストによって人類がもう一度神と関わること「救い」と考えている。

 

②旧約聖書と新約聖書のつながりの観点

 


①をもう少し説明したい。アダムとイブエデンの園から追放された話である(リンゴとは聖書に記述がないのだが、リンゴのイメージが定着している)。


「園の中央に生えている木の果実だけは、食べてはいけない、触れてもいけない、死んではいけないから、と神様はおっしゃいました」(創世記3.3)と女は蛇に答えている。その禁を二人は破ってしまうのだが、ここで「アダムとイブは木によって神との関わりを失った」と理解する。


次に、イエス・キリスト救いのわざがどのように成し遂げられたかを考えると、それは「十字架上の死」である。自分の命を犠牲にしてでも、私たちと神をもう一度つなげてくれたと、キリスト者は考える。


先ほどのアダムとイブ「木」によって神との関わりを失ったが、イエス・キリスト「木」によって再び救いへと導いた旧約聖書と新約聖書のつながりの1つであるが、キリスト教の「救い」を考える上で大切な点なので、簡単に紹介した。

 

Ⅴ:まとめ

 


今回の範囲を読んで、初期ユダヤ教がどのように形成されたか歴史の観点から学べたことは、私にとってとても勉強になった(とはいっても、少ししか記述がないので深めなければならないが)。


さらに、資料の作成をすることで、信者ではない方々「キリスト教」をどのように説明するかを考えるきっかけになったのが、何よりの収穫である。キリスト教は、掟(倫理的規範)にうるさいとか、今回は述べられなかったが復活を信じている変わった人たちの集まりだとか、世の中の人は色々なイメージをもっているだろう。


しかし、一キリスト教教会関係者として何を一番伝えたいかを考えたときに浮かんだのは、私たちにとっての「救い」とは、人間と神との関わりを再び結ぶことだということである。


そこで、「救い」とは何だとか、「神」とはどんな存在なんだとか、色々な疑問が当然生じてくるであろう。私は、私なりにこれに対して明確な答えを持っていて、それを信じている。宗教を信じるかどうかは、最終的にその人が選ぶことであるが、その宗教がどのような考えを持っているのかを、正しく理解することは信じる信じないを別として必要なことではないだろうか。


その意味で私は、諸宗教の勉強を続けていきたいと思っている。


(とあるキリスト教教会関係者)

 

読書会感想文 - シュメル文明伝播の第一次の様相

2020年2月16日、読書会「マクニールの『世界史』を読む」第2回目を実施しました。

  

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スケジュールの都合上、当日に参加できなかった方たちからの感想文が届きましたので、紹介させていただきます。


第2回目で扱った内容は、シュメル文明伝播の第一次の様相。メソポタミア文明・エジプト文明・インダス文明・ヒッタイト文明・ミノア文明・巨石文明・中国文明・・・さまざまな文明が登場しました。


同じ範囲(マクニール「世界史(上)」69頁~104頁)ではありますが、着目点は人それぞれ。この事実を確認することは、それ自体が学びになるのはもちろん、それ以上に「私の着目点を明らかにする」という意味も大きいと考えます。


他者を知り、これとの相対化を通じて自分自身への理解が進む


本読書会が、その一助となれば幸いです。

 

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Dさんの感想文

 

79頁にて、王が神であったからファラオ(王)に服従する強い理由ができたと述べられています。これは信仰が先にあったのか強い王を作るために作られたのか、どちらなのでしょう。


78頁では、メソポタミアで1000年あるいはそれ以上かかった発展が、エジプトではシュメル人の経験を利用することで半分以下の期間で実現した現象が述べられています。


現代でも、明治維新の日本ソ連韓国台湾中国で見られ、人類史で普遍的な現象なのだと思いました。今回改めて調べてみてその現象がガーシェンクロンモデルと呼ばれることを知りました。

 

とあるキリスト教教会関係者の感想文

 


今回の範囲(2 文明のひろがり 紀元前1700年までの第一次の様相)を読んで気になったことを2つ挙げたい。

 

(1)自然環境・地理的環境

 


「文明のひろがり」というタイトルからもわかるように、文明が広がっていくのだが、その広がり方が気になった。

 

「ステップの狩猟民たちは、初期農耕民が発達させた一連の技術に接したとき、家畜飼育をとり入れたが、穀物栽培のための骨の折れる農耕は受け入れないで、自分たちの自然環境に対して効果的な適応をとげた。」


 - マクニール「世界史(上)」70頁

 

「エジプトが政治的に統一されると、シュメル人の技術的用具のなかで、エジプト人にいいと思われるような要素をすばやく吸収する土台が築かれ、他方エジプト地方特有の伝統とか地理的条件にそぐわない要素は受け入れられなかった。」


 - マクニール「世界史(上)」78頁

 

「東南アジアの大河の流域では、まったくちがった型の園耕が、紀元前三千年紀の間にさらに重要性を増してきた。これらの地域では、モンスーンが決定的な事実である。」


 - マクニール「世界史(上)」101頁


これらに共通するのは、自然環境・地理的環境が前提としてあって、それと合うものを取り入れたということである。私なりに言い換えてみると、「それはあなたのところでは良いかもしれないけど、うちではちょっと無理ですわ」という感じであろうか。


なぜ今回の範囲を読んで、この自然環境・地理的環境が気になったかというと、私が今イタリアに住んでいるからである。ヨーロッパで流行ったものを日本に持って行って、逆に日本で流行ったものをヨーロッパに持ってきて、ヒットするものとしないものがあるのは当然である。私は今石造りの建物に住んでいるが、おそらくかなり昔にできた建物だろう。地震が(ほとんど)ない国だからなせる技であって、日本では考えられない。台風の被害もない。


情報技術の発達のおかげで、当時以上に今は世界が狭くなっている。世界のどこにいても、ネットがつながれば情報を手に入れられる現代世界において、「うわべだけ」を取り入れることは難しくない。しかし、本当に根付かせようとするなら、それが生まれた背景を理解しないと、浸透しない

 

キリスト教が日本社会に根付かない1つの理由は、そもそもの背景が違うのだ(72頁が参考になると思われる)。

 

(2)「水」

 


先の(1)とも重複するが、「文明のひろがり」方に「水」が大きく関係していることが興味深かった。 

 

「実際、神聖なファラオの王家は、シュメルの神殿のようであり、ナイル川の航行可能な上下全域から、余剰農産物をひとところに集中したのだった。これによって、ファラオの宮廷で圧倒的な権力が維持されることができ、エジプトは、シュメルではまったくいかんともしがたかった、国内の平和と秩序の問題を解決したのである。」


 - マクニール「世界史(上)」80頁

 

「文明が天水によって水を得る土地に栄えるためになにが必要かは、簡単に述べることができる。まず、農民が剰余食糧を生産できなくてはならない。次に、なにかある社会機構が出来て、生産する農民の手から、剰余食糧を専門家の人々に移譲しなくてはならない。後者は、そうしてもらってはじめて農民大衆のように畑仕事で時の大部分を費やさなくても、高い技能や秘密の知識を練ることに自由に専心できたのである。」

 

 - マクニール「世界史(上)」92頁


水や船が文明を発展させ、広めていったことは他にも例が挙げられているが、それが2つ目の引用部のように文化や統治機構の発展に寄与していったことは興味深い(81頁ピラミッドもおなじことだろう)。

 

102頁以降のモンスーン・アジアの米工作も、やはり水の問題が大きく関係している。

 

いい大人がシュメル文明の影響について話し合ってみた

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2020年2月16日(日曜)「【読書会】マクニールの『世界史』を読む」第2回目を実施しました。


今回の内容は、シュメル文明がどのような影響を及ぼしたのか。発表者は、ロジカルノーツAdministrator鈴木順一

 

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以下では、鈴木の発表後に交わされた言葉を一部紹介させていただきます。

 

犂(すき)について

 


犂(すき)の発明が人の生活に与えた影響の大きさについては考えさせられました。これまでを特別区別していたわけではないのですが、今回、犂というものについて深く考えることになったのは大きな収穫でした」


『犂』という漢字を改めて見てみると『牛』が入ってますよね、『あっ、牛なんだ』と思いました。動物の力、人の力ではないものを使って生活レベルを向上させたことは、人類にとって大きな意味をもったのだろうと感じます」


「発表の中で触れられた犂とAIの話には『なるほど』と思いました。牛もAIも人力を超えるものですしね」


AIについて否定的な意見をよく聞くんですよ。『人の仕事を奪う』って。でも、それって人が楽をする、他のことができるってことですよね。これって犂が発明された当時にも当てはまるのかなあと感じました。『私は自分の手で農耕したいんだ、牛に頼りたくないんだ』って思った人もいたんじゃないのかなあと。そういう人がどのように犂と向き合ってきたのかは気になります」


AIに否定的な見解ってそんなに多いのですか。私の業界では『早くAIを育てよう』という感じです。人間の手数を減らして業務を効率化しないと過労死するという意識が強いです。人の思惑が絡む業界ですので、相手のことをどの程度信用してよいのかという判断もしなければならなくて、そのようなときには議論や対話して見極めないといけないのですが、そういうことに人間が集中できる環境をつくるという意味でもAIに期待するところが大きいです」

 

ファラオについて

 


ファラオが人ではなく神だとされていたのは、シュメルと大きく違うポイントだなあと感じました」


シュメルのときの神官は、神そのものではなく、神にアクセスできる人でしたよね。このとき、神官の言葉に文句があっても『まあ、神が言ってるんだから仕方ないか、この人が悪いわけじゃないし』みたいなところがあると思うんですよ。でも、ファラオの場合は直接的な反発が起こりそうな気がするんですよね」


「そうですね。『私は神である』とするのは求心力の面では強いでしょうけど、反発が生じたときに『いや、あれは神が言ってたんだよ』という言い訳ができなくて、諸刃の剣みたいなところがありますよね」


エジプト映画に登場するファラオってとにかく怖いんですよ。残酷で、仮面の下に人がいるってことすら思わせないような描かれ方で。人とは違うということを示すためなんでしょうか」

 

法について

 


ハンムラビの法典が登場しましたね。現代社会とのつながりがはっきりとした形で出てきました」


人が統べる強いもの勝ちの殺戮が起こりかねませんし、法が統べるのはよいことだと思います」


法って怖いですよね。人じゃないから言い訳無用な感じで。人の上に存在するものという意味ではファラオ=神の思想に近い気がします」


法による予測可能性というのは大きいですね。予測可能だからこそ人を信用できますし。予測可能性を示す姿勢が尊ばれるのは現代にも通ずるポイントだと感じました」

 

中央集権の弱さについて

 


エジプト文明古王国と中王国の対比が考えさせられました。中央集権的な社会一貫性があってある種の洗練にもつながるんでしょうけど、何か危機的状況が起こるとすべてが消える。各地方に文化、富、人材が分散する社会永続性という意味では強いですね」


「いま地方分権的なシステムを確立していこうという流れがあるように感じるのですが、歴史が教訓になっているのかと思いました」


人間の社会自然の脅威の前では無力になることも少なくないですしね。ポンペイ・ベスビオ山のケースにように、社会や文化が丸ごとひとつ消えてしまうこともありますし」

 

シュメル文明の第一次的ひろがり

「【読書会】マクニールの『世界史』を読む」第2回発表資料が完成しました。

 

  • 日時:2020年2月16日19時~21時
  • 会場:コモンルーム中津(大阪市北区豊崎3-13-5 TKビル)3階貸会議室(和室)
  • 図書:ウィリアム・H・マクニール「世界史(上)」(訳:増田義郎・佐々木昭夫)中公文庫(2008)
  • 範囲:69頁~104頁
  • 発表:鈴木順一(ロジカルノーツAdministrator)


<第1回目の発表資料>

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<第1回目の読書会の様子>

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<第1回目の感想> 

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今回の範囲は「シュメル文明伝播の第一次の様相」(マクニール「世界史(上)」68頁)である。言及されている文明は、メソポタミア文明エジプト文明インダス文明ヒッタイト文明ミノア文明巨石文明中国文明など多岐にわたる。


その中でも、私が特に着目した3点を発表したい。その他の部分については発表後の議論の中で話し合えればと思う。

 

遊牧民文化と農耕民文化の接触

 

概要

 
シュメルの土地に根付いた焼畑農業メソポタミア文明が繁栄する大きな要因の1つとなったが、その北部に位置するユーラシア大陸のステップ地帯では遊牧民的生活スタイルが広がっていた。遊牧民たちは肉食の習性を持つ敵から自らの家畜を守る必要があるために、首領を持ち全共同体を指揮する必要があった。このような生活様式から遊牧民には力や組織力に訴えるという習性が生じていった。


一方で、初期農耕民たちは共同社会生活を営む中で、平和的平等主義的であった。結果、この2種類の民がぶつかる際には、遊牧民の側が極めて有利な立場に立つことになった。しかし、ただぶつかり合うだけではなく、この対立から人類は刺激を受け、ユーラシア全体にわたる急速な社会の発展へとつながった。その発展の1つのきっかけとなったのが、犂の発明であった。


犂の発明によって、人間は家畜の力を用いて耕作が可能となった。その恩恵としては、穀物栽培民が完全な定着生活を送れるようになったこと、休作地を作ることによる土地の回復の加速化、一部の人間が直接労働から解放されたことによる文明のさらなる拡大が挙げられる。


このようにして、紀元前3500年から2500年の間にユーラシア大陸とアフリカ全地域で、大規模な穀物栽培が気候条件的に可能である地域であれば、文明が地理的に拡大していく基盤が作成された。

 

着目点

 

「そのような社会においては、人間の筋肉にだけ頼る労働力が家畜の力の補いをうけて効力を著しく増したため、少数ではあるが、ある人々が自給自足の直接労働から解放され、その結果、灌漑のおよばぬ土地にすら文明が波及するようになった。」


 - マクニール「世界史(上)」75頁


家畜の力を借りることで、一部の人間が生命維持のための農耕から解放され、文明の拡大に従事することができるようになった、という構図は、現代におけるAIと人間の関係に似ていると感じられる。


時間を遡れば、自動車や飛行機の発明にも同じことが当てはまる可能性があり、交通手段の発展によって人間が移動にかける時間を短縮することができるようになったことで、その短縮された時間を別の創造的で想像的な仕事に使うことができるようになった。


AIを用いることの本来の目的も同じで、AIの助けを受けて短縮できた時間を利用してさらに創造的な仕事を人間が果たすことにあったはず。しかし、どういうわけか、「AIに仕事を奪われる」という考えを持つ人間も生じる。

 

エジプト文明 - 古王国と中王国

 

概要


マクニールによると、紀元前3000年から2850年頃メネス王によって上下エジプトが統一された。メソポタミアの技術や知識、経験自分たちにとって良い部分ばかりを取り入れることによって、独特の様式的統一性と制度構造を持つエジプト文明はメソポタミアが要した半分の時間で形成に至った。エジプト文明の全ては神である王、ファラオの宮廷に集中し、完成度が高いものの脆弱性を持つものとなった。


古王国は、左右を砂漠に囲まれていたため蛮族からの侵略をそれほど気にかける必要がなく、また上下の移動はナイルに沿って船で容易に行えたため、地理的に中央集権化に適していたナイル川に沿って要所に信頼のおける部下を少数配置するだけで王国を支配することが可能であった。ナイルを介して余剰農作物を宮廷に集めることで単一的中央集権の維持を図り、ピラミッドの建設なども可能であった。


しかし、各地方の支配はファラオかその代理者に対するその土地の者たちの従順さに大きく左右されていたため、こういった形の支配は脆弱さをはらんでおり、マクニールによれば最終的には地方役人の反逆によって古王国は崩壊に至った。しかし、政治的な崩壊をむかえながらも、ファラオの文明の理想は消えることなく、エジプトの地に残り続けることとなった。


中王国は、古王国から続くファラオによる文明理想に基づいて、再度エジプトの地を統一した。古王国との違いとしては、各地の地主や有力者たちの重要性の高さが挙げられる。この変化によって、ファラオ宮廷への中心依存度合いが減少し、政治的に混乱・崩壊を迎えた際にも再生する力が高まった。それに伴い古王国時代に見られた芸術的洗練やスタイルの一貫性が失われた。しかし、これは専門的技術や知識が局所に集中するのではなく、小さな中心を持つものがエジプトの広域に拡散したことを意味しており、このおかげで後に訪れるアジアの蛮族たちによる侵略を経てもエジプト文明が完全に消失することを免れたのであった。

 

着目点

 

「にもかかわらず、エジプトの政治の権力の集中を究極的に崩壊させたのは、神官の反抗ではなくて、地方役人の反逆だった。」


 - マクニール「世界史(上)」81、82頁


マクニールによる古王国滅亡の説明は上記のように簡潔にしか記されていないが、近年の研究によってより明らかになってきているようだ。


エジプト人考古学者のフェクリ・ハッサン教授によれば、旱魃が古王国滅亡の大きな要因であった。旱魃によって、ナイル川が氾濫しなかったことにより栄養分を多く含む黒土がナイルの流域に運ばれず、畜産業、農業、ピラミッド建設が行えず、氾濫に頼っていたナイル河岸の住民が水や食べ物を求めて大都市へと移動をした。


最終的は大都市でも食料をめぐって略奪殺し合い、ピラミッドの盗掘が横行し、エジプト王朝は滅亡に向かった、という説である。

 

紀元前2500年から1700年にいたるメソポタミア文明

 

概要


エジプト文明とインダス文明が形成された時代のメソポタミア文明では果てしない政治的・軍事的争乱の時代にあったが、この中で2つの大きな変化が生じた。シュメル語が日常的に使用されなくなったことと、政治的に統一性と安定性を達成したことである。後者は官僚制、法、市場という3つの手段が発達したことが原因として挙げられる。しかし、帝国内の各地域に対する忠誠心の強さ交通の緩慢さが故に、長期的にメソポタミアの政治的帝国は安定を保つことは難しかった。


政治権力の中心川上に移動する傾向があり、シュメルからアッカドへアッカドからバビロニアへ富と権力の中心北部へと移動していった。その中でも、シュメルの神官が説いた理想シュメルが達成した技術による生活への適応という、メソポタミアの根本的連続性は途絶えることはなかった。


文明のさらなる拡大のためには灌漑を用いることができる河川流域だけではなく、天水地域でも文明社会が構築できる必要があった。マクニールによれば、天水地域への文明の拡大がどのようになされたのかは不明であるが、征服者商人たちが灌漑地域外の世界に大きな多様性をもたらしたということになる。


小アジア北東部に位置するヒッタイト文明が一例として挙げられる。彼らの文化はメソポタミア文化の二番煎じ固有文化の独自性をかけあわせたものであった。彼らの社会はいくつかの異なった民族集団からできており、ある集団が別の集団を征服することによって文明の基礎が作られていった。これらの拡大していく集団の統治者がある程度の富と労働力を蓄積していき、文明社会の商人たちとの取引を行い、文化を取り入れていったのだ。

 

着目点

 

「王の統治下のいかなる土地のどんな件にでも適用できる法も、同じ効果をもつ。それは、官僚制原理と同じくらい、人間関係をほとんど予測可能なものにしてしまう。見知らぬ者同士が、結果にある信頼をもちながら相手と取引きできる。」


 - マクニール「世界史(上)」89頁


現代においては当たり前とされてしまっている「法」の持つ根本的な役割を表している。


見知らぬ者交易を行うことは予測不可能な側面が多すぎるため、誰もが不安を抱くものである。しかし、という共通のルールを敷くことで、その予測不可能性を取り除き交易を主とする文明内でのコミュニケーションを簡易にした。

 

<発表後の議論の様子>

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(鈴木順一)

 

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